頭が下がる
あたまがさがる
慣用句の意味
相手の行いや人柄に対して深く感心し、心から尊敬の念を抱くこと。思わず頭を下げるほどの感動と敬意を感じる様子を表す言葉。特に、長年の献身的な努力や無私の奉仕、困難な状況での毅然とした姿勢に触れたときに使われる表現。単なる「尊敬する」よりも強い感情的な感銘を含み、体が自然に反応してしまうほどの感動のニュアンスがある。
言葉の成り立ち
実用日本語表現辞典は、お辞儀で頭を下げる動作が由来だとする。ただし、いつ誰が言い始めたかを示す文献は見当たらない。たどれるのは用例のほうで、精選版日本国語大辞典は初出の実例に泉鏡花『琵琶伝』(1896年)の「ひとりでに天窓(アタマ)が下(サガ)るだ」を挙げる。「天窓」と書いて「アタマ」と読ませる当て字である。眼目はこの「ひとりでに」で、自分の意思と関わりなく頭が下がることをいう。精選版の語釈が「敬服させられる」「尊敬の気持が起こる」と、どちらも自分から進んでという形を取らないのも、同じところを見ている。ただ「尊敬する」と言う場合との違いはここにある。「頭を抱える」が難問を前にした困惑を指すのに対し、こちらは相手の行いに打たれて自然に姿勢が変わることをいう。英語では、研究社の新和英中辞典が「I take off my hat to him」を訳例に挙げる。帽子を取る所作で敬意を示す言い方で、体の動きが敬意を担う点は日本語と変わらない。
用例
- “何十年も地域の清掃活動を続けているボランティアの方には、本当に頭が下がる。”
- “病気と闘いながらも仕事を続ける同僚の姿に、頭が下がる思いだ。”
- “被災地で連日支援活動を続ける消防士たちには、頭が下がる。”
- “あの研究者が40年間一つのテーマを追い続けた姿勢には、頭が下がる。”
- “困難な状況でも笑顔を絶やさず子どもたちを支える先生には、頭が下がる。”
似た慣用句
対になる慣用句
英語表現
To be filled with admiration; To take one's hat off to someone; To bow in respect
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「頭が下がる」 — デジタル大辞泉「敬服する。感服する」と、精選版日本国語大辞典の初出実例 泉鏡花『琵琶伝』(1896)の確認
- Weblio「頭が下がる」 — 実用日本語表現辞典が「お辞儀をするときに、頭を下げる動作が由来とされる」と説明していることの確認
- Weblio英和和英「頭が下がる」 — 研究社 新和英中辞典が take off one's hat to を当てていることの確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年
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関連する慣用句
頭を抱える
あたまをかかえる
難しい問題や困った状況に直面して、どうすればよいかわからず深く悩むこと。文字どおり両手で頭を抱えるような、深刻な困惑・行き詰まりの状態を表す言葉。解決策が見つからない焦りや絶望感を身体動作に例えた表現で、仕事・家庭・人間関係などあらゆる困難な場面に幅広く使われる。英語の「at one's wit's end(万策尽きた)」に対応する表現。
鼻を折る
はなをおる
得意になっている人や傲慢な人の自尊心を打ち砕き、高飛車な態度を矯正すること。驕り高ぶった者を一撃で謙虚にさせる行為を指す表現。「鼻」が自尊心・誇りの象徴であることから、その鼻を「折る」ことで相手の驕りや慢心を打ち砕くイメージ。英語の「to take someone down a peg or two(上から引きずりおろす)」に対応する。「鼻が高い」と対照的な関係にある慣用句。
胸を撫で下ろす
むねをなでおろす
心配していたことが解決して安心すること。ほっとすること。危険や困難が去って、緊張がほぐれた瞬間の安堵感を表す。試験の合格、病気の快復、事故の回避など、心配事が無事に解決したときに使う表現。「胸をなでおろした」と過去形でよく使われる。危険が完全に去ったことを確認してから使う表現なので、まだ不安が残る状況には使わない。
首を長くする
くびをながくする
待ち遠しくて待ちわびること。期待して心待ちにすること。
鼻が高い
はながたかい
誇らしい、得意だという気持ちを表す言い方。精選版日本国語大辞典は「得意なさま」「誇らしい」と並べて「自慢らしい」も語釈に挙げており、自慢げに響く含みが消えない語でもある。辞書が引く古い用例は自分自身が得意になる場面のものだが、身内や教え子、母校といった近しい相手の成果を我がことのように喜ぶ場面でも使う。自分のことに使うか身内のことに使うかで受け取られ方が変わる語なので、そこは意識して選びたい。顔立ちをいう「鼻が高い」は別の語義で、辞書も分けて立てている。
目から鱗が落ちる
めからうろこがおちる
あることがきっかけで急に物事の真相や本質が理解できるようになること。今まで見えなかった真実が突然明らかになる体験を指す。何かを教わったり気づかされたりして、それまでの思い込みや誤解が一気に解けた瞬間に使う表現。「目から鱗が落ちた」と過去形でも使われる。単に「知識を得た」だけでなく、視野や認識が根本から変わったような発見の感覚が含まれる。
へそを曲げる
へそをまげる
機嫌を損ねて意地を張ること。些細なことで不機嫌になり、素直でなくなる様子を表す言葉。子どもっぽい反応や、些細な怒りから意固地になる態度を批判的あるいはやや滑稽に指す場合が多い。「へそ」が体の中心(物事の核心)の象徴として使われることから、その中心が歪む(曲がる)ことで態度や気持ちが素直でなくなる状態を表す。大人に対して使うときにはやや批判的なニュアンスが伴う。
度肝を抜く
どぎもをぬく
相手を極度に驚かせること、また非常に強い驚きを受けること。予想をはるかに超えた衝撃・迫力・パフォーマンスに出会い、圧倒されるほどの驚きを表す強烈な慣用表現。良い意味(感動的な演技や美しい景色)にも悪い意味(衝撃的なニュースや突然の出来事)にも使われる。「驚く」という言葉の中でも特に強烈な驚きを指す場面で用いられる。