棚に上げる
たなにあげる
慣用句の意味
自分に都合の悪い問題を、知らないふりをして取り上げずにおくこと。とくに「自分のことを棚に上げて」の形では、自分の欠点や責任には触れず、他人の不備を責める。「揚げ足を取る」は相手の小さな言い間違いを取り上げる語で、自分側の問題を伏せるかどうかが焦点ではない。単なる保留か、相手への批判かは前後で読み分ける。
言葉の成り立ち
棚に物を置いたまま触れないように、自分に不都合な問題を一時的に表立たせない、という比喩で説明される。コトバンクの大辞泉は「知らん顔をして問題にしない」意味を載せ、精選版日本国語大辞典は「棚へ上げる」を同じ語として参照する。イミダスも、不都合な問題に手をつけず棚に置くことから説明している。具体的な成立年代は資料から特定しない。
用例
- “会議では実施計画を先に話し合うため、前回の採算の問題はいったん棚に上げ、後で資料を添えて検討し直すことにした。”
- “自分の提出遅れを棚に上げて、ほかの人の確認不足ばかり責めている。”
- “連絡を忘れた自分を棚に上げ、返信が遅れた相手を非難していた。”
- “相手の発言の言い間違いを指摘する「揚げ足を取る」と違い、自分の責任を無視する場面で「棚に上げる」を使う。”
- “前年度の赤字を棚に上げて新事業に踏み切るのではなく、まず原因を調べた。”
英語表現
To set aside an inconvenient issue; to ignore one's own faults while criticizing others.
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「棚に上げる」 — 読み、問題を知らん顔で取り上げない語義、自分のことを棚に上げて人を責める用例、「棚へ上げる」の表現を確認
- イミダス「棚に上げる」 — 自分に都合の悪い問題を一時保留・無視する意味と、棚に置く比喩を確認
- コトバンク「揚げ足を取る」 — 大辞泉の語義で、他人の言い間違いや小さな欠点を取り上げて責める意味を比較用に確認
- コトバンク「揚げ足を取る」(精選版日本国語大辞典) — 言葉尻や失敗を取り上げる語義を比較用に確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年
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関連する慣用句
揚げ足を取る
あげあしをとる
相手の言い間違い、言葉尻、表現上の小さな不備だけを取り上げ、主張の筋とは別の所で責めたりからかったりすること。否定的な評価を伴う慣用句で、相手の誤りを正確に直すことすべてを指すわけではない。たとえば数字の桁違いが結論を変えるなら、それは必要な訂正であって「揚げ足を取る」ではない。論点に関わらない一語だけを何度も責め、相手を言い負かすことが目的になったときに使う。会議や文章の検討では、「表現より結論の根拠を確認しよう」と本筋へ戻す言い方を選ぶと、揚げ足取りになりにくい。
目くじらを立てる
めくじらをたてる
人の欠点や小さな誤りを探し出し、わずかな事を取り立てて強く非難すること。単に誤りを指摘したり、厳しく注意したりすること全部を指すのではない。この辞典での使い分けの目安としては、安全、金額、結論を左右する誤りを具体的に直すのは必要な訂正である。誤りの小ささに比べて、相手を責めることや粗を探すことが前へ出たときに、この慣用句が合う。言葉尻を攻めるなら「揚げ足を取る」、怒った目つきそのものなら「目を三角にする」が近い。誰かの抗議を「目くじら」と呼ぶ側にも、問題を小さく見せる働きがある。何が些細なのかを確かめて使いたい。
足元を見る
あしもとをみる
相手の弱みや不利な立場につけ込んで、不当に有利な条件を押し付けること。相手の苦境や困り度合いを見透かして、値段や条件を吊り上げる行為を指す。「足元」とは比喩的に「相手が置かれた立場・状況の底辺」を意味し、そこを見透かして有利に動く様子を表している。江戸前期の浮世草子にすでに用例があり、18世紀初めの浄瑠璃では値の駆け引きの場面に使われている。
足を引っ張る
あしをひっぱる
他人の仕事や努力を妨害したり、成功を阻んだりすること。チームや組織全体の前進を遅らせる邪魔な行為を指す。嫉妬や競争心から、前進しようとしている人を意図的に引き止めようとする様子を表す言葉。意図的な妨害のみならず、結果として足かせになってしまう状況にも使われる。一人の行動が集団全体の動きを鈍らせる場面で特に使われる表現。
目をつぶる
めをつぶる
見て見ぬふりをすること。欠点や過ちを大目に見ること。
出る杭は打たれる
でるくいはうたれる
人より抜きんでた才能や手腕を見せると、周囲からねたまれたり、妨げられたりする。また、出過ぎた振る舞いをすれば、非難や制裁を受けることもある。実力を示しただけで足を引っ張られた場面にも、出しゃばった行動をたしなめる場面にも使う。成功が妬まれたのか、振る舞いが非難されたのかは、前後を読んで見分けたい。集団が目立つ人を押さえつける空気を批判する文脈にも現れる。
人の褌で相撲を取る
ひとのふんどしですもうをとる
他人が用意した物・資金・アイデア・労力を利用し、自分の成果や利益にすること。特に、自分では相応の準備や負担をせず、手柄や利益だけを得ようとする不公平な態度を批判するときに使う。人に助けてもらうこと自体を責める語ではない。許可を得て協力し、貢献者を明記して負担と成果を分けるなら、この語で非難する場面とは言いにくい。ただし、形式上の許可があっても配分が不公平なら、文脈によっては当てはまる。「虎の威を借る狐」は他人の権威を後ろ盾にして威張ること、「付和雷同」は自分で考えず意見に従うことが中心である。
音を上げる
ねをあげる
苦しさに耐えきれず弱音を吐くこと。降参すること。