言葉辞典
慣用句

腹をくくる

はらをくくる

慣用句の意味

どのような結果になっても受け入れる覚悟を決め、思い切った行動に出る心境になること。『デジタル大辞泉』は覚悟を決める・決意を固める意とし、『精選版 日本国語大辞典』は「どんな結果になってもたじろがないように意を決する」と語釈する。うまくいかなかった場合の損まで引き受けたうえで前に出る、という重さがこの語にはある。辞典が類語として並べる「腹を決める」「腹を据える」「腹を固める」はほぼ同義で、言い換えが利く。

言葉の成り立ち

『デジタル大辞泉』は「括る」の語義の一つに「腹をくくる」の形を立て、覚悟を決める、決意を固める意とする。『精選版 日本国語大辞典』はこれを「どんな結果になってもたじろがないように意を決する」と記し、用例を保高徳蔵『或る死、或る生』(1939年)から採る。「括る」の項には、縄や紐でばらばらのものを一つに束ねる、話にまとまりをつける、といった語義も並ぶ。ただし、そこから覚悟の意が生まれたと説明する辞典は見あたらない。同じことは、世間でよく語られる腹帯説にも言える。武士が出陣前に腹帯を締めた動作に由来するという説明は、今回あたった小学館の二辞典、集英社『ルーツでなるほど慣用句辞典』、『実用日本語表現辞典』のどれにも載っていない。裏づけの取れない語源を、もっともらしいからという理由で書くわけにはいかない。辞書で確かめられるのは、「腹」に本心・心づもりの意があること、それに「くくる」が付いた形が覚悟の意で使われてきたこと、初出の実例として辞典が挙げるのが1939年のものであること——ここまでである。

用例

  • “失敗を恐れず腹をくくって起業した彼は、3年で会社を軌道に乗せた。”
  • “試験の結果はどうあれ、腹をくくって全力を尽くすしかない。”
  • “上司に正直に話す前に、腹をくくるまでに時間がかかった。”
  • “腹をくくって告白したが、意外にもあっさり受け入れてもらえた。”
  • “交渉が長引くなか、腹をくくって最終条件を提示することにした。”

似た慣用句

覚悟を決める腹を固める開き直る肚を括る

対になる慣用句

二の足を踏む躊躇する逃げ腰になる

英語表現

To steel oneself; To brace oneself; To resolve oneself; To commit to a decision come what may

使う場面

決意覚悟

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

  • コトバンク「括る」 — デジタル大辞泉が「括る」の語義に、縄などで一つにまとめて縛る意と、「腹をくくる」の形で覚悟を決める・決意を固める意を別々に立てていることの確認
  • コトバンク「腹を括る」 — 精選版の語釈と保高徳蔵『或る死,或る生』(1939)の用例、デジタル大辞泉が類語に「腹を決める」「腹を固める」「腹を据える」を挙げることの確認。両辞典とも語源は記していない
  • コトバンク「腹」 — 「腹」に考えていること・心中・本心・心づもりの意があることの確認(デジタル大辞泉の語義4、精選版の語義5)
  • 集英社 imidas『ルーツでなるほど慣用句辞典』「腹を括る」 — 由来を扱う慣用句辞典でありながら、この句には語義と用例だけを載せ、武士の腹帯説を含む由来を記していないことの確認
  • Weblio 辞書「腹をくくる」 — 実用日本語表現辞典も覚悟を決める意だけを記し、由来に触れていないことの確認

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年

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