歯に衣着せぬ
はにきぬきせぬ
慣用句の意味
相手への遠慮や気遣いをせず、思ったことをそのまま率直に言うこと。相手が聞いて不快に感じることも、ためらわずに直接言う様子を表す。率直さが美徳として機能する文脈では褒め言葉として使われ、無遠慮さや失礼さを指摘する文脈では否定的な意味合いを帯びる。「衣」は絹ではなく衣服の「きぬ」を指し、「歯に絹着せぬ」と書くのは誤記とされる。
言葉の成り立ち
「歯に衣を着せる」は、口から出る言葉に布をかぶせて角を取る、という見立てである。「歯に衣着せぬ」はその否定で、言葉を包まずそのまま出す物言いを指す。辞書が注意を促すのは「衣」の字で、これは衣服の「きぬ」であり、「歯に絹着せぬ」と書くのは誤りとされる(デジタル大辞泉)。用例は室町時代までさかのぼる。精選版日本国語大辞典は『応永本論語抄』(1420年)為政第二の「歯にきぬをきせすの玉へり」を早い例に挙げ、近代では山本笑月『明治世相百話』(1936年)に「少しも歯に衣着せず素人をこき下す」の形が見える。六百年前から、この比喩で率直な物言いが言い表されてきたことになる。包む・包まないという見立てがいつどこで生まれたかまでは、辞書類では特定できない。褒め言葉にも非難にも振れる語だが、それは比喩そのものが直言の善悪を決めていないからで、どちらへ傾くかは前後の文脈が決める。
用例
- “彼女は歯に衣着せぬ物言いで有名で、会議では率直な批評で空気を切る。”
- “上司への不満を歯に衣着せず直接伝えたことが、かえって信頼関係を深めた。”
- “このコメンテーターは歯に衣着せぬ発言で視聴者の支持を集めている。”
- “友人として歯に衣着せず言わせてもらうが、今の君の判断は間違っている。”
- “歯に衣着せぬ批評は相手を傷つけることもあるが、成長の糧になることも多い。”
似た慣用句
対になる慣用句
英語表現
To speak bluntly; To call a spade a spade; To pull no punches
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「歯に衣着せぬ」 — 「衣」は衣服で「絹」と書くのは誤りという補説、『応永本論語抄』(1420年)為政第二と『明治世相百話』(1936年)の用例の確認
- Weblio 辞書「歯に衣着せぬ」 — 語義と「衣」の補説の再確認(江戸時代からの使用や「建前と本音」を由来とする説明は載っていない)
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年
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