有言実行
ゆうげんじっこう
四字熟語の意味
口で言ったことを必ず実行すること。言葉と行動が一致する誠実さ・責任感を表す。「不言実行」が「黙って実行する」美徳を説くのに対し、こちらは「宣言した以上は必ず成し遂げる」という意志の強さを重んじる。現代のリーダーシップ論でも評価される資質。有言実行の人は「宣言責任」を自分に課しており、言った以上は後戻りできないという心理的プレッシャーが行動力につながるとも言われる。
由来・語源
「不言実行」への対語として生まれた語で、近代以降の日本語表現。「有言」は言葉に出して宣言すること、「実行」は実際に行うことを意味する。言葉と行動の乖離を批判する文脈で「有言不実行」という語が先にあり、その対義として「有言実行」が用いられるようになった。近代化・民主主義の普及とともに、透明性・説明責任(アカウンタビリティ)が重んじられる社会では、「不言実行」の沈黙型より「有言実行」の宣言型のリーダーシップが評価されるようになった。現代ではスポーツ選手の決意表明、企業の経営者の公約、政治家のマニフェストなど、「言ったことをやりぬく」姿勢を称えるときに使われる。「不言実行」と「有言実行」はどちらが優れているかでなく、場面・役割によって使い分けられる。
用例
- “大会前に「絶対に優勝する」と宣言した彼は有言実行し、本当に頂点に立った。”
- “有言実行こそリーダーの基本。言ったことは必ず実現する覚悟が必要だ。”
- “彼女は面接で「三ヶ月で売上を倍にします」と言い、有言実行してみせた。”
- “有言実行の人は周りから信頼されるが、口だけで終われば逆効果になる。”
- “不言実行も美徳だが、現代のチームでは有言実行のほうが仲間も動きやすい。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
"Practice what you preach." / "Walk the talk."
使うシーン
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
関連する四字熟語
不言実行
ふげんじっこう
言葉で言わずに黙って実行すること。日本の伝統的な美徳の一つで、口先だけで何も行動しない人間より、黙って実際に動く人間を評価する価値観を表す。武士道・禅の精神とも関連し、「有言実行」と対をなす言葉。不言実行とは対照的な「有言実行」と対で語られることが多く、日本の職人や武士が体現してきた「言葉より行動」という価値観の根幹を表している。現代でも口先だけの人物への批判文脈で頻用される。
質実剛健
しつじつごうけん
飾り気がなく誠実で、心身ともに強くたくましいこと。「質実」は内面の誠実さを、「剛健」は外見・体力の強さを表す。日本では主に教育の精神や理想的な人物像を表す際に用いられ、特に旧制学校の校訓として広く用いられた。現代でも体育会系の部活動や伝統的な職人文化において、質実剛健を体現した人物が尊ばれる傾向がある。外見よりも中身・実力で勝負する生き方を象徴する語として定着している。
大言壮語
たいげんそうご
実力以上の大きなことを言うこと。できもしないことを偉そうに言うこと。
優柔不断
ゆうじゅうふだん
ぐずぐずとして決断力に欠けること。「優柔」は気が弱く柔らかい性格を、「不断」は決断できないことを指す。性格的な特徴として用いられることが多く、批判的なニュアンスを帯びる。重要な局面で決断を先延ばしにする傾向を表す言葉。リーダーや上司に用いると批判的なニュアンスが強くなるため、使う場面と相手関係には注意が必要。反省や自省の文脈でも「自分の優柔不断を克服する」という形で使われる。
言わぬが花
いわぬがはな
すべてを言葉にして伝えるよりも、あえて口にしない方が奥ゆかしさや趣があり、相手への配慮にもなるということ。知っていても言わない、感じていても表に出さない——その沈黙の中にこそ言葉を超えた余韻と品格があるという日本的な感覚を表す。能楽の「秘すれば花なり」の美意識にも通じる表現で、情報の全開示が必ずしも最善ではないという含意も持つ。
歯に衣着せぬ
はにきぬきせぬ
相手への遠慮や気遣いをせず、思ったことをそのまま率直に言うこと。相手が聞いて不快に感じることも、ためらわずに直接言う様子を表す。率直さが美徳として機能する文脈では褒め言葉として使われ、無遠慮さや失礼さを指摘する文脈では否定的な意味合いを帯びる。日本文化特有の「建前と本音」の二重構造の中で、本音を包まずに直接言う行為を際立たせる表現でもある。
口は災いの元
くちはわざわいのもと
不用意な発言や軽はずみな言葉が、本人にとって予期せぬ災難や困難を引き起こす原因となることがある。言葉はひとたび口から出ると取り消すことができないため、発言には十分な注意が必要であるという教訓。怒りや感情的な状態での言葉、機密の漏洩、場をわきまえない一言に対する戒めであり、SNS全盛の現代においてこの教訓はより一層重みを増している。
試行錯誤
しこうさくご
いろいろ試みては失敗を繰り返しながら、次第に目的に近づいていくこと。正解が分からない問題を、試みと失敗を重ねながら解いていく過程を指す。失敗を否定的に捉えるのではなく、学習と改善のプロセスとして肯定的に使われることが多い。「試行錯誤を繰り返す」「試行錯誤の末に」という形でよく使われる。試みることを恐れない姿勢が根底にある。