試行錯誤
しこうさくご
四字熟語の意味
いろいろ試みては失敗を繰り返しながら、次第に目的に近づいていくこと。正解が分からない問題を、試みと失敗を重ねながら解いていく過程を指す。失敗を否定的に捉えるのではなく、学習と改善のプロセスとして肯定的に使われることが多い。「試行錯誤を繰り返す」「試行錯誤の末に」という形でよく使われる。試みることを恐れない姿勢が根底にある。
由来・語源
英語の "trial and error" の訳語として明治期に造語された語。学術的な起源は、アメリカの心理学者エドワード・ソーンダイク(Edward Lee Thorndike, 1874-1949)が1898年の論文「Animal Intelligence(動物の知性)」で提唱した「試行錯誤説(trial-and-error learning)」にある。ソーンダイクはネコを仕掛けのある「パズルボックス」に入れ、脱出するための仕掛けを偶然発見して学習するプロセスを観察した。失敗を繰り返しながら偶然正しい行動を発見し、それが強化されることで学習が進むという理論で、行動主義心理学の基礎となった。日本では明治後期から大正期にかけて、西洋の心理学・科学的思考法が導入される中で「試行錯誤」という訳語が定着した。もともと心理学・動物行動学の専門用語だったが、現代ではビジネス、製品開発、学習、日常生活など広い文脈で「とにかくやってみて修正する」という意味で広く使われている。スタートアップの「アジャイル開発」や「リーンスタートアップ」の考え方とも親和性が高く、現代のイノベーションプロセスを語る文脈でも頻繁に登場する。
用例
- “試行錯誤を繰り返した末に、ようやく最適な製造方法を見つけた。”
- “この料理は試行錯誤の末に完成したレシピだ。”
- “子育ては試行錯誤の連続だが、それ自体が学びになる。”
- “新しいマーケティング手法を試行錯誤しながら、徐々に成果が出てきた。”
- “失敗を恐れず試行錯誤することが、イノベーションの原動力になる。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
Trial and error; a process of learning through repeated attempts and failures. Translated from the English term coined by E.L. Thorndike in his 1898 study of animal learning.
使うシーン
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
関連する四字熟語
暗中模索
あんちゅうもさく
手がかりが掴めず、見通しが立たないまま試行錯誤を繰り返すこと。暗闇の中で手探りする様子を比喩にした表現で、問題の解決策や方向性が見えない状況でも諦めずに探し続けることを表す。必ずしも否定的な意味ではなく、粘り強い探索の姿勢を指すこともある。「五里霧中(ごりむちゅう)」も類似した状況を表すが、こちらは方向性が全く見えない混乱状態に近く、暗中模索はより積極的な探索の意味合いが強い点で異なる。
猿も木から落ちる
さるもきからおちる
その道に優れた者でも、時には失敗することがあるということ。木登りを本業とする猿でさえ木から落ちることがあるように、専門家・名人・熟練者でも例外なくミスをする。他者の失敗を責めない戒めとして使われるほか、ミスをした自分や身近な誰かを慰める言葉としても用いられる。完璧を過度に求めることへの戒めともなる。
一念発起
いちねんほっき
ある物事を成し遂げようとはっきりと心に決意すること。仏教で菩提心を起こすことを「発起」と言い、そこに「一念」(一途な思い)を組み合わせた表現が日常語に転じた。現代では「よし、やろう」という前向きな決意を表す。特に年度の変わり目・転職・失敗の直後など、人生の節目に用いることが多い。心機一転と異なり、最初の一歩を明確に踏み出すニュアンスが強いため、具体的な行動開始を宣言する場面に向く。
心機一転
しんきいってん
気持ちや心の状態をすっかり入れ替えて、新たな気持ちで物事に取り組むこと。過去の失敗・悩み・惰性を振り切り、気分を一新して前向きに出発する様子を表す。悪いことが続いた後や、新しい環境に移る際によく使われる表現。特に年度の変わり目や転職・引越しのような節目に用いられることが多く、新しい環境での出発を宣言する言葉として定着している。過去の自分と決別する積極的な姿勢を表す。
七転び八起き
ななころびやおき
何度失敗してもその都度立ち上がって努力すること。転んでも転んでも起き上がる不屈の精神を表す。失敗や挫折を繰り返しながらも諦めずに前進し続ける姿勢を称える表現。挫折した人を励ます言葉、あるいは自分自身の意志を確かめる言葉として使われる。「七転八起(しちてんはっき)」とも書き、だるまの起き上がり小法師がこの精神を象徴する。
起死回生
きしかいせい
今にも死にそうな状態から蘇らせること。転じて、絶望的な状況や危機的な局面を一気に立て直すこと。ビジネスの経営危機、スポーツの試合での逆転、病気からの回復など、広く用いられる。「逆転の一手」「土壇場の大逆転」に近いニュアンスを持つ。「一矢報いる」「起死回生の一打」などの慣用表現としても使われ、劇的な逆転を形容する語として定着。逆境の中でこそ発揮される力を称える意味でも多く使われる。
急いては事を仕損じる
いそいではことをしそんじる
何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。
有言実行
ゆうげんじっこう
口で言ったことを必ず実行すること。言葉と行動が一致する誠実さ・責任感を表す。「不言実行」が「黙って実行する」美徳を説くのに対し、こちらは「宣言した以上は必ず成し遂げる」という意志の強さを重んじる。現代のリーダーシップ論でも評価される資質。有言実行の人は「宣言責任」を自分に課しており、言った以上は後戻りできないという心理的プレッシャーが行動力につながるとも言われる。