言葉辞典
慣用句

揚げ足を取る

あげあしをとる

慣用句の意味

相手の言い間違い、言葉尻、表現上の小さな不備だけを取り上げ、主張の筋とは別の所で責めたりからかったりすること。否定的な評価を伴う慣用句で、相手の誤りを正確に直すことすべてを指すわけではない。たとえば数字の桁違いが結論を変えるなら、それは必要な訂正であって「揚げ足を取る」ではない。論点に関わらない一語だけを何度も責め、相手を言い負かすことが目的になったときに使う。会議や文章の検討では、「表現より結論の根拠を確認しよう」と本筋へ戻す言い方を選ぶと、揚げ足取りになりにくい。

言葉の成り立ち

国語辞典では「揚げ足を取る」の字義を、相撲や柔道などで相手の浮いた足をとらえて倒すこととしている。そこから、相手が不用意に出した言葉をすかさずつかんで攻める比喩が生まれた。『精選版 日本国語大辞典』を載せるコトバンクは、比喩的な意味の早い用例として1779年の『大通愛想尽』を挙げる。文化庁の令和3年度「国語に関する世論調査」でも、この語について、言い間違いや言葉尻をとらえて責めたりからかったりする意味を選んだ人が多かった。行動の失敗全般を責める意味に広げて受け取る人もいるため、相手のどの部分を問題にしているのかを文脈で明らかにしたい。語源の勝負の動きが残るので、建設的な助言よりも、隙を利用する冷たい印象を帯びやすい。

用例

  • “言い換えの一語だけを責め続けるのは、内容に答えず揚げ足を取ることになる。”
  • “数字の桁が違えば結論が変わるので、揚げ足ではなく訂正すべき誤りだ。”
  • “発表の表現ではなく提案の条件を尋ねれば、揚げ足取りにならず議論を進められる。”
  • “一度の言い間違いを笑うために取り上げるのは、揚げ足を取る態度に見える。”
  • “相手の言葉尻をとらえる前に、何を伝えようとしたのかを確かめた。”

似た慣用句

言葉尻をとらえる重箱の隅をつつく難癖をつける

対になる慣用句

本筋を問う建設的に指摘する大目に見る

英語表現

To jump on someone's slip of the tongue or minor wording error instead of engaging with the main point; to trip someone up; to carp at a fault.

使う場面

日常会話ビジネス議論批判慣用句

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

用法を考える際に参照した読者の疑問

ここは言葉を選ぶ人の迷いを知るための資料で、語義そのものの根拠にはしていません。

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年

関連する慣用句

慣用句

目くじらを立てる

めくじらをたてる

人の欠点や小さな誤りを探し出し、わずかな事を取り立てて強く非難すること。単に誤りを指摘したり、厳しく注意したりすること全部を指すのではない。この辞典での使い分けの目安としては、安全、金額、結論を左右する誤りを具体的に直すのは必要な訂正である。誤りの小ささに比べて、相手を責めることや粗を探すことが前へ出たときに、この慣用句が合う。言葉尻を攻めるなら「揚げ足を取る」、怒った目つきそのものなら「目を三角にする」が近い。誰かの抗議を「目くじら」と呼ぶ側にも、問題を小さく見せる働きがある。何が些細なのかを確かめて使いたい。

慣用句

足元を見る

あしもとをみる

相手の弱みや不利な立場につけ込んで、不当に有利な条件を押し付けること。相手の苦境や困り度合いを見透かして、値段や条件を吊り上げる行為を指す。「足元」とは比喩的に「相手が置かれた立場・状況の底辺」を意味し、そこを見透かして有利に動く様子を表している。江戸前期の浮世草子にすでに用例があり、18世紀初めの浄瑠璃では値の駆け引きの場面に使われている。

慣用句

足を引っ張る

あしをひっぱる

他人の仕事や努力を妨害したり、成功を阻んだりすること。チームや組織全体の前進を遅らせる邪魔な行為を指す。嫉妬や競争心から、前進しようとしている人を意図的に引き止めようとする様子を表す言葉。意図的な妨害のみならず、結果として足かせになってしまう状況にも使われる。一人の行動が集団全体の動きを鈍らせる場面で特に使われる表現。

ことわざ

人の褌で相撲を取る

ひとのふんどしですもうをとる

他人が用意した物・資金・アイデア・労力を利用し、自分の成果や利益にすること。特に、自分では相応の準備や負担をせず、手柄や利益だけを得ようとする不公平な態度を批判するときに使う。人に助けてもらうこと自体を責める語ではない。許可を得て協力し、貢献者を明記して負担と成果を分けるなら、この語で非難する場面とは言いにくい。ただし、形式上の許可があっても配分が不公平なら、文脈によっては当てはまる。「虎の威を借る狐」は他人の権威を後ろ盾にして威張ること、「付和雷同」は自分で考えず意見に従うことが中心である。

故事成語

蛇足

だそく

本来不要なのに余計な付け足しをすること。なくても一向に支障がないのに加えてしまった余分なもの、あるいはその行為を指す。文章・発言・工程設計など、蛇に足を描くことでかえって完成度や本来の価値を損なう場面に広く使われる。余分を削ることで本来の輝きが戻るという逆説的な教訓を示す言葉でもあり、補足に「蛇足ながら」と断る慣用表現としても広く定着している。

慣用句

音を上げる

ねをあげる

苦しさに耐えきれず弱音を吐くこと。降参すること。

故事成語

他山の石

たざんのいし

他の山から出た粗い石でも、玉を磨くのに役立つ。転じて、他人の誤った言行や失敗も、自分を磨く材料にできるという教え。磨かれるのは自分の側で、石にあたるのは他人の劣ったところだから、優れた人の言行を手本にする意味で使うのは誤りとされる。敬意を向けたい相手の仕事を「他山の石とします」と言えば、その人を粗い石に見立てたことになる。文化庁の調査でも、本来の意味で理解していた人は三割前後にとどまる。人の失敗から学ぶ「反面教師」に近い語だと置いて使うと、外しにくい。

四字熟語

針小棒大

しんしょうぼうだい

小さなことを大げさに言うこと。針ほどの小さなことを棒ほどに大きく言う。

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