言葉辞典
四字熟語

一念発起

いちねんほっき

四字熟語の意味

ある物事を成し遂げようとはっきりと心に決意すること。仏教で菩提心を起こすことを「発起」と言い、そこに「一念」(一途な思い)を組み合わせた表現が日常語に転じた。現代では「よし、やろう」という前向きな決意を表す。特に年度の変わり目・転職・失敗の直後など、人生の節目に用いることが多い。心機一転と異なり、最初の一歩を明確に踏み出すニュアンスが強いため、具体的な行動開始を宣言する場面に向く。

由来・語源

仏教語に由来する。「発起」(ほっき)は梵語の「発心」(ほっしん)に対応し、菩提心(悟りを求める心)を起こすことを意味する。「一念」は一心に念ずること、強く思い集中することを指す。もとは仏道修行を志す者が誓いを立てる際の言葉で、「一念を発して修行を起こす」という仏教的な文脈で使われた。日本には仏教とともに伝わり、奈良・平安時代以降に使われた。江戸時代以降、仏教的な文脈を離れ、新たな行動を起こす際の決意を表す一般語として定着した。現代では新年の抱負・転職・断酒・ダイエット開始など、生活上のさまざまな転換点を表すのに用いられる。「気合を入れ直す」「決心する」とほぼ同義で日常的に使われる。現代では宗教的文脈を離れ、生活全般の転換点で用いられる最も馴染み深い決意表明の語の一つとなっている。

用例

  • 一念発起してマラソンに挑戦することを決めた。
  • 一念発起して独立した彼は、三年後に会社を軌道に乗せた。
  • 新年を迎えて一念発起、禁煙を始めたが三日で挫折してしまった。
  • 一念発起して資格の勉強を始めたら、思いのほか楽しくて続けられた。
  • 親の介護を機に一念発起し、介護福祉士の資格を取った。

類義の四字熟語

発起(ほっき)決意(けつい)心機一転(しんきいってん)覚悟を決める

対義の四字熟語

優柔不断(ゆうじゅうふだん)先延ばし諦め(あきらめ)

英語訳

"Make a firm resolution." / "Muster one's courage and take the plunge."

使うシーン

仏教人生訓日常会話

参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年

関連する四字熟語

四字熟語

心機一転

しんきいってん

気持ちや心の状態をすっかり入れ替えて、新たな気持ちで物事に取り組むこと。過去の失敗・悩み・惰性を振り切り、気分を一新して前向きに出発する様子を表す。悪いことが続いた後や、新しい環境に移る際によく使われる表現。特に年度の変わり目や転職・引越しのような節目に用いられることが多く、新しい環境での出発を宣言する言葉として定着している。過去の自分と決別する積極的な姿勢を表す。

ことわざ

思い立ったが吉日

おもいたったがきちじつ

何かをしようと決心したなら、暦の上の吉日など待たずに、その日のうちに行動を起こすべきだということ。決意が生まれた瞬間こそ気力と集中力が最も高い時であり、その勢いを逃さないことを促す言葉。「大安を待ってから始める」よりも、自ら決断した日こそが本当の吉日だという考え方で、完璧な条件が揃うまで動かないという先延ばしの習慣への戒めでもある。

ことわざ

七転び八起き

ななころびやおき

何度失敗してもその都度立ち上がって努力すること。転んでも転んでも起き上がる不屈の精神を表す。失敗や挫折を繰り返しながらも諦めずに前進し続ける姿勢を称える表現。挫折した人を励ます言葉、あるいは自分自身の意志を確かめる言葉として使われる。「七転八起(しちてんはっき)」とも書き、だるまの起き上がり小法師がこの精神を象徴する。

ことわざ

千里の道も一歩から

せんりのみちもいっぽから

どんなに大きな事業や遠い目標でも、まず身近なことから着実に始めることが大切だということ。始めることの重要性と、一歩一歩の積み重ねを説く表現。壮大な計画の前に及び腰になっている人への励まし、あるいは行動を促す言葉として使われる。長い旅も足元の一歩からというイメージが明快で、動き出すことを後押しする力がある。

四字熟語

以心伝心

いしんでんしん

言葉や文字を使わなくても、互いの心が自然に通じ合うこと。禅宗で言語や文字を超えて師匠の悟りが弟子の心に直接伝わることを表した語が日常語に転じた。深い信頼関係や長い付き合いの中で言葉を交わさなくても意思疎通できる状態を表す。特に長年連れ添ったパートナー、同じ道を歩んできた師弟、幼馴染など、積み重ねられた時間が生み出す深い相互理解を表す際に使われることが多い。

四字熟語

起死回生

きしかいせい

今にも死にそうな状態から蘇らせること。転じて、絶望的な状況や危機的な局面を一気に立て直すこと。ビジネスの経営危機、スポーツの試合での逆転、病気からの回復など、広く用いられる。「逆転の一手」「土壇場の大逆転」に近いニュアンスを持つ。「一矢報いる」「起死回生の一打」などの慣用表現としても使われ、劇的な逆転を形容する語として定着。逆境の中でこそ発揮される力を称える意味でも多く使われる。

ことわざ

塵も積もれば山となる

ちりもつもればやまとなる

わずかなものでも、積み重なれば大きなものになるということ。小さな努力・節約・積み立てを継続することの大切さを説く。毎日の些細な行動でも長く続ければ大きな成果を生むという教えで、貯蓄・学習・訓練など、地道な継続を励ます文脈でよく使われる。小さなことを軽視しないよう促す意味合いも含み、日々の習慣の力を示す表現。

四字熟語

試行錯誤

しこうさくご

いろいろ試みては失敗を繰り返しながら、次第に目的に近づいていくこと。正解が分からない問題を、試みと失敗を重ねながら解いていく過程を指す。失敗を否定的に捉えるのではなく、学習と改善のプロセスとして肯定的に使われることが多い。「試行錯誤を繰り返す」「試行錯誤の末に」という形でよく使われる。試みることを恐れない姿勢が根底にある。

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