言葉辞典
慣用句

腹をくくる

はらをくくる

慣用句の意味

どのような結果になっても受け入れる覚悟を決め、思い切った行動に出る心境になること。覚悟を固め、逃げずに立ち向かう決意を表す言葉。不安や恐れを乗り越えて、開き直りを含む強い決断を示す表現。武士が腹帯を締めて臨戦態勢を整えたイメージが語源とされ、腹(本心・覚悟の座)をひとつに固めることを指す。「腹を割って話す」「腹に一物ある」と合わせて「腹の慣用句」の代表格のひとつ。

言葉の成り立ち

「腹をくくる」の「くくる」は「縛る・まとめる」という意味で、「腹をひとつにまとめて固める」イメージから来ているとされる。武士が戦場に向かう前に腹帯(はらおび)を締め、腹をしっかり固めて臨戦態勢を整えた動作が語源という説もある。「腹(はら)」を使った慣用句の中で「腹をくくる」は「決意・覚悟を固める」を意味し、「腹を割って話す」(率直に本音を語るコミュニケーション)とは異なる。また「腹に一物ある」(隠した企みを持つ)とも全く異なり、「腹をくくる」は開き直りや覚悟の清潔さを含む言葉。「腹(はら)」を使う他の慣用句——「腹が立つ」(怒る)「腹を割る」(本音を明かす)「腹を探る」(相手の真意を探る)——と合わせて、「腹」が感情や意思決定の座として機能する日本語の身体観が窺える。

用例

  • 失敗を恐れず腹をくくって起業した彼は、3年で会社を軌道に乗せた。
  • 試験の結果はどうあれ、腹をくくって全力を尽くすしかない。
  • 上司に正直に話す前に、腹をくくるまでに時間がかかった。
  • 腹をくくって告白したが、意外にもあっさり受け入れてもらえた。
  • 交渉が長引くなか、腹をくくって最終条件を提示することにした。

似た慣用句

覚悟を決める腹を固める開き直る肚を括る

対になる慣用句

二の足を踏む躊躇する逃げ腰になる

英語表現

To steel oneself; To brace oneself; To resolve oneself; To commit to a decision come what may

使う場面

決意覚悟

参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年

関連する慣用句

慣用句

腹に一物ある

はらにいちもつある

表面には出さないが、心の中に何か良からぬ考えや企みを隠していること。うわべは平静に見えても、内心では腹黒い意図が潜んでいることを指す表現。相手の真意が読めない場面や、表向きは友好的でも内心に策略を持つ人物を評する際に使われる批判的な言葉。「腹」が日本語で「本心・本音」を象徴する言葉であることに由来し、「腹を割って話す」とは対照的な状態を表す。

慣用句

腹を割って話す

はらをわってはなす

本音・本心を包み隠さず、率直に打ち明けて話し合うこと。建前や遠慮をなくして、本当の気持ちや考えをさらけ出した対話を指す。深い信頼関係があるときや、問題解決のために本音の対話が必要な場面で使う表現。日本文化における「建前と本音」の二重構造の中で、本音を切り開いて対話する特別な場を指す言葉。「腹に一物ある」(本音を隠す)とは対照的な状態を表す慣用句。

故事成語

断腸の思い

だんちょうのおもい

腸(はらわた)が千切れるほど悲しく、辛い気持ちのこと。耐えがたい深い悲しみや苦悩を表す。

慣用句

胸を撫で下ろす

むねをなでおろす

心配していたことが解決して安心すること。ほっとすること。危険や困難が去って、緊張がほぐれた瞬間の安堵感を表す。試験の合格、病気の快復、事故の回避など、心配事が無事に解決したときに使う表現。「胸をなでおろした」と過去形でよく使われる。危険が完全に去ったことを確認してから使う表現なので、まだ不安が残る状況には使わない。

慣用句

揚げ足を取る

あげあしをとる

相手の言葉の些細なミスや言い間違いをとらえて、意地悪く責めたり批判したりすること。議論や会話の本質ではなく、言葉のあら探しに終始する行為を指す。「揚げ足」とは相手が失敗の隙をさらした瞬間を指し、それを巧みに捕まえて攻め込む様子を表す慣用句。建設的な議論を阻む、批判的なコミュニケーションの典型として否定的に使われることが多い。

慣用句

胸を張る

むねをはる

自信を持って堂々とすること。誇りを持つこと。

慣用句

頭を抱える

あたまをかかえる

難しい問題や困った状況に直面して、どうすればよいかわからず深く悩むこと。文字どおり両手で頭を抱えるような、深刻な困惑・行き詰まりの状態を表す言葉。解決策が見つからない焦りや絶望感を身体動作に例えた表現で、仕事・家庭・人間関係などあらゆる困難な場面に幅広く使われる。英語の「at one's wit's end(万策尽きた)」に対応する表現。

慣用句

骨を折る

ほねをおる

他人や物事のために、多大な苦労や努力を惜しまないこと。特に、誰かの役に立つために自分を犠牲にして骨身を惜しまず尽くす行為を指す。感謝の文脈で「骨を折ってくれた」のように使われることが多い能動的な表現。「骨が折れる」(その作業が大変だという状況描写)と対になる関係にあり、主体が誰かのために積極的に苦労するという意志的な行為を示す点で区別される。

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