言葉辞典
ことわざ

人の褌で相撲を取る

ひとのふんどしですもうをとる

ことわざの意味

他人が用意した物・資金・アイデア・労力を利用し、自分の成果や利益にすること。特に、自分では相応の準備や負担をせず、手柄や利益だけを得ようとする不公平な態度を批判するときに使う。人に助けてもらうこと自体を責める語ではない。許可を得て協力し、貢献者を明記して負担と成果を分けるなら、この語で非難する場面とは言いにくい。ただし、形式上の許可があっても配分が不公平なら、文脈によっては当てはまる。「虎の威を借る狐」は他人の権威を後ろ盾にして威張ること、「付和雷同」は自分で考えず意見に従うことが中心である。

言葉の由来

相撲を取る本人が、自分の褌さえ用意せず、他人の褌を使って勝負するという姿をたとえにしたことわざである。ここで問題にされるのは、何かを借りた事実だけでなく、勝負に必要なものを他人に負わせながら、自分の成果にしてしまう釣り合いの悪さである。精選版日本国語大辞典は、ことわざ集『諺苑』(1797年)にこの表現が見えるとし、滑稽本『四十八癖』(1812〜18年)から「他の褌で角力とらん」という用例を挙げる。具体的な力士の逸話を語源とする根拠は今回確認した資料にはなく、江戸期までに用例をたどれる比喩表現として扱う。協働や正当な引用まで退ける語ではなく、準備・負担・手柄の配分が不公平なときに批判の意味が立つ。

使い方の例

  • 同僚が集めた調査結果を出典も示さず自分の企画として提出するのは、人の褌で相撲を取るようなものだ。
  • 共同制作にほとんど参加しなかったのに、完成後だけ自分の実績として語れば、人の褌で相撲を取ると批判されても仕方がない。
  • 他部署が長年築いた顧客リストを無断で使い、自分だけの営業成果にしたため、人の褌で相撲を取ったと非難された。
  • 先輩の資料を少し並べ替えただけで独自研究として発表するのは、人の褌で相撲を取る態度である。
  • 共有資料を許可を得て使い、作成者を明記して負担と成果も公平に分けたのなら、通常は人の褌で相撲を取るとは言いにくい。

似たことわざ

人の太刀で功名する人の提灯で明かりを取る人の牛蒡で法事する

対のことわざ

自力更生自前で賄う

英語の表現

To profit from someone else's resources or efforts without bearing a fair share of the work.

使う場面

ビジネス日常会話批判人間関係仕事

参考文献

このページで確認した資料

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編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年

関連することわざ

故事成語

虎の威を借る狐

とらのいをかるきつね

権力者の威光を背景に威張ること。実力のない者が強い者の権威を借りて他者を威圧することを指す。

慣用句

揚げ足を取る

あげあしをとる

相手の言い間違い、言葉尻、表現上の小さな不備だけを取り上げ、主張の筋とは別の所で責めたりからかったりすること。否定的な評価を伴う慣用句で、相手の誤りを正確に直すことすべてを指すわけではない。たとえば数字の桁違いが結論を変えるなら、それは必要な訂正であって「揚げ足を取る」ではない。論点に関わらない一語だけを何度も責め、相手を言い負かすことが目的になったときに使う。会議や文章の検討では、「表現より結論の根拠を確認しよう」と本筋へ戻す言い方を選ぶと、揚げ足取りになりにくい。

故事成語

漁夫の利

ぎょふのり

二者が争っている間に、第三者が苦労せずに利益を得ること。他人の争いを利用して、自分が得をすることを指す。争っている両者がともに消耗する一方で、傍観していた第三者が最終的な勝利者になるという状況に使う。ビジネスや政治・外交の戦略的な文脈でもよく引用され、漁夫の利を狙う第三者の戦略を批判または分析するときに使われる。

慣用句

足元を見る

あしもとをみる

相手の弱みや不利な立場につけ込んで、不当に有利な条件を押し付けること。相手の苦境や困り度合いを見透かして、値段や条件を吊り上げる行為を指す。「足元」とは比喩的に「相手が置かれた立場・状況の底辺」を意味し、そこを見透かして有利に動く様子を表している。駕籠かきが旅人の疲れ具合を見て料金を吊り上げた江戸時代の商習慣に由来する。

慣用句

足を引っ張る

あしをひっぱる

他人の仕事や努力を妨害したり、成功を阻んだりすること。チームや組織全体の前進を遅らせる邪魔な行為を指す。嫉妬や競争心から、前進しようとしている人を意図的に引き止めようとする様子を表す言葉。意図的な妨害のみならず、結果として足かせになってしまう状況にも使われる。一人の行動が集団全体の動きを鈍らせる場面で特に使われる表現。

ことわざ

捕らぬ狸の皮算用

とらぬたぬきのかわざんよう

まだ手に入れていないものを当てにして計画を立てること。確実でない利益をあてにして、あれこれ皮算用をする行為のこと。まだ得ていない結果を前提にして喜んだり計画を進めたりする、根拠のない楽観的な行為を批判的に表す。英語の「孵化する前にひよこを数えるな(Don't count your chickens before they hatch)」に対応する。

慣用句

肩を持つ

かたをもつ

一方の味方をすること。ひいきにすること。

慣用句

歯に衣着せぬ

はにきぬきせぬ

相手への遠慮や気遣いをせず、思ったことをそのまま率直に言うこと。相手が聞いて不快に感じることも、ためらわずに直接言う様子を表す。率直さが美徳として機能する文脈では褒め言葉として使われ、無遠慮さや失礼さを指摘する文脈では否定的な意味合いを帯びる。日本文化特有の「建前と本音」の二重構造の中で、本音を包まずに直接言う行為を際立たせる表現でもある。

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