言葉辞典
故事成語

蛇足

だそく

故事成語の意味

本来不要なのに余計な付け足しをすること。なくても一向に支障がないのに加えてしまった余分なもの、あるいはその行為を指す。文章・発言・工程設計など、蛇に足を描くことでかえって完成度や本来の価値を損なう場面に広く使われる。余分を削ることで本来の輝きが戻るという逆説的な教訓を示す言葉でもあり、補足に「蛇足ながら」と断る慣用表現としても広く定着している。

故事の由来

中国の古典『戦国策』(せんごくさく)斉策に記された故事に由来する。楚の国である人が、召使たちに一つの酒を与えた。全員に行き渡らない量のため、地面に蛇の絵を最初に描き終えた者が一人で飲める競争をした。一人が真っ先に描き終え、酒を取ろうとしたが「まだ時間がある」と言って蛇に足を描き加え始めた。その間に別の者が蛇を描き終え、酒を奪い取って「蛇に足はない。これは蛇ではない。酒は私がいただく」と言った。余計なことをした結果、せっかく勝ち取った酒を失った。この故事から「あってもなくてもよいものを加えることで、かえって本来の価値を損なう」という意味が生まれた。儒家思想の「過ぎたるは及ばざるがごとし」と共鳴する教訓として重視される。

用例

  • レポートは十分に完成していたのに蛇足な補足説明を加えたことで読みにくくなった。
  • プレゼンの最後に余分なスライドを追加したのは蛇足だった。むしろ削った方が良かった。
  • 小説の結末はあそこで終わるのが美しかった。続編は蛇足に感じられる。
  • 蛇足ながら、先ほどの発言の補足をさせてください。
  • 完璧なケーキに余計な飾りを乗せすぎて蛇足になった。シンプルさが失われてしまった。

類義の故事成語

余計なお世話屋上屋を架す野暮な付け足し

対義の故事成語

画竜点睛必要不可欠簡潔明瞭

英語訳

A superfluous addition that detracts from the whole; gilding the lily.

使うシーン

受験頻出日常会話ビジネス文章教訓

参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年

関連する故事成語

慣用句

揚げ足を取る

あげあしをとる

相手の言葉の些細なミスや言い間違いをとらえて、意地悪く責めたり批判したりすること。議論や会話の本質ではなく、言葉のあら探しに終始する行為を指す。「揚げ足」とは相手が失敗の隙をさらした瞬間を指し、それを巧みに捕まえて攻め込む様子を表す慣用句。建設的な議論を阻む、批判的なコミュニケーションの典型として否定的に使われることが多い。

慣用句

足を引っ張る

あしをひっぱる

他人の仕事や努力を妨害したり、成功を阻んだりすること。チームや組織全体の前進を遅らせる邪魔な行為を指す。嫉妬や競争心から、前進しようとしている人を意図的に引き止めようとする様子を表す言葉。意図的な妨害のみならず、結果として足かせになってしまう状況にも使われる。一人の行動が集団全体の動きを鈍らせる場面で特に使われる表現。

故事成語

驥足を展ばす

きそくをのばす

優れた才能や能力を十分に発揮すること。隠れていた能力が存分に発揮される機会を得ることを指す。

慣用句

足元を見る

あしもとをみる

相手の弱みや不利な立場につけ込んで、不当に有利な条件を押し付けること。相手の苦境や困り度合いを見透かして、値段や条件を吊り上げる行為を指す。「足元」とは比喩的に「相手が置かれた立場・状況の底辺」を意味し、そこを見透かして有利に動く様子を表している。駕籠かきが旅人の疲れ具合を見て料金を吊り上げた江戸時代の商習慣に由来する。

慣用句

手を抜く

てをぬく

いい加減にやること。本来やるべき手順や努力を省略すること。

故事成語

竜頭蛇尾

りゅうとうだび

最初は勢いがよいが、終わりになるほど振るわなくなること。始めは大きく立派でも、終わりはみすぼらしくなる様子を指す。

四字熟語

画竜点睛

がりょうてんせい

物事を仕上げるための最後のひとつ、それがなければ全体が完成しないという決定的な仕上げの一手を指す。龍の絵に瞳を入れた途端に本物の龍が飛び去ったという中国の故事に由来する四字熟語。作品・文章・発表などにおいて全体を生き生きとさせる核心部分、あるいはそれを加える行為を言う。「画竜点睛を欠く」の形で、詰めが甘く完成に至らないことを指す用例も多い。

ことわざ

千里の道も一歩から

せんりのみちもいっぽから

どんなに大きな事業や遠い目標でも、まず身近なことから着実に始めることが大切だということ。始めることの重要性と、一歩一歩の積み重ねを説く表現。壮大な計画の前に及び腰になっている人への励まし、あるいは行動を促す言葉として使われる。長い旅も足元の一歩からというイメージが明快で、動き出すことを後押しする力がある。

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