他山の石
たざんのいし
故事成語の意味
他の山から出た粗い石でも、玉を磨くのに役立つ。転じて、他人の誤った言行や失敗も、自分を磨く材料にできるという教え。磨かれるのは自分の側で、石にあたるのは他人の劣ったところだから、優れた人の言行を手本にする意味で使うのは誤りとされる。敬意を向けたい相手の仕事を「他山の石とします」と言えば、その人を粗い石に見立てたことになる。文化庁の調査でも、本来の意味で理解していた人は三割前後にとどまる。人の失敗から学ぶ「反面教師」に近い語だと置いて使うと、外しにくい。
故事の由来
『詩経』小雅「鶴鳴」の句による。この詩は二章から成り、第一章が「他山の石、以て錯(と)と為すべし」、第二章が「他山の石、以て玉を攻(みが)くべし」で結ばれる。毛詩序はこの詩を「宣王を誨(おし)うるなり」、すなわち王を諭す詩と説明する。よその山の粗い石でも玉を磨く道具になる——素材としては劣るものに用途を見出す発想が、そのまま人の言行の受け取り方へ移された。日本語の用例は江戸前期にさかのぼり、精選版日本国語大辞典は『集義和書』(1676年頃)の「他山の石はあらきが故に、よく玉をみがくといへり」を早い例に挙げる。磨かれるのは自分の側であって、石にあたるのは他人の劣った言行である——他人のすぐれた言行を手本にする意で使うのは誤りとされ、文化庁「国語に関する世論調査」(平成16年度)では、本来の意味で理解していた人が26.8%、異なる意味で理解していた人が18.1%だった。日本にいつ伝わったかを示す資料は手元になく、伝来の時期は未詳とする。
用例
- “同業他社の失敗事例を他山の石として、リスク管理体制を見直した。”
- “彼の失敗を他山の石として、私は同じ間違いを繰り返さないようにした。”
- “他山の石というが、身近な人の失敗から学ぶことのほうが多い。”
- “先輩の苦労話を他山の石にして、若いうちから着実にスキルを積んでいる。”
- “他山の石として前任者の報告書を読み込んだおかげで、プロジェクトをスムーズに進められた。”
類義の故事成語
対義の故事成語
英語訳
"Learn from others' mistakes." / "A bad example can be a good lesson."
使うシーン
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- Wikisource『詩経』小雅「鶴鳴」 — 第一章「他山之石、可以為錯」第二章「他山之石、可以攻玉」の原文と、毛詩序が「誨宣王也」とすることの確認
- コトバンク「他山の石」 — 原句と語義、『集義和書』(1676年頃)の用例、他人のすぐれた言行を手本にする意で使うのは誤りとする注意の確認
- 文化庁「平成16年度 国語に関する世論調査」 — 「他山の石」を本来の意味で理解していた人が26.8%、異なる意味で理解していた人が18.1%という結果の確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
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