虎の威を借る狐
とらのいをかるきつね
故事成語の意味
権力者の威光を背景に威張ること。実力のない者が強い者の権威を借りて他者を威圧することを指す。
故事の由来
『戦国策』楚策に見える寓話による。楚の宣王(本文では「荊の宣王」)が群臣に、北方の国々が昭奚恤(しょうけいじゅつ)を恐れていると聞くが本当か、と尋ねた。答えたのが江乙(こういつ)で、彼は虎と狐の話を引く。虎に捕らえられた狐が「天帝は私を百獣の長とした。私を食えば天の命に背くことになる。嘘だと思うなら私の後ろについて来るがいい」と言う。虎が従って歩くと、獣たちは逃げ散った。虎は自分が恐れられているとは気づかず、狐の言葉どおりだと思い込んだ、という筋である。江乙はこれを、北方が恐れているのは昭奚恤その人ではなく王の甲兵(軍勢)なのだ、と結んだ。虎の側が事情を分かっていない、という皮肉がこの話の眼目で、借りられた権威のほうも気づいていないことが多い。なお昭奚恤の官職は、本文にも注にも記されていない。日本の用例は古く、狂歌集『吾吟我集』(1649年)に「とらのいをかる狐」の形が見える。
用例
- “社長の息子という立場を利用して威張るのは虎の威を借る狐だ。”
- “上司の名前を出して部下を動かそうとするのは虎の威を借る狐の行為だ。”
- “有名人との交友関係を誇示して信用を得るのは虎の威を借る狐に等しい。”
類義の故事成語
対義の故事成語
英語訳
Trade on someone else's power; hide behind someone's authority
使うシーン
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- Wikisource『戦国策』巻十四・楚策一 — 荊宣王の問い、江乙の答え、狐と虎の寓話、「其實畏王之甲兵也」の結び、および昭奚恤の官職が本文にも注にも記されていないことの確認
- コトバンク「虎の威を借る狐」 — 他の権勢に頼って威張るという語義、戦国策・楚策という出典、狂歌『吾吟我集』(1649年)の用例の確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
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