言葉辞典
故事成語

杞憂

きゆう

故事成語の意味

取り越し苦労のこと。心配する必要のないことを過度に気にかけ、苦しんでしまう状態を指す。古代中国の杞(き)という国の人が「天が崩れ落ちてくるのではないか」と心配して夜も眠れなくなったという故事から生まれた言葉。実際には起こりえないこと、あるいは心配したところで変えられないことへの無用な不安を表す。「杞憂に終わる」の形で、心配が無用だったと後から分かったときによく使われる。

杞憂のイメージ

故事の由来

中国の道家思想書『列子』(天瑞篇)に由来する。『列子』は列禦寇(れつぎょこ)の著と伝えられるが、現在伝わるテキストは四世紀(晋代)ごろに編纂されたものとされる。 天瑞篇の原文に「杞国有人、忧天地崩坠、身亡所寄、废寝食者」とある。書き下し文は「杞国に人あり、天地崩墜せんことを憂い、身の寄る所なく、寝食を廃する者あり」。古代中国の小国・杞の人が、天地が崩れ落ちてくるのではないかと心配し、立っていることもできず、食事も眠れなくなってしまったのである。 これを聞いた隣人が諭しに行き、「天は気の積み重なりにすぎず、息をするたびに私たちはその中を動いている。なぜ崩れることを恐れるのか」「地は固い土の塊が積み重なったもので、踏みしめて歩けるのに、なぜ崩れることを恐れるのか」と説明すると、杞の人はやっと安心したという。 ただし著者の列子は「天地が崩れると言う者も、崩れないと言う者も、どちらも誤りだ。崩れるかどうかは誰にも分からない」と続けており、安易な安心ではなく、人知を超えた問いへの執着を手放すことが真の知恵だと示唆している。

用例

  • 心配していたプレゼンは大成功で、杞憂に終わった。
  • 地震が来るかもしれないと毎日怯えるのは、ある意味で杞憂かもしれない。
  • 彼が倒れるのではないかという心配は杞憂で、今も元気に働いている。
  • 新製品の失敗を過度に恐れるのは杞憂だ。まずは小さく試してみることが大切だ。
  • 手術前に最悪の事態を想像して眠れないでいたが、杞憂に終わってよかった。

類義の故事成語

取り越し苦労無用の心配徒労な不安余計な心配

対義の故事成語

正当な懸念的中慧眼

英語訳

Needless worry; vain anxiety. Worrying about something that will never happen.

使うシーン

受験頻出日常会話故事成語道家

参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年

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