一期一会
いちごいちえ
四字熟語の意味
一生に一度だけの出会いと心得て、その場のもてなしに誠心誠意を尽くすべきという茶道の精神を表す言葉。同じ顔ぶれで再び席を設けることがあっても、まったく同じ瞬間は二度と戻らない。転じて、人との縁や機会はすべて唯一の瞬間であると捉え、毎回を大切に誠実に向き合う人生の姿勢を表すものとして、茶道の枠を超えて広く用いられている。
由来・語源
茶道に由来する言葉。安土桃山時代の茶人・山上宗二が記した『山上宗二記』(1588年頃)には「一期に一度の会」という表現が見え、師・千利休の教えとして記録されている。茶の湯の席は一生に一度きりの出会いとして、主客ともに誠心誠意を尽くすべきという精神を表す。江戸時代末期の茶人・井伊直弼は『茶湯一会集』(1858年)で「一期一会」の語を明確に用い、「たとえ同じ亭主と客が再び会するとも、この会はただ一度のものとして誠実を尽くせ」として、その精神を詳述した。現代では茶道の文脈を離れ、人生のあらゆる出会いを二度と繰り返せない唯一の機会として大切にせよという人生観を示す言葉として広く定着している。最も知名度の高い茶道用語の一つであり、茶道文化を超えて日本の対人関係観を象徴する言葉として国際的にも認知されている。
用例
- “この旅で出会った人たちとの縁を、一期一会の気持ちで大切にしたい。”
- “営業の基本は一期一会。初めての商談も、それが最後になるかもしれないと思えば真剣になれる。”
- “年に一度の同窓会でも、一期一会の心で臨むと話が弾む。”
- “一期一会という言葉が示すように、日々の出会いには意味がある。”
- “彼女は一期一会を座右の銘にしており、誰に対しても同じように誠実に接する。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
"Treasure every encounter, for it will never recur." / "Once in a lifetime."
使うシーン
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
関連する四字熟語
覆水盆に返らず
ふくすいぼんにかえらず
器からこぼれた水は二度とその器に戻せないように、一度起きてしまったことはどれほど悔やんでも元の状態に戻すことができないということ。過去の失言・別れ・失敗・壊れた信頼関係など取り返しのつかない事態に対して用いられる。後悔への戒めとして機能するとともに、過去に縛られず前を向くことを促す含意も持つ表現である。
一念発起
いちねんほっき
ある物事を成し遂げようとはっきりと心に決意すること。仏教で菩提心を起こすことを「発起」と言い、そこに「一念」(一途な思い)を組み合わせた表現が日常語に転じた。現代では「よし、やろう」という前向きな決意を表す。特に年度の変わり目・転職・失敗の直後など、人生の節目に用いることが多い。心機一転と異なり、最初の一歩を明確に踏み出すニュアンスが強いため、具体的な行動開始を宣言する場面に向く。
一石二鳥
いっせきにちょう
一つの行動で二つの利益や目的を同時に達成すること。英語の諺「kill two birds with one stone」に対応する表現で、日本語でも効率的な方法や偶然の副次的効果を表す。単なる効率化だけでなく、予期せぬ副次的利益が生じた場合にも使う。「一挙両得(いっきょりょうとく)」が漢語系の同義語として並行して使われており、改まった文脈では「一挙両得」が好まれることもある。一石二鳥はより口語的・日常的な表現。
以心伝心
いしんでんしん
言葉や文字を使わなくても、互いの心が自然に通じ合うこと。禅宗で言語や文字を超えて師匠の悟りが弟子の心に直接伝わることを表した語が日常語に転じた。深い信頼関係や長い付き合いの中で言葉を交わさなくても意思疎通できる状態を表す。特に長年連れ添ったパートナー、同じ道を歩んできた師弟、幼馴染など、積み重ねられた時間が生み出す深い相互理解を表す際に使われることが多い。
一を聞いて十を知る
いちをきいてじゅうをしる
一つのことを聞いただけで、その他の多くのことまで理解できるほど賢いこと。
一諾千金
いちだくせんきん
一度した約束は必ず守ること。一度の承諾が千金に値するほど重みがあることを指す。
心機一転
しんきいってん
気持ちや心の状態をすっかり入れ替えて、新たな気持ちで物事に取り組むこと。過去の失敗・悩み・惰性を振り切り、気分を一新して前向きに出発する様子を表す。悪いことが続いた後や、新しい環境に移る際によく使われる表現。特に年度の変わり目や転職・引越しのような節目に用いられることが多く、新しい環境での出発を宣言する言葉として定着している。過去の自分と決別する積極的な姿勢を表す。
一挙両得
いっきょりょうとく
一つの行動で二つの利益を同時に得ること。