不言実行
ふげんじっこう
四字熟語の意味
言葉や理屈を並べ立てず、やるべきことを黙って片づけること。デジタル大辞泉の語釈は「文句や理屈を言わずに」と限定しており、口をきかないことそのものを褒める語ではない。弁解や宣言に費やす言葉を省き、結果で示す態度を指す。人物評として「不言実行の人」の形で使い、口先だけの相手と対比する文脈に置かれることが多い。後から作られた「有言実行」と対で語られるが、先にある語はこちらである。
由来・語源
「不言」は言わないこと、「実行」は実際に行うこと。武士道や禅の精神に結びつける説明をよく見かけるが、デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典・四字熟語を知る辞典のいずれも、この語に典拠を挙げていない。 文献で確かめられるのは用例のほうで、精選版日本国語大辞典が初出例に挙げるのは原田棟一郎『紐育』(1914年)の「寧ろ不言実行で婦人と云ふ一種の力を以て」という一節である。言うより先に行うことを君子の条件とする発想自体は、『論語』為政篇の「先行其言、而後従之」や里仁篇の「君子欲訥於言而敏於行」にさかのぼり、「訥言敏行」という類義の四字熟語もある。ただしそれは発想の下地であって、「不言実行」という四字熟語の出典として辞書が示しているものではない。なお「有言実行」は、この語をもじって後から作られた語である。
用例
- “彼は不言実行の人で、できたことより先にできないと口にすることが嫌いだ。”
- “不言実行が美徳とされた時代には、上司も部下も言葉より背中で示した。”
- “「やります」より先に動く不言実行のスタイルが、チームで高く評価された。”
- “公約を叫ぶより不言実行で結果を出す政治家のほうが、信頼されることも多い。”
- “不言実行の父の姿から、私は何かを語るより先に動くことを学んだ。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
"Actions speak louder than words." / "Deeds, not words."
使うシーン
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「不言実行」 — デジタル大辞泉が語義を「文句や理屈を言わずに」と限定すること、精選版が初出の実例に原田棟一郎『紐育』(1914)の「寧ろ不言実行で婦人と云ふ一種の力を以て」を挙げること、そして大辞泉・精選版・四字熟語を知る辞典のいずれもこの語に典拠を示していないことの確認(武士道・禅由来という説明の根拠が辞書に無いこと)
- Weblio「不言実行」 — ウィクショナリー日本語版が類義語に「訥言実行」「訥言敏行」、対義語に「有言実行」を挙げることの確認
- 『論語』為政第二(中文ウィキソース) — 「子貢問君子。子曰:『先行其言,而後從之。』」の原文確認。言より先に行うことを君子の条件とする発想の所在(四字熟語の出典ではないことを書き分けるため)
- 『論語』里仁第四(中文ウィキソース) — 「子曰:『君子欲訥於言而敏於行。』」の原文確認。類義の四字熟語「訥言敏行」の出どころ
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
言葉の使い方をもっと磨きたい方へ
PR性格統計学にもとづき、伝え方・褒め方・関わり方を体系的に学べる検定講座。人間関係の悩みの解消に。
誤字脱字・表記揺れ・不自然な言い回しをAIがチェックし、伝わる文章に整えるクラウド校正ツール。
※ このボックスのリンクにはアフィリエイト広告が含まれます
四字熟語をもっと調べたい方へ
PR※ このボックスのリンクにはアフィリエイト広告が含まれます
関連する四字熟語
有言実行
ゆうげんじっこう
口に出して言ったことを必ず実行すること。精選版日本国語大辞典は「言ったことは必ず実行する」に加えて「格別に言いたてて事を行なう」意も挙げており、常に褒め言葉とは限らない。わざわざ宣言してから動く態度そのものを指す場合がある。黙って結果を出す「不言実行」と対にして語られ、決意表明や公約をやり遂げた人を評するときに使う。宣言だけで終われば「有言不実行」と呼ばれる。
沈黙は金
ちんもくはきん
「雄弁は銀、沈黙は金」の後半だけが独り歩きした言い方で、黙っていることのほうが優れた弁舌よりも価値を持つ場合がある、ということ。口を閉ざしさえすれば偉いという語ではない。辞典の語釈が重く見るのは、沈黙すべき時とその効き目を心得ている判断のほうで、言葉を尽くすべき場面で黙り込むのは、この語が褒める沈黙ではない。言い返さずにおいて場が収まる、余計な一言を飲み込んで信用を保つ——そうした場面で使う。
言わずもがな
いわずもがな
「言わずもがな」は、言う必要がないほど明らかなこと。また、かえって口に出さないほうがよいことを指す。「彼の経験は言わずもがな」なら当然の前提として添えるが、「言わずもがなの一言」なら余計な発言の意味だ。「言うまでもない」は前者に限られ、「言わぬが花」は後者の沈黙をよしとする。迷ったら、文の後ろに「もちろん」が入るか、「言わなければよかった」が入るかで二つの用法を読み分ける。
善は急げ
ぜんはいそげ
よいと思ったことは、ためらわずすぐに実行すべきだということ。
言わぬが花
いわぬがはな
すべてを言葉にして伝えるよりも、あえて口にしない方が奥ゆかしさや趣があり、相手への配慮にもなるということ。知っていても言わない、感じていても表に出さない——その沈黙の中にこそ言葉を超えた余韻と品格があるという日本的な感覚を表す。能楽の「秘すれば花なり」の美意識にも通じる表現で、情報の全開示が必ずしも最善ではないという含意も持つ。
歯に衣着せぬ
はにきぬきせぬ
相手への遠慮や気遣いをせず、思ったことをそのまま率直に言うこと。相手が聞いて不快に感じることも、ためらわずに直接言う様子を表す。率直さが美徳として機能する文脈では褒め言葉として使われ、無遠慮さや失礼さを指摘する文脈では否定的な意味合いを帯びる。「衣」は絹ではなく衣服の「きぬ」を指し、「歯に絹着せぬ」と書くのは誤記とされる。
大言壮語
たいげんそうご
実力以上の大きなことを言うこと。できもしないことを偉そうに言うこと。
温厚篤実
おんこうとくじつ
人当たりがおだやかで、まじめさと誠実さを備えた人柄。単に怒らない、優しいというだけではなく、長い関わりの中で信頼できる人物を敬意を込めて評する語である。静かな性格だが意思がない、という意味にはならない。自己紹介で一語だけ飾るより、推薦文や送別の言葉で、具体的な行いとともに「温厚篤実な人柄」と述べると自然である。気さくで社交的な印象なら「温和」、従順さをいうなら「温順」が近い。穏やかな対応と揺るがない誠実さの両方を伝えたいときに、この言葉が役立つ。