言葉辞典
慣用句

度肝を抜く

どぎもをぬく

慣用句の意味

相手を極度に驚かせること、また非常に強い驚きを受けること。予想をはるかに超えた衝撃・迫力・パフォーマンスに出会い、圧倒されるほどの驚きを表す強烈な慣用表現。良い意味(感動的な演技や美しい景色)にも悪い意味(衝撃的なニュースや突然の出来事)にも使われる。「驚く」という言葉の中でも特に強烈な驚きを指す場面で用いられる。

言葉の成り立ち

「度肝(どぎも)」は「度胸の肝心な部分」または「肝の大きなもの(胆力の根幹)」と解釈される語で、「肝(きも)」が日本語において「胆力・度胸・精神の座」を意味することに由来する。「肝を冷やす」(ひやりとする)、「肝が据わる」(度胸がある)、「肝心」(最も重要な)など、「肝」を使った表現は多い。「度肝」はその中でも「度胸の中枢・肝の核心」を指し、それが「抜ける」ほどの驚きは魂が飛び出すような衝撃を意味する。江戸時代の歌舞伎や武道の世界でも「肝を抜く」という表現が使われており、相手を圧倒することを意味した。現代では主に予想をはるかに超えた驚きや衝撃——良い意味でも悪い意味でも——を表す際に使われる言葉として定着している。

用例

  • 新作のゲームのグラフィックは、度肝を抜くほどリアルで観客を圧倒した。
  • 若手選手の神懸かり的なパフォーマンスは、ベテランたちの度肝を抜いた。
  • 突然の大型買収のニュースは業界関係者の度肝を抜き、株価が急騰した。
  • 彼女の弾けるようなピアノ演奏は聴衆の度肝を抜き、スタンディングオベーションが起きた。
  • そのマジシャンのトリックは度肝を抜くものばかりで、観客は終始息を呑んでいた。

似た慣用句

驚かせる肝を冷やすびっくり仰天させる圧倒する

対になる慣用句

平凡で驚かせない予想通り物足りない

英語表現

To astound; To blow someone away; To knock someone's socks off; To take one's breath away

使う場面

驚き衝撃

参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年

関連する慣用句

慣用句

息を呑む

いきをのむ

驚きや緊張、感動で思わず息を止めてしまうこと。美しいものや衝撃的な場面に出会い、一瞬呼吸が止まるほどの強い感情を受けた様子を表す言葉。良い意味(絶景や感動的な演技)にも悪い意味(衝撃的な知らせ)にも使える表現。「呑む」が「飲み込む・中に収める」を意味し、息を一瞬飲み込んで止める身体感覚を言語化したもの。英語の「hold one's breath」や「take one's breath away」に対応する。

慣用句

目から鱗が落ちる

めからうろこがおちる

あることがきっかけで急に物事の真相や本質が理解できるようになること。今まで見えなかった真実が突然明らかになる体験を指す。何かを教わったり気づかされたりして、それまでの思い込みや誤解が一気に解けた瞬間に使う表現。「目から鱗が落ちた」と過去形でも使われる。単に「知識を得た」だけでなく、視野や認識が根本から変わったような発見の感覚が含まれる。

故事成語

肝胆相照らす

かんたんあいてらす

互いに心の奥底まで打ち明け合い、深く理解し合うこと。腹を割って話せる真に親密な関係を指す。

慣用句

胸を撫で下ろす

むねをなでおろす

心配していたことが解決して安心すること。ほっとすること。危険や困難が去って、緊張がほぐれた瞬間の安堵感を表す。試験の合格、病気の快復、事故の回避など、心配事が無事に解決したときに使う表現。「胸をなでおろした」と過去形でよく使われる。危険が完全に去ったことを確認してから使う表現なので、まだ不安が残る状況には使わない。

慣用句

腹をくくる

はらをくくる

どのような結果になっても受け入れる覚悟を決め、思い切った行動に出る心境になること。覚悟を固め、逃げずに立ち向かう決意を表す言葉。不安や恐れを乗り越えて、開き直りを含む強い決断を示す表現。武士が腹帯を締めて臨戦態勢を整えたイメージが語源とされ、腹(本心・覚悟の座)をひとつに固めることを指す。「腹を割って話す」「腹に一物ある」と合わせて「腹の慣用句」の代表格のひとつ。

慣用句

骨が折れる

ほねがおれる

物事が非常に難しく、多大な苦労・努力・手間がかかること。骨折するほどの過酷さで取り組まなければならない、困難な作業や状況を指す言葉。「骨を折る」(誰かのために尽力する)という能動的表現と対になる受け身の表現で、作業・状況そのものの困難さを客観的に描写する場合に使われる。「骨を折る」が他者への献身を指すのに対し、「骨が折れる」は物事の大変さ自体を描写する点が異なる。

慣用句

頭が下がる

あたまがさがる

相手の行いや人柄に対して深く感心し、心から尊敬の念を抱くこと。思わず頭を下げるほどの感動と敬意を感じる様子を表す言葉。特に、長年の献身的な努力や無私の奉仕、困難な状況での毅然とした姿勢に触れたときに使われる表現。単なる「尊敬する」よりも強い感情的な感銘を含み、体が自然に反応してしまうほどの感動のニュアンスがある。

故事成語

断腸の思い

だんちょうのおもい

胸が痛むというだけでは足りない、身を裂かれるほど深く悲しく苦しい思い。大切な人との別れ、守りたかったものを断念する場面など、取り返しのつかない喪失を強く表す。悔しさや怒りが中心なら「痛恨」や「切歯扼腕」のほうが近く、日常の小さな失望には重すぎる。「断腸の思いで〜を手放す」の形では、手放す決断そのものに大きな痛みがあることを伝えられる。他人の苦しみを評するときは、安易に大きな語を当てず、本人の状況に見合うか慎重に選びたい。

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