言葉辞典
慣用句

足元を見る

あしもとをみる

慣用句の意味

相手の弱みや不利な立場につけ込んで、不当に有利な条件を押し付けること。相手の苦境や困り度合いを見透かして、値段や条件を吊り上げる行為を指す。「足元」とは比喩的に「相手が置かれた立場・状況の底辺」を意味し、そこを見透かして有利に動く様子を表している。江戸前期の浮世草子にすでに用例があり、18世紀初めの浄瑠璃では値の駆け引きの場面に使われている。

言葉の成り立ち

由来としてよく語られるのは、街道や宿場で駕籠かき・馬方が旅人の足もとから疲れ具合を読み取り、弱った客に高い代金を吹っかけたという説明である。ことわざ解説サイトの『故事ことわざ辞典』はこの説明を載せるが、出典の欄は空で、典拠となる書物は示されていない。デジタル大辞泉と精選版日本国語大辞典は語義と用例を示すだけで、由来には触れていない。確かめられるのは用例の古さのほうで、精選版は初出の実例として、浮世草子『西鶴置土産』(1693年)の「足もとを見立たる返事」(「見立てる」の形)と、浄瑠璃『傾城酒呑童子』(1718年)の六百両と千両の掛け合いに出る「足もと見られ」を挙げる。江戸前期にはこの言い回しが通用していたことまでは確かだが、駕籠かきの場面から生まれたと言い切れる資料は見当たらない。「揚げ足を取る」が言葉の隙を突くこと、「足を引っ張る」が他人の前進を妨げることを指すのに対し、この句は相手が置かれた状況そのものにつけ込む点が違う。

用例

  • “災害直後に宿泊料を数倍に値上げするのは、困っている人の足元を見た行為だ。”
  • “転職活動中と知って給与交渉で足元を見てくるような会社には入りたくない。”
  • “中古車ディーラーに足元を見られないよう、事前に相場をしっかり調べておいた。”
  • “旅行先の繁忙期に法外な価格を要求するホテルは、完全に旅行者の足元を見ている。”
  • “独占企業に足元を見られて、消費者が不当な高値を払わされている。”

似た慣用句

弱みにつけ込む足につけ込む乗じる相手の弱みを利用する

対になる慣用句

公正に取引する公平に扱う良心的な価格

英語表現

To take advantage of someone's weakness; To exploit someone's vulnerability; To see someone's weakness and act on it

使う場面

交渉弱み

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

  • コトバンク「足元を見る」 — デジタル大辞泉「相手の弱みにつけこむ」の語釈と、精選版日本国語大辞典が挙げる初出実例(浮世草子『西鶴置土産』1693年、浄瑠璃『傾城酒呑童子』1718年)の確認。両辞典とも語の成り立ちには触れていないことの確認
  • 故事ことわざ辞典「足元を見る」 — 街道筋や宿場で駕籠かき・馬方が旅人の足もとから疲れ具合を見抜いたとする由来説明と、出典欄が空であることの確認
  • Weblio「足元を見る」 — 実用日本語表現辞典の語釈と、駕籠かき由来説を載せるウィキペディアがその典拠に一般向けウェブ記事を挙げていることの確認

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年

関連する慣用句

慣用句

揚げ足を取る

あげあしをとる

相手の言い間違い、言葉尻、表現上の小さな不備だけを取り上げ、主張の筋とは別の所で責めたりからかったりすること。否定的な評価を伴う慣用句で、相手の誤りを正確に直すことすべてを指すわけではない。たとえば数字の桁違いが結論を変えるなら、それは必要な訂正であって「揚げ足を取る」ではない。論点に関わらない一語だけを何度も責め、相手を言い負かすことが目的になったときに使う。会議や文章の検討では、「表現より結論の根拠を確認しよう」と本筋へ戻す言い方を選ぶと、揚げ足取りになりにくい。

慣用句

足を引っ張る

あしをひっぱる

他人の仕事や努力を妨害したり、成功を阻んだりすること。チームや組織全体の前進を遅らせる邪魔な行為を指す。嫉妬や競争心から、前進しようとしている人を意図的に引き止めようとする様子を表す言葉。意図的な妨害のみならず、結果として足かせになってしまう状況にも使われる。一人の行動が集団全体の動きを鈍らせる場面で特に使われる表現。

ことわざ

人の褌で相撲を取る

ひとのふんどしですもうをとる

他人が用意した物・資金・アイデア・労力を利用し、自分の成果や利益にすること。特に、自分では相応の準備や負担をせず、手柄や利益だけを得ようとする不公平な態度を批判するときに使う。人に助けてもらうこと自体を責める語ではない。許可を得て協力し、貢献者を明記して負担と成果を分けるなら、この語で非難する場面とは言いにくい。ただし、形式上の許可があっても配分が不公平なら、文脈によっては当てはまる。「虎の威を借る狐」は他人の権威を後ろ盾にして威張ること、「付和雷同」は自分で考えず意見に従うことが中心である。

故事成語

蛇足

だそく

本来不要なのに余計な付け足しをすること。なくても一向に支障がないのに加えてしまった余分なもの、あるいはその行為を指す。文章・発言・工程設計など、蛇に足を描くことでかえって完成度や本来の価値を損なう場面に広く使われる。余分を削ることで本来の輝きが戻るという逆説的な教訓を示す言葉でもあり、補足に「蛇足ながら」と断る慣用表現としても広く定着している。

慣用句

目くじらを立てる

めくじらをたてる

人の欠点や小さな誤りを探し出し、わずかな事を取り立てて強く非難すること。単に誤りを指摘したり、厳しく注意したりすること全部を指すのではない。この辞典での使い分けの目安としては、安全、金額、結論を左右する誤りを具体的に直すのは必要な訂正である。誤りの小ささに比べて、相手を責めることや粗を探すことが前へ出たときに、この慣用句が合う。言葉尻を攻めるなら「揚げ足を取る」、怒った目つきそのものなら「目を三角にする」が近い。誰かの抗議を「目くじら」と呼ぶ側にも、問題を小さく見せる働きがある。何が些細なのかを確かめて使いたい。

故事成語

漁夫の利

ぎょふのり

二者が争っている間に、第三者が苦労せずに利益を得ること。他人の争いを利用して、自分が得をすることを指す。争っている両者がともに消耗する一方で、傍観していた第三者が最終的な勝利者になるという状況に使う。ビジネスや政治・外交の戦略的な文脈でもよく引用され、漁夫の利を狙う第三者の戦略を批判または分析するときに使われる。

故事成語

馬脚を現す

ばきゃくをあらわす

隠していた本性や悪事・失敗が暴露されること。化けの皮がはがれて正体が明らかになることを指す。

故事成語

驥足を展ばす

きそくをのばす

優れた才能や能力を十分に発揮すること。隠れていた能力が存分に発揮される機会を得ることを指す。

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