骨を折る
ほねをおる
慣用句の意味
他人や物事のために、多大な苦労や努力を惜しまないこと。特に、誰かの役に立つために自分を犠牲にして骨身を惜しまず尽くす行為を指す。感謝の文脈で「骨を折ってくれた」のように使われることが多い能動的な表現。「骨が折れる」(その作業が大変だという状況描写)と対になる関係にあり、主体が誰かのために積極的に苦労するという意志的な行為を示す点で区別される。
言葉の成り立ち
「骨(ほね)」が体の根幹であり、努力の象徴として使われることから(「骨が折れる」参照)。「骨を折る」は自分の骨を折るほどの覚悟で他者のために尽くす、という積極的・能動的な意味合いがある。「骨が折れる」が「その作業が大変だ」という状況描写であるのとは対照的に、「骨を折る」は「誰かのために積極的に苦労する」という行為を指す。例えば「先生が骨を折ってくださったおかげで入試に合格できた」のように、他者への感謝を込めて使う文脈が典型的。また「骨を折る」は自分のためではなく、他者・組織のために苦労することを強調する表現であり、この点で「努力する」「頑張る」などの一般表現と区別される。「骨(ほね)」を使った慣用句の中で「骨身を惜しまず」(どんな苦労も厭わない)との違いは、「骨を折る」が特定の誰かや事柄への尽力を示す点にある。
用例
- “就職先を見つけてもらうために、先生が随分骨を折ってくださった。”
- “彼女のために骨を折って手配した旅行が、素敵な思い出になってくれてよかった。”
- “会社のために骨を折り続けた30年間を、定年の日に振り返った。”
- “こんなに骨を折って部下を育てても、すぐ転職してしまうのは悲しい。”
- “仲介役として骨を折ってくれた友人のおかげで、和解の場が設けられた。”
似た慣用句
対になる慣用句
英語表現
To go to a lot of trouble for someone; To put in great effort; To work hard for someone
使う場面
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年
関連する慣用句
骨が折れる
ほねがおれる
物事が非常に難しく、多大な苦労・努力・手間がかかること。骨折するほどの過酷さで取り組まなければならない、困難な作業や状況を指す言葉。「骨を折る」(誰かのために尽力する)という能動的表現と対になる受け身の表現で、作業・状況そのものの困難さを客観的に描写する場合に使われる。「骨を折る」が他者への献身を指すのに対し、「骨が折れる」は物事の大変さ自体を描写する点が異なる。
鼻を折る
はなをおる
得意になっている人や傲慢な人の自尊心を打ち砕き、高飛車な態度を矯正すること。驕り高ぶった者を一撃で謙虚にさせる行為を指す表現。「鼻」が自尊心・誇りの象徴であることから、その鼻を「折る」ことで相手の驕りや慢心を打ち砕くイメージ。英語の「to take someone down a peg or two(上から引きずりおろす)」に対応する。「鼻が高い」と対照的な関係にある慣用句。
手を抜く
てをぬく
いい加減にやること。本来やるべき手順や努力を省略すること。
歯に衣着せぬ
はにきぬきせぬ
相手への遠慮や気遣いをせず、思ったことをそのまま率直に言うこと。相手が聞いて不快に感じることも、ためらわずに直接言う様子を表す。率直さが美徳として機能する文脈では褒め言葉として使われ、無遠慮さや失礼さを指摘する文脈では否定的な意味合いを帯びる。日本文化特有の「建前と本音」の二重構造の中で、本音を包まずに直接言う行為を際立たせる表現でもある。
頭が下がる
あたまがさがる
相手の行いや人柄に対して深く感心し、心から尊敬の念を抱くこと。思わず頭を下げるほどの感動と敬意を感じる様子を表す言葉。特に、長年の献身的な努力や無私の奉仕、困難な状況での毅然とした姿勢に触れたときに使われる表現。単なる「尊敬する」よりも強い感情的な感銘を含み、体が自然に反応してしまうほどの感動のニュアンスがある。
腹をくくる
はらをくくる
どのような結果になっても受け入れる覚悟を決め、思い切った行動に出る心境になること。覚悟を固め、逃げずに立ち向かう決意を表す言葉。不安や恐れを乗り越えて、開き直りを含む強い決断を示す表現。武士が腹帯を締めて臨戦態勢を整えたイメージが語源とされ、腹(本心・覚悟の座)をひとつに固めることを指す。「腹を割って話す」「腹に一物ある」と合わせて「腹の慣用句」の代表格のひとつ。
へそを曲げる
へそをまげる
機嫌を損ねて意地を張ること。些細なことで不機嫌になり、素直でなくなる様子を表す言葉。子どもっぽい反応や、些細な怒りから意固地になる態度を批判的あるいはやや滑稽に指す場合が多い。「へそ」が体の中心(物事の核心)の象徴として使われることから、その中心が歪む(曲がる)ことで態度や気持ちが素直でなくなる状態を表す。大人に対して使うときにはやや批判的なニュアンスが伴う。
鶏肋
けいろく
大して役に立たないが、捨てるには惜しいもののこと。やめるに惜しいが続けても大した成果が得られないことを指す。