言葉辞典
慣用句

腹を割って話す

はらをわってはなす

慣用句の意味

本心を包み隠さず打ち明けて話し合うこと。辞書の見出しは「腹を割る」で、精選版日本国語大辞典はこれを「本心をうちあける。包み隠さずすべてをさらけ出す」と説き、デジタル大辞泉は用例として「腹を割って話す」の形を挙げる。遠慮や駆け引きをやめ、考えていることをそのまま相手に見せる対話を指す。対立を収めたいとき、あるいは相手を信頼していると示したいときに使い、「腹に一物ある」状態とはちょうど正反対である。

言葉の成り立ち

「腹」には古くから「心の中・本心・考え」の意味がある。精選版日本国語大辞典は「腹」の語義に「心の底。本心」を立て、その初出例として『白氏文集天永四年点』(1113年)を挙げる。改訂新版世界大百科事典も、日本には腹やその中の臓器に心・魂が宿るという古い見方があり、「腹をさぐる」「腹を割った話」「腹に一物」といった言い方にそれが残っていると述べている。「腹を割る」は、その腹を割り開いて中を見せるという言い方である。 言い回しとしての用例は新しく、精選版日本国語大辞典が初出例に挙げるのは長塚節『開業医』(1909年)の「どうもああ腹を割っていふ人でなくては頼もしくないから」で、この最も古い例からすでに「腹を割って言う」の形を取っている。建前と本音の二重構造といった文化論からこの語を説明する資料は確認できていない。

用例

  • “長年のわだかまりを解くために、二人は腹を割って話し合った。”
  • “チームの問題を解決するために、メンバー全員で腹を割って話す機会を設けた。”
  • “腹を割って話せる友人が一人でもいれば、人生はだいぶ楽になる。”
  • “上下関係を超えて腹を割って話せる職場環境こそ、心理的安全性の証だ。”
  • “交渉の場で腹を割って話したことで、意外にも相手の真意がわかった。”

似た慣用句

本音で話す率直に話す打ち明け話をする胸の内を明かす

対になる慣用句

腹に一物ある本音を隠す建前で話す

英語表現

To speak frankly; To open up; To bare one's heart; To have a heart-to-heart talk

使う場面

本音コミュニケーション

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

  • コトバンク「腹を割る」 — 辞書の見出しは「腹を割る」で、大辞泉が用例に「―・って話す」の形を挙げること、精選版が初出の実例に長塚節『開業医』(1909)の「どうもああ腹を割っていふ人でなくては頼もしくないから」を挙げること(最古の例からすでに「腹を割って言う」の形)の確認
  • コトバンク「腹」 — 精選版が「腹」の語義に「心の底。本心」を立て初出の実例に『白氏文集天永四年点』(1113)を挙げること、改訂新版世界大百科事典が腹や腹部の臓器に心や魂が宿るとする見方の表れとして「腹をさぐる」「腹を割った話」「腹に一物」を挙げることの確認。建前と本音の二重構造からこの語を説明する記述は無い
  • Weblio「腹を割って話す」 — この語形では辞典の見出しが立たず日本語例文用例辞書のみであることの確認(見出し語としての「腹を割って話す」は辞書の見出し「腹を割る」の用例形にあたる)

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年

関連する慣用句

慣用句

腹に一物ある

はらにいちもつある

表面には出さないが、心の中に何か良からぬ考えや企みを隠していること。うわべは平静に見えても、内心では腹黒い意図が潜んでいることを指す表現。相手の真意が読めない場面や、表向きは友好的でも内心に策略を持つ人物を評する際に使われる批判的な言葉。「腹」が日本語で「本心・本音」を象徴する言葉であることに由来し、「腹を割って話す」とは対照的な状態を表す。

故事成語

肝胆相照らす

かんたんあいてらす

互いに心の奥底まで打ち明け合い、深く理解し合うこと。腹を割って話せる真に親密な関係を指す。

慣用句

腹をくくる

はらをくくる

どのような結果になっても受け入れる覚悟を決め、思い切った行動に出る心境になること。『デジタル大辞泉』は覚悟を決める・決意を固める意とし、『精選版 日本国語大辞典』は「どんな結果になってもたじろがないように意を決する」と語釈する。うまくいかなかった場合の損まで引き受けたうえで前に出る、という重さがこの語にはある。辞典が類語として並べる「腹を決める」「腹を据える」「腹を固める」はほぼ同義で、言い換えが利く。

四字熟語

以心伝心

いしんでんしん

言葉や文字を使わなくても、互いの心が自然に通じ合うこと。禅宗で言語や文字を超えて師匠の悟りが弟子の心に直接伝わることを表した語が日常語に転じた。深い信頼関係や長い付き合いの中で言葉を交わさなくても意思疎通できる状態を表す。特に長年連れ添ったパートナー、同じ道を歩んできた師弟、幼馴染など、積み重ねられた時間が生み出す深い相互理解を表す際に使われることが多い。

故事成語

断腸の思い

だんちょうのおもい

胸が痛むというだけでは足りない、身を裂かれるほど深く悲しく苦しい思い。大切な人との別れ、守りたかったものを断念する場面など、取り返しのつかない喪失を強く表す。悔しさや怒りが中心なら「痛恨」や「切歯扼腕」のほうが近く、日常の小さな失望には重すぎる。「断腸の思いで〜を手放す」の形では、手放す決断そのものに大きな痛みがあることを伝えられる。他人の苦しみを評するときは、安易に大きな語を当てず、本人の状況に見合うか慎重に選びたい。

慣用句

口が軽い

くちがかるい

秘密を守れず、すぐにしゃべってしまうこと。

慣用句

歯に衣着せぬ

はにきぬきせぬ

相手への遠慮や気遣いをせず、思ったことをそのまま率直に言うこと。相手が聞いて不快に感じることも、ためらわずに直接言う様子を表す。率直さが美徳として機能する文脈では褒め言葉として使われ、無遠慮さや失礼さを指摘する文脈では否定的な意味合いを帯びる。「衣」は絹ではなく衣服の「きぬ」を指し、「歯に絹着せぬ」と書くのは誤記とされる。

慣用句

口が堅い

くちがかたい

秘密をよく守り、余計なことを言わないこと。

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