烏合の衆
うごのしゅう
故事成語の意味
規律も統制もなく、ただ無秩序に寄り集まっているだけの集団のこと。烏(からす)が無計画に群れをなすように、共通の意思や指揮系統を持たない人々の集まりを指す。個々に力があっても組織として機能しないため、まとまった行動を取れず、外部からの圧力に対してすぐに瓦解してしまう。軍事・政治・企業組織など、統率の欠けた集団を批判したり、組織の弱体化を表現したりする際に幅広く用いられる。

故事の由来
『後漢書』耿弇(こうえん)伝に見える語である。『後漢書』は南朝宋の范曄が編んだ史書で、耿弇伝は巻十九「耿弇列伝第九」にあたる。耿弇は光武帝(劉秀)の功臣で、のちに雲台に肖像が描かれた二十八将の一人に数えられる。王朝が定まらない混乱期、長安へ向かう途中で従者たちが王郎(自ら前漢成帝の子・劉子輿と称した人物)に付こうと言い出したとき、耿弇は剣に手をかけて答えた——劉子輿など取るに足らぬ賊で、いずれ降参するだけだ。漁陽・上谷の突騎を出して「烏合の衆」を蹴散らすのは、枯れ木を折るようなものだ、と(「突騎を発して烏合の衆を轔(ふみにじ)るは、枯を摧き腐を折るが如きのみ」)。つまりこの語は自軍の弱さを嘆いた言葉ではなく、寄せ集めにすぎない敵をあなどって言い放った言葉である。烏の群れには統率がない、という見立てが土台にあり、そこから規律のない集まりを指すようになった。
用例
- “寄せ集めの烏合の衆では、組織的な作戦は立てられない。”
- “反対意見を持つだけの烏合の衆では、政治的変化は起こせない。”
- “烏合の衆に過ぎなかったグループが、共通の目標を持って一致団結した。”
- “指揮系統が崩壊した後の軍は烏合の衆も同然で、まともな抵抗ができなかった。”
- “急ごしらえのプロジェクトチームは烏合の衆で、会議のたびに方向性が迷走した。”
類義の故事成語
対義の故事成語
英語訳
A disorganized mob; a rabble without discipline or leadership.
使うシーン
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- Wikisource『後漢書』巻十九・耿弇列伝第九 — 耿弇が王郎(劉子輿)の軍を指して「歸發突騎以轔烏合之衆、如摧枯折腐耳」と述べた本文の確認(自軍を評した語ではない)
- Wikisource『後漢書』目次 — 撰者が南朝宋の范曄であること、巻十九が「耿弇列伝第九」であることの確認
- コトバンク「烏合の衆」 — 規律のない集団という語義、後漢書・耿弇伝という出典、「突騎を発して烏合の衆を轔るは」の引用の確認
- コトバンク「二十八将」 — 耿弇が光武帝の功臣で、雲台に肖像が描かれた二十八将に数えられることの確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
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