度肝を抜く
どぎもをぬく
慣用句の意味
相手を極度に驚かせること、また非常に強い驚きを受けること。予想をはるかに超えた衝撃・迫力・パフォーマンスに出会い、圧倒されるほどの驚きを表す強烈な慣用表現。良い意味(感動的な演技や美しい景色)にも悪い意味(衝撃的なニュースや突然の出来事)にも使われる。「驚く」という言葉の中でも特に強烈な驚きを指す場面で用いられる。
言葉の成り立ち
「度肝」の「ど」は接頭語である。精選版日本国語大辞典はそう明記したうえで、「きも」を強めていう語と解く。デジタル大辞泉も同じく「きも」を強めていう語とし、どちらも語義を「きもったま」と言い換えている。「ど真ん中」「ど根性」の「ど」と同じ働きであって、「度胸の肝心な部分」「肝の大きなもの」といった解き方には辞書の裏づけがない。「度胆」とも書く。意味の近い言い方としては、両辞典が「肝をつぶす」を挙げる。精選版が挙げる最も古い例は滑稽本『七偏人』(一八五七〜六三年)で、そこでの表記は「太胆」。語としての「度肝」の例は内田魯庵『社会百面相』(一九〇二年)まで下る。江戸の歌舞伎や武道で使われたとする説明は、手元の資料では確かめられない。
用例
- “新作のゲームのグラフィックは、度肝を抜くほどリアルで観客を圧倒した。”
- “若手選手の神懸かり的なパフォーマンスは、ベテランたちの度肝を抜いた。”
- “突然の大型買収のニュースは業界関係者の度肝を抜き、株価が急騰した。”
- “彼女の弾けるようなピアノ演奏は聴衆の度肝を抜き、スタンディングオベーションが起きた。”
- “そのマジシャンのトリックは度肝を抜くものばかりで、観客は終始息を呑んでいた。”
似た慣用句
対になる慣用句
英語表現
To astound; To blow someone away; To knock someone's socks off; To take one's breath away
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「度肝」 — 精選版が「ど」を接頭語と明記し「きもを強めていう語」と解すること、デジタル大辞泉も「きも」を強めていう語とし「度胆」表記を併記すること、内田魯庵『社会百面相』(1902)を初出例に挙げることの確認(「度胸の肝心な部分」説に辞書の裏づけがないことの根拠)
- コトバンク「度肝を抜く」 — 精選版が滑稽本『七偏人』(1857〜63)を初出例に挙げ、その本文の表記が「太胆(ドギモ)」であること、多く「度肝を抜かれる」の形で使うことの確認。江戸の歌舞伎・武道での使用に触れた記述はない
- Weblio 辞書「度肝を抜く」 — 実用日本語表現辞典が「度胆を抜く」を別表記に掲げることの確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年
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関連する慣用句
息を呑む
いきをのむ
驚きや緊張、感動で思わず息を止めてしまうこと。美しいものや衝撃的な場面に出会い、一瞬呼吸が止まるほどの強い感情を受けた様子を表す言葉。良い意味(絶景や感動的な演技)にも悪い意味(衝撃的な知らせ)にも使える表現。「呑む」が「飲み込む・中に収める」を意味し、息を一瞬飲み込んで止める身体感覚を言語化したもの。英語の「hold one's breath」や「take one's breath away」に対応する。
目から鱗が落ちる
めからうろこがおちる
あることがきっかけで急に物事の真相や本質が理解できるようになること。今まで見えなかった真実が突然明らかになる体験を指す。何かを教わったり気づかされたりして、それまでの思い込みや誤解が一気に解けた瞬間に使う表現。「目から鱗が落ちた」と過去形でも使われる。単に「知識を得た」だけでなく、視野や認識が根本から変わったような発見の感覚が含まれる。
肝胆相照らす
かんたんあいてらす
互いに心の奥底まで打ち明け合い、深く理解し合うこと。腹を割って話せる真に親密な関係を指す。
頭が下がる
あたまがさがる
相手の行いや人柄に対して深く感心し、心から尊敬の念を抱くこと。思わず頭を下げるほどの感動と敬意を感じる様子を表す言葉。特に、長年の献身的な努力や無私の奉仕、困難な状況での毅然とした姿勢に触れたときに使われる表現。単なる「尊敬する」よりも強い感情的な感銘を含み、体が自然に反応してしまうほどの感動のニュアンスがある。
骨が折れる
ほねがおれる
物事が非常に難しく、多大な苦労・努力・手間がかかること。骨折するほどの過酷さで取り組まなければならない、困難な作業や状況を指す言葉。「骨を折る」(誰かのために尽力する)という能動的表現と対になる受け身の表現で、作業・状況そのものの困難さを客観的に描写する場合に使われる。「骨を折る」が他者への献身を指すのに対し、「骨が折れる」は物事の大変さ自体を描写する点が異なる。
胸を撫で下ろす
むねをなでおろす
心配していたことが解決して安心すること。ほっとすること。危険や困難が去って、緊張がほぐれた瞬間の安堵感を表す。試験の合格、病気の快復、事故の回避など、心配事が無事に解決したときに使う表現。「胸をなでおろした」と過去形でよく使われる。危険が完全に去ったことを確認してから使う表現なので、まだ不安が残る状況には使わない。
堪忍袋の緒が切れる
かんにんぶくろのおがきれる
我慢を重ねてきた人が、もうこれ以上こらえられず、怒りを表に出すこと。堪忍をためた袋の口を結ぶ緒が切れるという比喩で、限界を越えた瞬間を言う。「目くじらを立てる」は他人の小さな欠点を探して責める行為、「逆鱗に触れる」は本来は目上の怒りを買う語だが、現在は相手をひどく怒らせる意味にも広がった。こちらは怒る側がどれだけ耐え、ついに我慢できなくなったかに焦点がある。
喉から手が出る
のどからてがでる
欲しくてたまらないこと。手に入れたい気持ちを抑えきれず、体のほうが先に動き出しそうなほど強い欲求を表す。品物だけでなく、人材・情報・時間など形のないものにも使う。「喉から手が出るほど」の形で程度を強める使い方が大半で、「喉から手が出た」と言い切る形はまず使わない。欲しがっている当人の切実さを言う言葉なので、他人の欲を責める場面には向かない。