温厚篤実
おんこうとくじつ
四字熟語の意味
人当たりがおだやかで、まじめさと誠実さを備えた人柄。単に怒らない、優しいというだけではなく、長い関わりの中で信頼できる人物を敬意を込めて評する語である。静かな性格だが意思がない、という意味にはならない。自己紹介で一語だけ飾るより、推薦文や送別の言葉で、具体的な行いとともに「温厚篤実な人柄」と述べると自然である。気さくで社交的な印象なら「温和」、従順さをいうなら「温順」が近い。穏やかな対応と揺るがない誠実さの両方を伝えたいときに、この言葉が役立つ。
由来・語源
「温厚篤実」の典拠を語るときは、資料の違いを分けて扱う必要がある。国立国会図書館のレファレンス協同データベースは、複数の四字熟語資料が『易経』の「大畜」を出典に挙げ、そこに「篤実」が見えると紹介している。一方、『精選版 日本国語大辞典』が示す日本語としての初出例は、『雲萍雑志』(1843年)の「温厚篤実の儒者なり」である。二つを混同して、四字全体がそのまま『易経』から出たと断定しないほうが正確である。現在の語としては、「温厚」と「篤実」を重ね、人当たりのやわらかさと確かな誠実さを同時に評する表現として定着している。出典の可能性と、確認できる用例を分けて説明する姿勢が、この語には似合う。
用例
- “先生は温厚篤実な人柄で、厳しい指摘にも相手への敬意を失わなかった。”
- “長年の仕事ぶりを知る同僚が、彼を温厚篤実な人物だと紹介した。”
- “弔辞では、温厚篤実な人柄が地域の信頼を集めていたと述べられた。”
- “彼女の温厚篤実さは、派手な言葉より日々の約束の守り方に表れている。”
- “初対面の印象だけでなく、行動を見て温厚篤実という評価を選びたい。”
類義の四字熟語
対義の四字熟語
英語訳
Gentle and deeply sincere in character.
使うシーン
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「温厚篤実」 — 精選版が語義を「性質がおだやかでまじめなさま。人当たりがやわらかく誠実なさま」とし、日本語としての初出の実例に随筆『雲萍雑志』(1843)の「温厚篤実の儒者なり」を挙げることの確認
- レファレンス協同データベース「『温厚篤実』の出典が知りたい。」(高崎市立中央図書館) — 四字熟語の資料の多くが出典を『易経』の「大畜」とし、その解説に「大畜剛健篤実輝光」が出ること、一方で故事成語の事典類には「温厚篤実」の記載が確認できなかったことの確認(四字全体の典拠と日本語の初出例を分けて書く根拠)
- 『周易』大畜(中文ウィキソース) — 彖伝「大畜,剛健篤實輝光,日新其德,剛上而尚賢」の原文確認。レファレンス協同データベースが指す「篤実」の所在
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 三省堂編修所 編『新明解四字熟語辞典 第二版』三省堂, 2020年
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関連する四字熟語
質実剛健
しつじつごうけん
飾り気がなく誠実で、心身ともに強くたくましいこと。「質実」は内面の誠実さを、「剛健」は外見・体力の強さを表す。日本では主に教育の精神や理想的な人物像を表す際に用いられ、特に旧制学校の校訓として広く用いられた。現代でも体育会系の部活動や伝統的な職人文化において、質実剛健を体現した人物が尊ばれる傾向がある。外見よりも中身・実力で勝負する生き方を象徴する語として定着している。
優柔不断
ゆうじゅうふだん
ぐずぐずとして決断力に欠けること。「優柔」は気が弱く柔らかい性格を、「不断」は決断できないことを指す。性格的な特徴として用いられることが多く、批判的なニュアンスを帯びる。重要な局面で決断を先延ばしにする傾向を表す言葉。リーダーや上司に用いると批判的なニュアンスが強くなるため、使う場面と相手関係には注意が必要。反省や自省の文脈でも「自分の優柔不断を克服する」という形で使われる。
不言実行
ふげんじっこう
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泰然自若
たいぜんじじゃく
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有言実行
ゆうげんじっこう
口に出して言ったことを必ず実行すること。精選版日本国語大辞典は「言ったことは必ず実行する」に加えて「格別に言いたてて事を行なう」意も挙げており、常に褒め言葉とは限らない。わざわざ宣言してから動く態度そのものを指す場合がある。黙って結果を出す「不言実行」と対にして語られ、決意表明や公約をやり遂げた人を評するときに使う。宣言だけで終われば「有言不実行」と呼ばれる。
大器晩成
たいきばんせい
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温故知新
おんこちしん
以前に学んだことをよく復習して新しい知識・見解を見出すこと。孔子が真の師たるべき資格として説いた言葉で、単なる知識の蓄積ではなく、過去の学びを現在の問いに照らし合わせることで新しい発見を得る知的姿勢を指す。現代では歴史や先人の知恵から現代的な解決策を見出す姿勢を表すのにも使われる。一方的な知識の蓄積でなく、問い直しと再解釈を重んじる。
一気呵成
いっきかせい
作業の流れを途中で切らず、ひと続きの勢いで文章や仕事を仕上げること。もともとは詩文を作り上げる場面に強く結び付くが、今は脚本、企画、改革など、まとまった仕事を完成まで進める場合にも使う。「数が一気に増える」の「一気」と同じく、ひと息にという感覚はある。しかし「一気呵成」は、量が増える自然な変化ではなく、作り手が取り組みを成し遂げる場面に選ぶ語である。急いで雑に終えることを褒める意味ではない。構想や下準備を済ませた後に執筆を一気呵成に進める、と言えば、準備から完成へ流れがつながった印象になる。単に同時に処理するなら「一斉に」、流麗に進む様子なら「一瀉千里」と使い分ける。