言葉辞典
四字熟語

以心伝心

いしんでんしん

四字熟語の意味

言葉や文字を使わなくても、互いの心が自然に通じ合うこと。禅宗で言語や文字を超えて師匠の悟りが弟子の心に直接伝わることを表した語が日常語に転じた。深い信頼関係や長い付き合いの中で言葉を交わさなくても意思疎通できる状態を表す。特に長年連れ添ったパートナー、同じ道を歩んできた師弟、幼馴染など、積み重ねられた時間が生み出す深い相互理解を表す際に使われることが多い。

由来・語源

禅宗の語である。日本大百科全書は、師から弟子へ、言葉にも文字にもよらずに仏法の極意が渡ることをいい、「不立文字」「教外別伝」とともに禅門の標語となったと説く。よりどころとされるのが拈華微笑の故事で、釈尊が霊鷲山で大衆に向かって華をひねってみせたとき、弟子のうち摩訶迦葉ただ一人が師の心を悟って微笑したという寓話である。改訂新版世界大百科事典は、中国へ禅を伝えた達磨がこの語と不立文字を掲げて正法を伝えたと「いわれる」と、伝承であることを明示して書いている。同じページのブリタニカ国際大百科事典は、唐の禅僧慧能に始まる言葉とも解く。初めの出どころは資料によって揃わない。日本での用例は古く、精選版日本国語大辞典は道元『正法眼蔵』(一二三一〜五三年)を最も古い例に挙げる。宗教の文脈を離れて「言わなくても通じ合う」意で使う例は、同辞典では福沢諭吉『文明論之概略』(一八七五年)から見える。

用例

  • “長年のパートナーとの仕事は以心伝心で、言葉がなくても意図が伝わる。”
  • “双子の兄弟は以心伝心のように互いの考えが分かると言う。”
  • “チームが以心伝心の連携を見せ、相手の守備をあざやかに崩した。”
  • “以心伝心というが、やはり言葉で確認することも大切だ。”
  • “親子の以心伝心とでも言うか、彼女が落ち込んでいると母には必ず伝わるらしい。”

類義の四字熟語

阿吽(あうん)の呼吸暗黙の了解(あんもくのりょうかい)テレパシー言葉なく通じる

対義の四字熟語

言葉を尽くす明文化(めいぶんか)誤解(ごかい)

英語訳

"Telepathy." / "A meeting of minds." / "Understanding without words."

使うシーン

人間関係禅受験頻出日常会話

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

  • コトバンク「以心伝心」 — 日本大百科全書が拈華微笑の故事を根拠とし「不立文字」「教外別伝」とともに禅門の標語となったと記すこと、改訂新版世界大百科事典が達磨の強調を「といわれる」と伝承として記すこと、精選版が道元『正法眼蔵』(1231〜53)を初出例、福沢諭吉『文明論之概略』(1875)を日常義の例に挙げることの確認。いずれも「直指人心」「見性成仏」「白隠慧鶴」「中国の禅語録」への言及はない
  • 浄土真宗本願寺派『くらしの仏教語豆事典』「以心伝心」 — 「不立文字」「教外別伝」と並んで禅の宗旨を表す仏教語であること、釈尊の教えの真髄は文字や言葉によらず師の心から弟子の心へ直に伝えられるという意であることの確認

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年

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