臥薪嘗胆
がしんしょうたん
四字熟語の意味
目的を達成するために長い間苦労に耐えること。復讐や大きな目標のために艱難辛苦を自ら課し、志を忘れず耐え続ける状態を指す。単なる受動的な忍耐ではなく、強い目的意識を持ったうえでの意図的な苦難への向き合い方を表す。雌伏して機会を待ちながら、時機を見計らって果断に行動に出るという積極的な忍耐の姿勢をも含んでいる。
由来・語源
中国春秋時代の呉と越の争いに結び付けられた語。二字ずつで来歴が違う。「嘗胆」の典拠ははっきりしていて、『史記』越王句践世家に、呉に赦されて帰国した句践が胆を座右に置き、坐るにも臥すにも仰ぎ見、食事のたびに嘗めては「女、会稽の恥を忘れたるか」と自らに問うたとある。一方「臥薪」は、精選版日本国語大辞典が語誌で『十八史略』より前の典拠は不明と断っている。二語が並んだ形は宋代まで下り、蘇軾『擬孫権答曹操書』などに見える。誰の行いかも資料で割れる。日本の辞典は臥薪を呉王夫差、嘗胆を越王句践に振り分けるが、台湾の教育部『成語典』は両方を句践一人の刻苦として説く。句践が二十余年を費やして呉を滅ぼしたことは『史記』に見える。ただし百科事典マイペディアは、この故事自体が後世に作られたもので史実とはいえないとする。日本で広まったのは明治の三国干渉の後、対露報復の合言葉としてであった。
用例
- “新しいプロジェクトを立ち上げるために、臥薪嘗胆の三年間を過ごした。”
- “彼は臥薪嘗胆、毎晩深夜まで勉強して難関資格を取得した。”
- “チームを優勝させるため、臥薪嘗胆の覚悟で基礎練習を続けた。”
- “失敗した翌年、臥薪嘗胆の気持ちで市場分析を徹底し、見事にリベンジを果たした。”
- “創業期の臥薪嘗胆が今日の成功を支えている。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
Sleeping on firewood and tasting bile; to endure hardships with a strong purpose in mind. From the stories of King Fuchai of Wu and King Goujian of Yue in ancient China.
使うシーン
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「臥薪嘗胆」 — 精選版の語誌が、嘗胆の故事は『史記』越世家・『呉越春秋』に見えるが「臥薪」は『十八史略』以前の典拠が不明とし、語自体は蘇軾『擬孫権答曹操書』に見えると記すこと、四字熟語を知る辞典が二語の併出を宋代とすること、百科事典マイペディアが故事を後世の作で史実とはいえないとすること、日本での流行が日清戦争後の三国干渉によることの確認
- 中華民国(台湾)教育部『成語典』「臥薪嘗膽」 — 典源を『史記』巻41 越王句踐世家とし、臥薪・嘗胆の双方を句践一人の刻苦として説くこと(日本の辞典が夫差・句践に振り分けるのと異なる説)、書證の最古が宋代(蘇軾・朱子語類)であること、「膽」に動物の胆嚢説と苦味のある膽草説があることの確認
- 『史記』巻四十一 越王句踐世家(中文ウィキソース) — 「置膽於坐,坐臥卽仰膽,飲食亦嘗膽也。曰:女忘會稽之恥邪?」の原文と、范蠡が句践と「深謀二十餘年,竟滅呉」と記すことの確認。臥薪に当たる記述がこの巻にないことの根拠
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
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