試行錯誤
しこうさくご
四字熟語の意味
いろいろ試みては失敗を繰り返しながら、次第に目的に近づいていくこと。正解が分からない問題を、試みと失敗を重ねながら解いていく過程を指す。失敗を否定的に捉えるのではなく、学習と改善のプロセスとして肯定的に使われることが多い。「試行錯誤を繰り返す」「試行錯誤の末に」という形でよく使われる。試みることを恐れない姿勢が根底にある。
由来・語源
もとは心理学の用語で、『四字熟語を知る辞典』は「元来は心理学用語で、英語trial and errorの訳語」と明記する。世界大百科事典やブリタニカ国際大百科事典も見出しに trial and error を並べている。その心理学側の中身は『日本大百科全書』が書いている。心理学者のソーンダイクが1898年の『動物の知能』で示した学習の解釈で、空腹のネコを「問題箱」に入れると、ひっかいたりかんだりと反応を繰り返し、そのうちのどれかがたまたま仕掛けに当たって箱から出られる——この偶然の成功が積み重なって学習が成り立つ、という見方である。同書はこれを、ケーラーのいう見通し(洞察)による学習と対比させている。日本語としていつ定着したかは、辞書の記述からは確認できない。コトバンクが引く用例は中島健蔵『文学の根本問題』(1958〜59年)、星新一『来訪者』(1961年)、安部公房『他人の顔』(1964年)と、いずれも昭和期のものである。
用例
- “試行錯誤を繰り返した末に、ようやく最適な製造方法を見つけた。”
- “この料理は試行錯誤の末に完成したレシピだ。”
- “子育ては試行錯誤の連続だが、それ自体が学びになる。”
- “新しいマーケティング手法を試行錯誤しながら、徐々に成果が出てきた。”
- “失敗を恐れず試行錯誤することが、イノベーションの原動力になる。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
Trial and error; a process of learning through repeated attempts and failures. Translated from the English term coined by E.L. Thorndike in his 1898 study of animal learning.
使うシーン
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「試行錯誤」 — 四字熟語を知る辞典の「元来は心理学用語で、英語trial and errorの訳語」という明記、日本大百科全書のソーンダイク1898年『動物の知能』・「問題箱」・ケーラーの見通し学習との対比、中島健蔵『文学の根本問題』(1958〜59年)ほか昭和期の用例3件の確認
- Weblio「試行錯誤」 — 実用日本語表現辞典がソーンダイクを1903年とし、日本大百科全書の1898年と食い違うことの確認(本文は日本大百科全書の記述を採用)
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
言葉の使い方をもっと磨きたい方へ
PR性格統計学にもとづき、伝え方・褒め方・関わり方を体系的に学べる検定講座。人間関係の悩みの解消に。
誤字脱字・表記揺れ・不自然な言い回しをAIがチェックし、伝わる文章に整えるクラウド校正ツール。
※ このボックスのリンクにはアフィリエイト広告が含まれます
四字熟語をもっと調べたい方へ
PR※ このボックスのリンクにはアフィリエイト広告が含まれます
関連する四字熟語
猿も木から落ちる
さるもきからおちる
その道に優れた者でも、時には失敗することがあるということ。木登りを本業とする猿でさえ木から落ちることがあるように、専門家・名人・熟練者でも例外なくミスをする。他者の失敗を責めない戒めとして使われるほか、ミスをした自分や身近な誰かを慰める言葉としても用いられる。完璧を過度に求めることへの戒めともなる。
暗中模索
あんちゅうもさく
手がかりが掴めず、見通しが立たないまま試行錯誤を繰り返すこと。暗闇の中で手探りする様子を比喩にした表現で、問題の解決策や方向性が見えない状況でも諦めずに探し続けることを表す。必ずしも否定的な意味ではなく、粘り強い探索の姿勢を指すこともある。「五里霧中(ごりむちゅう)」も類似した状況を表すが、こちらは方向性が全く見えない混乱状態に近く、暗中模索はより積極的な探索の意味合いが強い点で異なる。
温故知新
おんこちしん
以前に学んだことをよく復習して新しい知識・見解を見出すこと。孔子が真の師たるべき資格として説いた言葉で、単なる知識の蓄積ではなく、過去の学びを現在の問いに照らし合わせることで新しい発見を得る知的姿勢を指す。現代では歴史や先人の知恵から現代的な解決策を見出す姿勢を表すのにも使われる。一方的な知識の蓄積でなく、問い直しと再解釈を重んじる。
手を尽くす
てをつくす
あらゆる手段を試みること。できることを全てやること。
河童の川流れ
かっぱのかわながれ
水泳の達人とされる河童ですら川に流されることがあるように、どれほど熟練した名人や達人と呼ばれる人でも、油断や不注意によって思わぬ失敗を犯すことがある。得意分野であるほど慢心しやすく、その油断こそが失敗を招く。この表現は失敗に対する戒めとして使われるとともに、失敗した相手を責めずに慰める場面でも用いられる。
他山の石
たざんのいし
他の山から出た粗い石でも、玉を磨くのに役立つ。転じて、他人の誤った言行や失敗も、自分を磨く材料にできるという教え。磨かれるのは自分の側で、石にあたるのは他人の劣ったところだから、優れた人の言行を手本にする意味で使うのは誤りとされる。敬意を向けたい相手の仕事を「他山の石とします」と言えば、その人を粗い石に見立てたことになる。文化庁の調査でも、本来の意味で理解していた人は三割前後にとどまる。人の失敗から学ぶ「反面教師」に近い語だと置いて使うと、外しにくい。
石の上にも三年
いしのうえにもさんねん
冷たい石の上でも長く座り続ければ温かくなる、というたとえから、最初は苦しく手応えがなくても、有益だと判断したことを粘り強く続ければ力や成果につながることをいう。新しい技能の習得や、環境に慣れるまでの努力を励ます場面で使う。三年という数字を文字どおりの期限とする言葉ではない。また、心身を傷つける環境まで耐え続けることを勧める意味でもない。
急いては事を仕損じる
いそいではことをしそんじる
何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。