言葉辞典
故事成語

烏合の衆

うごのしゅう

故事成語の意味

規律も統制もなく、ただ無秩序に寄り集まっているだけの集団のこと。烏(からす)が無計画に群れをなすように、共通の意思や指揮系統を持たない人々の集まりを指す。個々に力があっても組織として機能しないため、まとまった行動を取れず、外部からの圧力に対してすぐに瓦解してしまう。軍事・政治・企業組織など、統率の欠けた集団を批判したり、組織の弱体化を表現したりする際に幅広く用いられる。

烏合の衆のイメージ

故事の由来

中国の正史『後漢書』(列伝第十九・耿弇伝)に由来する。『後漢書』は五世紀に范曄(はんよう)が著した歴史書で、後漢王朝(25〜220年)の記録を収める。 耿弇(こうえん、紀元3〜58年)は後漢創業期を代表する武将のひとり。光武帝(劉秀)を助けて乱世を平定した「雲台二十八将」に数えられる。その耿弇が自軍の実情を語った言葉が、この故事成語の出典である。 原文は「今吾諸校皆烏合之衆、若遇真虜、鼓一震、必悉走矣」。書き下し文は「今、吾の諸校はみな烏合の衆にして、もし真虜に遇えば、鼓一震すれば、必ずことごとく走らん」。意味は「今、私の部下たちはみな烏合の衆であり、本物の敵に遭えば、太鼓が一声鳴っただけで必ずみな逃げ散るだろう」となる。各地から寄せ集められた兵の弱さを、将軍自らが冷静に見極めた言葉である。 烏(からす)は夕方になると大勢で木に集まるが、その動きに統制はなく、大きな音がすればたちまち散り散りになる。そうした光景から、規律のない人の集まりを「烏合の衆」と呼ぶようになった。

用例

  • 寄せ集めの烏合の衆では、組織的な作戦は立てられない。
  • 反対意見を持つだけの烏合の衆では、政治的変化は起こせない。
  • 烏合の衆に過ぎなかったグループが、共通の目標を持って一致団結した。
  • 指揮系統が崩壊した後の軍は烏合の衆も同然で、まともな抵抗ができなかった。
  • 急ごしらえのプロジェクトチームは烏合の衆で、会議のたびに方向性が迷走した。

類義の故事成語

寄せ集め無秩序な集団群衆野合の衆

対義の故事成語

精鋭部隊規律ある組織鉄の軍団

英語訳

A disorganized mob; a rabble without discipline or leadership.

使うシーン

受験頻出ビジネススピーチ組織歴史

参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年

関連する故事成語

四字熟語

付和雷同

ふわらいどう

自分自身の考えや判断を持たないまま、他人の説や多数派の意見へ安易に同調すること。誰かと同じ結論になっただけでは、この語には当たらない。根拠を自分で確かめず、周囲の勢いや立場に合わせて賛成するところに批判の意味がある。この辞典での使い分けの目安は、会議で考えた末に意見が一致したなら「賛同」、人間関係や環境の影響で考え方そのものが変わったなら「朱に交われば赤くなる」、その場で人の尻について軽率に行動したなら「尻馬に乗る」である。「多数派に付いたか」ではなく、「自分の判断を置き去りにしたか」を確かめて使いたい。

故事成語

鶏口牛後

けいこうぎゅうご

大きな組織の末端にいるより、小さな組織でも長となった方がよいということ。大集団の末端より小集団の首領の方が本来の力を発揮できる。

故事成語

四面楚歌

しめんそか

周囲をすべて敵に囲まれ、孤立無援の状態であること。味方が誰もいない、完全に追い詰められた状況を指す。ビジネスや政治の場では、反対者や批判者に四方から囲まれた状態の比喩として使われる。支持者が誰もいなくなった窮地を表すほか、自分の意見や立場が全方向から否定され、身の置き場がなくなった状況にも用いられる。

故事成語

塞翁が馬

さいおうがうま

人生の幸不幸は予測できないということ。一見不幸に見えることが後で幸運につながったり、幸運だと思ったことが不幸の原因になったりすること。物事の結果を早急に判断することへの戒めとして使われ、長い目で見ることの大切さを含意する。「人間万事塞翁が馬」と長い形でも使われ、悲喜こもごもの人生観を端的に表す。過剰な喜びや悲嘆を戒める言葉でもある。

故事成語

呉越同舟

ごえつどうしゅう

仲の悪い者同士が、同じ場所や境遇に置かれること。また、利害が一致すれば敵同士も協力し合うことを指す。

故事成語

捲土重来

けんどちょうらい

一度敗れた人や組織が、力を立て直して、再び勝負に出ること。試験、選挙、競技、事業のように、失敗と再挑戦の相手がはっきりした場面に合う。「捲土重来を期す」は、まだ成功していない段階で、巻き返す準備と決意を示す言い方である。反対に、望ましくない流行や問題が再び勢いを得ることにも使え、その場合は警戒する側の言葉になる。内に力をためて機を待つだけなら「雌伏」、もう一度勝負に戻るところまで言うなら「捲土重来」である。小さな遅れを取り返すだけなら「挽回」のほうが自然である。

故事成語

鶏鳴狗盗

けいめいくとう

つまらない技や卑しい技でも、時と場合によっては役に立つということ。また、人の役に立つ小技・特技を持つ人物を指すこともある。

故事成語

背水の陣

はいすいのじん

退路を断ち、後がない状況で全力を尽くすこと。川や海を背に陣を構え、逃げ場をなくすことで兵士を死力で戦わせた中国の軍事戦術が起源。「後がない状況に追い込まれた」という受動的な意味と、「自ら退路を閉じて覚悟を固めた」という能動的な意味の両面を持つ。単なる窮地の描写にとどまらず、決意の表明としても広く使われる。

運営: テックジョイント株式会社 | サイトについて | プライバシーポリシー