絶体絶命
ぜったいぜつめい
四字熟語の意味
どこにも逃げ場がなく、まったく手も足も出ない究極の窮地に追い込まれた状態。「絶体」「絶命」はともに陰陽道の凶相の方位を指し、どの方向に進んでも凶というところから、逃れる手段が一切ない最悪の状況を表すようになった。日常会話では誇張表現として軽い場面でも使われる。絶体絶命に類似した「万事休す」は諦めの境地を強調するのに対し、絶体絶命は逃げ場のなさを表すため、逆転劇の直前場面でよく使われる。緊迫感を最大限に表現する語として定着している。
由来・語源
陰陽道(おんみょうどう)に由来する語。陰陽五行説に基づく方位占術で、「絶体(ぜったい)」と「絶命(ぜつめい)」はともに大凶の方位を指す。絶体方位に進めば身体を失い、絶命方位に進めば命を失うとされた。このため「絶体絶命」は、どちらに向かっても凶という完全な逃げ場のない状況を表すようになった。中国の堪輿(かんよ、風水・地理占術)にも同様の概念があり、日本には平安時代ごろに陰陽道とともに伝わったとされる。江戸時代以降、文学や演劇の場面描写に頻用され、現代では特にスポーツ・推理小説・ゲームなどで緊張感の高まる場面を表すときに多く使われる。現代では「最大のピンチ」「窮地」の誇張表現として日常的にも使われる。ゲーム・漫画・スポーツ中継など、緊迫した場面の定番表現として現代語にも定着している。
用例
- “崖際まで追い詰められた主人公は絶体絶命の状況に置かれた。”
- “試験前夜に教科書を忘れてきたとわかって、絶体絶命のピンチだと思った。”
- “経営危機で銀行も融資を断った絶体絶命の状況で、意外な支援者が現れた。”
- “絶体絶命と思われた局面から逆転勝利をつかみとったのが今日のヒーローだ。”
- “記者会見で失言が相次ぎ、大臣は絶体絶命の状況に追い込まれた。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
"With one's back to the wall." / "In desperate straits."
使うシーン
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
関連する四字熟語
起死回生
きしかいせい
今にも死にそうな状態から蘇らせること。転じて、絶望的な状況や危機的な局面を一気に立て直すこと。ビジネスの経営危機、スポーツの試合での逆転、病気からの回復など、広く用いられる。「逆転の一手」「土壇場の大逆転」に近いニュアンスを持つ。「一矢報いる」「起死回生の一打」などの慣用表現としても使われ、劇的な逆転を形容する語として定着。逆境の中でこそ発揮される力を称える意味でも多く使われる。
万死一生
ばんしいっしょう
ほぼ助かる見込みのない危険な状況の中で、かろうじて命をつなぐこと。
空前絶後
くうぜんぜつご
これまでに先例がなく、これからも類例が現れないだろうほど非常にまれな事柄のこと。「空前」は前例なし、「絶後」は後例もなしを意味し、組み合わせることで前後に例を見ない唯一無二の出来事を表す。良い事柄にも悪い事柄にも使えるが、現代では主に際立った業績や出来事に使われる。「前代未聞」と似ているが、前代未聞が「聞いたことがない驚き」に重点を置くのに対し、空前絶後は「前後ともに例がない希少性」に重点を置く。
縦横無尽
じゅうおうむじん
あらゆる方向に自由に動き回ること。思う存分に活躍すること。
七転八倒
しちてんばっとう
激しい苦しみや痛みのために、転げ回ってもがき苦しむ様子。身体的な激痛(腹痛・打撲など)だけでなく、精神的な苦悩で途方に暮れる状態にも使う。「七転び八起き(七転八起)」が不屈の精神を表すのとは異なり、こちらは苦しみそのものを表す。似た言葉に「七転八起(しちてんはっき)」があり、七転八起は転んでも立ち上がる不屈の精神を表すが、七転八倒はもがき苦しむ状態そのものを強調する点で異なる。
杞憂
きゆう
取り越し苦労のこと。心配する必要のないことを過度に気にかけ、苦しんでしまう状態を指す。古代中国の杞(き)という国の人が「天が崩れ落ちてくるのではないか」と心配して夜も眠れなくなったという故事から生まれた言葉。実際には起こりえないこと、あるいは心配したところで変えられないことへの無用な不安を表す。「杞憂に終わる」の形で、心配が無用だったと後から分かったときによく使われる。
度肝を抜く
どぎもをぬく
相手を極度に驚かせること、また非常に強い驚きを受けること。予想をはるかに超えた衝撃・迫力・パフォーマンスに出会い、圧倒されるほどの驚きを表す強烈な慣用表現。良い意味(感動的な演技や美しい景色)にも悪い意味(衝撃的なニュースや突然の出来事)にも使われる。「驚く」という言葉の中でも特に強烈な驚きを指す場面で用いられる。
背水の陣
はいすいのじん
退路を断ち、後がない状況で全力を尽くすこと。川や海を背に陣を構え、逃げ場をなくすことで兵士を死力で戦わせた中国の軍事戦術が起源。「後がない状況に追い込まれた」という受動的な意味と、「自ら退路を閉じて覚悟を固めた」という能動的な意味の両面を持つ。単なる窮地の描写にとどまらず、決意の表明としても広く使われる。