沈黙は金
ちんもくはきん
ことわざの意味
「雄弁は銀、沈黙は金」の後半だけが独り歩きした言い方で、黙っていることのほうが優れた弁舌よりも価値を持つ場合がある、ということ。口を閉ざしさえすれば偉いという語ではない。辞典の語釈が重く見るのは、沈黙すべき時とその効き目を心得ている判断のほうで、言葉を尽くすべき場面で黙り込むのは、この語が褒める沈黙ではない。言い返さずにおいて場が収まる、余計な一言を飲み込んで信用を保つ——そうした場面で使う。
言葉の由来
西洋から入った表現である。『デジタル大辞泉』は英語の Speech is silver, silence is golden. を掲げ、英国の思想家カーライル『衣装哲学』に見える言葉と説明する。『精選版 日本国語大辞典』も同じ英語句からとし、日本語での早い例に徳富蘆花『思出の記』(1900〜01年)の「実に沈黙は金、雄辯は銀」を挙げる。『ことわざを知る辞典』によれば、順を入れ替えた「沈黙は金、雄弁は銀」の形もあり、日本語に根づく過程で後半の「沈黙は金」だけが単独で用いられるようになって今に至る。つまりこの四字は二句一組のことわざの片割れで、銀より金が上という値踏みが前提にある。雄弁そのものを否定した語ではない。
使い方の例
- “この場面では何も言わない方がいい。沈黙は金だ。”
似たことわざ
対のことわざ
英語の表現
Silence is golden.
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「沈黙は金」 — ことわざを知る辞典がこの見出しを「雄弁は銀、沈黙は金」への参照項目として立てていることの確認
- コトバンク「雄弁は銀沈黙は金」 — デジタル大辞泉が英語 Speech is silver, silence is golden. とカーライル『衣装哲学』を示すこと、ことわざを知る辞典が日本語に定着する過程で「沈黙は金」が単独で使われるようになったと説明することの確認
- コトバンク「沈黙は金雄弁は銀」 — 精選版が同じ英語句からとした上で、徳富蘆花『思出の記』(1900〜01)の「実に沈黙は金、雄辯は銀」を初出例に挙げることの確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
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関連することわざ
不言実行
ふげんじっこう
言葉や理屈を並べ立てず、やるべきことを黙って片づけること。デジタル大辞泉の語釈は「文句や理屈を言わずに」と限定しており、口をきかないことそのものを褒める語ではない。弁解や宣言に費やす言葉を省き、結果で示す態度を指す。人物評として「不言実行の人」の形で使い、口先だけの相手と対比する文脈に置かれることが多い。後から作られた「有言実行」と対で語られるが、先にある語はこちらである。
言わぬが花
いわぬがはな
すべてを言葉にして伝えるよりも、あえて口にしない方が奥ゆかしさや趣があり、相手への配慮にもなるということ。知っていても言わない、感じていても表に出さない——その沈黙の中にこそ言葉を超えた余韻と品格があるという日本的な感覚を表す。能楽の「秘すれば花なり」の美意識にも通じる表現で、情報の全開示が必ずしも最善ではないという含意も持つ。
口は災いの元
くちはわざわいのもと
不用意な発言や軽はずみな言葉が、本人にとって予期せぬ災難や困難を引き起こす原因となることがある。言葉はひとたび口から出ると取り消すことができないため、発言には十分な注意が必要であるという教訓。怒りや感情的な状態での言葉、機密の漏洩、場をわきまえない一言に対する戒めであり、SNS全盛の現代においてこの教訓はより一層重みを増している。
言わずもがな
いわずもがな
「言わずもがな」は、言う必要がないほど明らかなこと。また、かえって口に出さないほうがよいことを指す。「彼の経験は言わずもがな」なら当然の前提として添えるが、「言わずもがなの一言」なら余計な発言の意味だ。「言うまでもない」は前者に限られ、「言わぬが花」は後者の沈黙をよしとする。迷ったら、文の後ろに「もちろん」が入るか、「言わなければよかった」が入るかで二つの用法を読み分ける。
時は金なり
ときはかねなり
時間はお金と同じくらい貴重なものだから、無駄にしてはいけないということ。
有言実行
ゆうげんじっこう
口に出して言ったことを必ず実行すること。精選版日本国語大辞典は「言ったことは必ず実行する」に加えて「格別に言いたてて事を行なう」意も挙げており、常に褒め言葉とは限らない。わざわざ宣言してから動く態度そのものを指す場合がある。黙って結果を出す「不言実行」と対にして語られ、決意表明や公約をやり遂げた人を評するときに使う。宣言だけで終われば「有言不実行」と呼ばれる。
猫に小判
ねこにこばん
価値を理解する力のない者に、どれほど貴重なものを与えても無意味であること。猫が金貨の価値を認識できないのと同様に、相手が受け取る準備も能力もない場合、贈り手の厚意や優秀さは活きない。非難よりも困った諦めを帯びた観察として使われることが多く、相手を責める言葉ではなく、状況そのものへの感慨として使うのが自然な語感である。
目は口ほどにものを言う
めはくちほどにものをいう
目つきや表情は、口で言う言葉と同じくらい気持ちを伝えるものだということ。