捕らぬ狸の皮算用
とらぬたぬきのかわざんよう
ことわざの意味
まだ手に入れていないものを当てにして計画を立てること。確実でない利益をあてにして、あれこれ皮算用をする行為のこと。まだ得ていない結果を前提にして喜んだり計画を進めたりする、根拠のない楽観的な行為を批判的に表す。英語の「孵化する前にひよこを数えるな(Don't count your chickens before they hatch)」に対応する。

言葉の由来
江戸時代の商業・狩猟文化から生まれたことわざ。「狸の毛皮」は防寒具として高値で取引されたため、まだ捕まえてもいない狸の毛皮を売れるものと仮定して収益を計算することが、根拠のない皮算用の典型として広まった。「皮算用(かわざんよう)」とは毛皮を売って得られる利益を計算することを意味し、狩猟・商売の現場で使われた言葉が転じて一般化した。狸は昔話や伝承で「化かす」存在として知られており、捕まえる前から確実にあると見込んでしまう人間の甘さを「狸に化かされた」ような状況として表現したとも解釈できる。「取らぬ狸の皮算用」の形でも同義で使われる。現代では投資・事業・試験・恋愛など、あらゆる「まだ確定していない成果」に対する過信を批判する際に広く使われる。
使い方の例
- “まだ合格発表もないのに新生活の部屋を探しているなんて、捕らぬ狸の皮算用だ。”
- “契約もまだなのに社員の採用を始めるとは、典型的な捕らぬ狸の皮算用だろう。”
- “株で儲かったら旅行しようと計画を立てているが、捕らぬ狸の皮算用にならないよう注意が必要だ。”
- “彼の事業計画は数字だけは立派だが、資金調達の見通しが甘く、捕らぬ狸の皮算用と言われても仕方ない。”
- “試験の結果が出る前から就職先を絞り込んでいるのは、捕らぬ狸の皮算用というものだ。”
似たことわざ
対のことわざ
英語の表現
Don't count your chickens before they hatch; Counting unhatched chickens
使う場面
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
関連することわざ
猫に小判
ねこにこばん
価値を理解する力のない者に、どれほど貴重なものを与えても無意味であること。猫が金貨の価値を認識できないのと同様に、相手が受け取る準備も能力もない場合、贈り手の厚意や優秀さは活きない。非難よりも困った諦めを帯びた観察として使われることが多く、相手を責める言葉ではなく、状況そのものへの感慨として使うのが自然な語感である。
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たなからぼたもち
努力をしたわけでも準備をしたわけでもないのに、棚の上から思いがけずぼたもちが落ちてくるように、突然予想外の幸運や利益が転がり込んでくること。偶然の幸運、いわゆる「棚ぼた」を表す表現。羨望や驚きを込めて使われることが多い。努力の結果ではない点が「果報は寝て待て」との本質的な違いであり、稀に自嘲や皮肉の文脈でも用いられる。
蛇足
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本来不要なのに余計な付け足しをすること。なくても一向に支障がないのに加えてしまった余分なもの、あるいはその行為を指す。文章・発言・工程設計など、蛇に足を描くことでかえって完成度や本来の価値を損なう場面に広く使われる。余分を削ることで本来の輝きが戻るという逆説的な教訓を示す言葉でもあり、補足に「蛇足ながら」と断る慣用表現としても広く定着している。
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相手の弱みや不利な立場につけ込んで、不当に有利な条件を押し付けること。相手の苦境や困り度合いを見透かして、値段や条件を吊り上げる行為を指す。「足元」とは比喩的に「相手が置かれた立場・状況の底辺」を意味し、そこを見透かして有利に動く様子を表している。駕籠かきが旅人の疲れ具合を見て料金を吊り上げた江戸時代の商習慣に由来する。
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あげあしをとる
相手の言葉の些細なミスや言い間違いをとらえて、意地悪く責めたり批判したりすること。議論や会話の本質ではなく、言葉のあら探しに終始する行為を指す。「揚げ足」とは相手が失敗の隙をさらした瞬間を指し、それを巧みに捕まえて攻め込む様子を表す慣用句。建設的な議論を阻む、批判的なコミュニケーションの典型として否定的に使われることが多い。
足を引っ張る
あしをひっぱる
他人の仕事や努力を妨害したり、成功を阻んだりすること。チームや組織全体の前進を遅らせる邪魔な行為を指す。嫉妬や競争心から、前進しようとしている人を意図的に引き止めようとする様子を表す言葉。意図的な妨害のみならず、結果として足かせになってしまう状況にも使われる。一人の行動が集団全体の動きを鈍らせる場面で特に使われる表現。
羊頭狗肉
ようとうくにく
見せかけと実質が異なること。外見は立派でも内容が伴っていないことを指す。
猿も木から落ちる
さるもきからおちる
その道に優れた者でも、時には失敗することがあるということ。木登りを本業とする猿でさえ木から落ちることがあるように、専門家・名人・熟練者でも例外なくミスをする。他者の失敗を責めない戒めとして使われるほか、ミスをした自分や身近な誰かを慰める言葉としても用いられる。完璧を過度に求めることへの戒めともなる。