言葉辞典
四字熟語

心機一転

しんきいってん

四字熟語の意味

気持ちや心の状態をすっかり入れ替えて、新たな気持ちで物事に取り組むこと。過去の失敗・悩み・惰性を振り切り、気分を一新して前向きに出発する様子を表す。悪いことが続いた後や、新しい環境に移る際によく使われる表現。特に年度の変わり目や転職・引越しのような節目に用いられることが多く、新しい環境での出発を宣言する言葉として定着している。過去の自分と決別する積極的な姿勢を表す。

由来・語源

語を分ければ、「心機」は心の動き・はたらき、つまり気持ちのこと、「一転」はがらりと変わること。『四字熟語を知る辞典』はこの二語の組み合わせで「あることをきっかけに、気持ちをすっかり入れ替えること」と説明する。ここでひとつ、よく出回る説を断っておきたい。「一転」は「一転語」のように仏教用語としても使われるため、心機一転を仏教由来とする説明を見かけるが、実用日本語表現辞典は「「一転」は「一転語」など仏教用語としても用いられることもあるが、四字熟語の成立と関わりがある語源や由来ではない」と明記している。デジタル大辞泉に仏教由来への言及は無く、補説は「心気一転」と書くのは誤りだと注意するだけである。出典となる漢籍や仏典を挙げる辞書も、確かめた範囲では無い。用例は、『精選版 日本国語大辞典』が幸田露伴『いさなとり』(1891年)と森鷗外『青年』(1911年)を、四字熟語を知る辞典が同じ『青年』(1910〜11年)と安部公房『他人の顔』(1964年)を挙げており、いずれも明治以降のものである。

用例

  • “失恋を機に心機一転、新しい趣味を始めた。”
  • “転職を機に心機一転、生活習慣も見直した。”
  • “心機一転の気持ちで新学期に臨んだ彼は、見違えるように積極的になった。”
  • “引っ越しを機に心機一転し、長年続けてきた悪習慣をすべてリセットした。”
  • “試合に負けてから三ヶ月、心機一転して練習に打ち込んだ結果が今日の優勝につながった。”

類義の四字熟語

気持ちを切り替える一念発起(いちねんほっき)再出発捲土重来(けんどちょうらい)

対義の四字熟語

旧態依然(きゅうたいいぜん)惰性(だせい)

英語訳

"Turn over a new leaf." / "Make a fresh start."

使うシーン

日常会話人生訓ビジネス

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

  • コトバンク「心機一転」 — 四字熟語を知る辞典の語釈と「心機」「一転」の語義、精選版 日本国語大辞典の幸田露伴『いさなとり』(1891年)、森鷗外『青年』(1910〜11年)・安部公房『他人の顔』(1964年)の用例の確認。仏教由来への言及が無いことの確認
  • Weblio「心機一転」 — 実用日本語表現辞典の「『一転』は『一転語』など仏教用語としても用いられることもあるが、四字熟語の成立と関わりがある語源や由来ではない」という明記と、デジタル大辞泉の補説が「心気一転」は誤りとするだけであることの確認

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年

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関連する四字熟語

四字熟語

一念発起

いちねんほっき

ある物事を成し遂げようとはっきりと心に決意すること。仏教で菩提心を起こすことを「発起」と言い、そこに「一念」(一途な思い)を組み合わせた表現が日常語に転じた。現代では「よし、やろう」という前向きな決意を表す。特に年度の変わり目・転職・失敗の直後など、人生の節目に用いることが多い。心機一転と異なり、最初の一歩を明確に踏み出すニュアンスが強いため、具体的な行動開始を宣言する場面に向く。

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以心伝心

いしんでんしん

言葉や文字を使わなくても、互いの心が自然に通じ合うこと。禅宗で言語や文字を超えて師匠の悟りが弟子の心に直接伝わることを表した語が日常語に転じた。深い信頼関係や長い付き合いの中で言葉を交わさなくても意思疎通できる状態を表す。特に長年連れ添ったパートナー、同じ道を歩んできた師弟、幼馴染など、積み重ねられた時間が生み出す深い相互理解を表す際に使われることが多い。

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起死回生

きしかいせい

今にも死にそうな状態から蘇らせること。転じて、絶望的な状況や危機的な局面を一気に立て直すこと。ビジネスの経営危機、スポーツの試合での逆転、病気からの回復など、広く用いられる。「逆転の一手」「土壇場の大逆転」に近いニュアンスを持つ。「一矢報いる」「起死回生の一打」などの慣用表現としても使われ、劇的な逆転を形容する語として定着。逆境の中でこそ発揮される力を称える意味でも多く使われる。

ことわざ

元の木阿弥

もとのもくあみ

一度上向いた事柄が、また不本意だった以前の状態に落ち着くこと。そこまでに積み重ねた努力が実らず、振り出しに近いところへ戻る結末にも使う。「元に戻る」だけなら良し悪しは決まらないが、この語にはいったん改善した後の後戻りや、苦労が帳消しになる響きがある。立て直した売上が再び落ち込んだときや、何週間も続けた片づけが一日で崩れたときに「元の木阿弥」と言える。

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温故知新

おんこちしん

以前に学んだことをよく復習して新しい知識・見解を見出すこと。孔子が真の師たるべき資格として説いた言葉で、単なる知識の蓄積ではなく、過去の学びを現在の問いに照らし合わせることで新しい発見を得る知的姿勢を指す。現代では歴史や先人の知恵から現代的な解決策を見出す姿勢を表すのにも使われる。一方的な知識の蓄積でなく、問い直しと再解釈を重んじる。

故事成語

捲土重来

けんどちょうらい

一度敗れた人や組織が、力を立て直して、再び勝負に出ること。試験、選挙、競技、事業のように、失敗と再挑戦の相手がはっきりした場面に合う。「捲土重来を期す」は、まだ成功していない段階で、巻き返す準備と決意を示す言い方である。反対に、望ましくない流行や問題が再び勢いを得ることにも使え、その場合は警戒する側の言葉になる。内に力をためて機を待つだけなら「雌伏」、もう一度勝負に戻るところまで言うなら「捲土重来」である。小さな遅れを取り返すだけなら「挽回」のほうが自然である。

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一期一会

いちごいちえ

一生に一度だけの出会いと心得て、その場のもてなしに誠心誠意を尽くすべきという茶道の精神を表す言葉。同じ顔ぶれで再び席を設けることがあっても、まったく同じ瞬間は二度と戻らない。転じて、人との縁や機会はすべて唯一の瞬間であると捉え、毎回を大切に誠実に向き合う人生の姿勢を表すものとして、茶道の枠を超えて広く用いられている。

ことわざ

七転び八起き

ななころびやおき

何度失敗してもその都度立ち上がって努力すること。転んでも転んでも起き上がる不屈の精神を表す。失敗や挫折を繰り返しながらも諦めずに前進し続ける姿勢を称える表現。挫折した人を励ます言葉、あるいは自分自身の意志を確かめる言葉として使われる。「七転八起(しちてんはっき)」とも書き、だるまの起き上がり小法師がこの精神を象徴する。

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