画竜点睛
がりょうてんせい
四字熟語の意味
物事を仕上げるための最後のひとつ、それがなければ全体が完成しないという決定的な仕上げの一手を指す。龍の絵に瞳を入れた途端に本物の龍が飛び去ったという中国の故事に由来する四字熟語。作品・文章・発表などにおいて全体を生き生きとさせる核心部分、あるいはそれを加える行為を言う。「画竜点睛を欠く」の形で、詰めが甘く完成に至らないことを指す用例も多い。
由来・語源
中国・唐代の張彦遠が著した絵画史書「歴代名画記」(847年頃)第七巻に記された故事に基づく。主人公は南朝・梁(502〜557年)の画家・張僧繇(ちょうそうよう)。金陵(現・南京)の安楽寺の壁に白龍を四頭描いたが、瞳(睛)だけは描かなかった。「瞳を入れれば龍は飛んでいってしまう」という言葉を人々は冗談と受け取り、描き入れるよう強く求めた。やむなく張が二頭に瞳を入れると、たちまち雷鳴と稲光が壁を砕き、二頭の龍は雲に乗って天へ昇っていった。瞳を入れなかった残り二頭は壁にそのまま残ったという。四字目の「睛」(目の瞳)は「晴」(晴れ)と混同されやすいが、異なる字であることに注意が必要。張僧繇にはほかにも虎の壁画があまりにも精巧で、地元の人が恐れて近づけなくなったという逸話が伝わり、絵の力が現実を動かすという認識が当時広くあったことを示している。
用例
- “プレゼンの最後にこのデータを見せるのが画竜点睛だ。”
- “このシーンが映画全体の画竜点睛になっている。”
- “惜しいが、結論部分の論拠が弱く画竜点睛を欠いた提案になってしまった。”
- “細部まで仕上げたデザインに、最後のロゴが画竜点睛の役を果たした。”
- “熟練のシェフが仕上げに一振りするスパイスが、料理の画竜点睛となる。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
The finishing touch; the essential detail that brings the whole work to life.
使うシーン
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
関連する四字熟語
竜頭蛇尾
りゅうとうだび
最初は勢いがよいが、終わりになるほど振るわなくなること。始めは大きく立派でも、終わりはみすぼらしくなる様子を指す。
蛇足
だそく
本来不要なのに余計な付け足しをすること。なくても一向に支障がないのに加えてしまった余分なもの、あるいはその行為を指す。文章・発言・工程設計など、蛇に足を描くことでかえって完成度や本来の価値を損なう場面に広く使われる。余分を削ることで本来の輝きが戻るという逆説的な教訓を示す言葉でもあり、補足に「蛇足ながら」と断る慣用表現としても広く定着している。
登竜門
とうりゅうもん
立身出世や成功への難しい関門のこと。それを突破すれば将来が大きく開ける難関や試練を指す。
臥龍
がりょう
まだ世に出ていないが、いずれ大活躍するに違いない人物のこと。潜在的な力を秘めた人物・英雄を指す。
臥龍鳳雛
がりょうほうすう
まだ世に知られていないが将来大成するであろう優れた人物のこと。隠れた逸材・英才を指す。
虎の威を借る狐
とらのいをかるきつね
権力者の威光を背景に威張ること。実力のない者が強い者の権威を借りて他者を威圧することを指す。
虎に翼
とらにつばさ
もともと力のある者にさらに力が加わること。強いものがいっそう強くなること。
三顧の礼
さんこのれい
優れた人材を招くために、目上の者が礼を尽くして何度も足を運ぶこと。また、そのような礼を受けた側が感激して誠心誠意仕える姿勢を指す場合もある。現代では主に、会社や組織が人材を熱心に迎え入れる際の礼遇を表す言葉として広く使われており、三国志の故事は時代を超えてリーダーシップと人材活用の手本となっている。