足を引っ張る
あしをひっぱる
慣用句の意味
他人の仕事や努力を妨害したり、成功を阻んだりすること。チームや組織全体の前進を遅らせる邪魔な行為を指す。嫉妬や競争心から、前進しようとしている人を意図的に引き止めようとする様子を表す言葉。意図的な妨害のみならず、結果として足かせになってしまう状況にも使われる。一人の行動が集団全体の動きを鈍らせる場面で特に使われる表現。
言葉の成り立ち
競走や集団行動で前進しようとしている人の足を後ろから引っ張ることで、動きを止めてしまう様子から来た表現。カニが同じ籠の中でほかのカニが逃げようとすると引き戻してしまう「蟹の横這い」のような集団心理とも重なる比喩表現。職場や学校での集団生活において、努力する仲間を妨害したり、組織の進歩を阻む行為を批判的に表す際に多用される。「足(あし)」を使った慣用句の中で「足元を見る」が相手の弱みを見透かして有利な条件を引き出すことを指し、「揚げ足を取る」が言葉の隙を突くことを指すのに対し、「足を引っ張る」は他者の前進を直接的に阻む妨害行為全般を指す点で異なる。意図的な妨害だけでなく、意図せずにチームの足かせになってしまう場合にも使われる。
用例
- “一人のミスがチーム全体の足を引っ張り、プロジェクトが大幅に遅延した。”
- “才能があるのに嫉妬から仲間の足を引っ張ることに使うのは、もったいない。”
- “政治の世界では、同じ党内で互いに足を引っ張り合うことが珍しくない。”
- “彼のネガティブな発言が会議の空気を悪くし、チームの足を引っ張っていた。”
- “他者の足を引っ張ることに力を注ぐより、自分の実力を磨く方がずっと賢明だ。”
似た慣用句
対になる慣用句
英語表現
To hold someone back; To hinder someone's progress; To be a drag on someone
使う場面
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年
関連する慣用句
揚げ足を取る
あげあしをとる
相手の言葉の些細なミスや言い間違いをとらえて、意地悪く責めたり批判したりすること。議論や会話の本質ではなく、言葉のあら探しに終始する行為を指す。「揚げ足」とは相手が失敗の隙をさらした瞬間を指し、それを巧みに捕まえて攻め込む様子を表す慣用句。建設的な議論を阻む、批判的なコミュニケーションの典型として否定的に使われることが多い。
足元を見る
あしもとをみる
相手の弱みや不利な立場につけ込んで、不当に有利な条件を押し付けること。相手の苦境や困り度合いを見透かして、値段や条件を吊り上げる行為を指す。「足元」とは比喩的に「相手が置かれた立場・状況の底辺」を意味し、そこを見透かして有利に動く様子を表している。駕籠かきが旅人の疲れ具合を見て料金を吊り上げた江戸時代の商習慣に由来する。
蛇足
だそく
本来不要なのに余計な付け足しをすること。なくても一向に支障がないのに加えてしまった余分なもの、あるいはその行為を指す。文章・発言・工程設計など、蛇に足を描くことでかえって完成度や本来の価値を損なう場面に広く使われる。余分を削ることで本来の輝きが戻るという逆説的な教訓を示す言葉でもあり、補足に「蛇足ながら」と断る慣用表現としても広く定着している。
驥足を展ばす
きそくをのばす
優れた才能や能力を十分に発揮すること。隠れていた能力が存分に発揮される機会を得ることを指す。
目くじらを立てる
めくじらをたてる
些細なことをとがめ立てすること。小さな欠点を大げさに責めること。
急いては事を仕損じる
いそいではことをしそんじる
何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。
手を抜く
てをぬく
いい加減にやること。本来やるべき手順や努力を省略すること。
鼻を折る
はなをおる
得意になっている人や傲慢な人の自尊心を打ち砕き、高飛車な態度を矯正すること。驕り高ぶった者を一撃で謙虚にさせる行為を指す表現。「鼻」が自尊心・誇りの象徴であることから、その鼻を「折る」ことで相手の驕りや慢心を打ち砕くイメージ。英語の「to take someone down a peg or two(上から引きずりおろす)」に対応する。「鼻が高い」と対照的な関係にある慣用句。