一気呵成
いっきかせい
故事成語の意味
作業の流れを途中で切らず、ひと続きの勢いで文章や仕事を仕上げること。もともとは詩文を作り上げる場面に強く結び付くが、今は脚本、企画、改革など、まとまった仕事を完成まで進める場合にも使う。「数が一気に増える」の「一気」と同じく、ひと息にという感覚はある。しかし「一気呵成」は、量が増える自然な変化ではなく、作り手が取り組みを成し遂げる場面に選ぶ語である。急いで雑に終えることを褒める意味ではない。構想や下準備を済ませた後に執筆を一気呵成に進める、と言えば、準備から完成へ流れがつながった印象になる。単に同時に処理するなら「一斉に」、流麗に進む様子なら「一瀉千里」と使い分ける。
故事の由来
「一気」はひと息、つまり一呼吸のこと。「呵」は息を吐く字で、『デジタル大辞泉』はこれを「息を吹きかける意」と注する。語の出どころは中国にある。台湾の中華民国教育部が編む『成語典』は、明の胡応麟『詩藪』内編・近体中・七言を典源に挙げ、胡応麟が杜甫の七言律詩「登高」を評して「一意貫串、一気呵成」と激賞した一節を引く。本来は文章の気勢が途切れず、首尾の貫かれていることを言う評語で、そこから物事が滞りなく運ぶ意へ広がった。日本語での用例は『精選版 日本国語大辞典』が『蛻巖先生答問書』(1751〜64か)の「一気呵成に参り候事肝要に候」を初出に挙げ、正岡子規『蕪村と几董』(1898年)の例も載せる。速さそのものより、まとまりを崩さず末尾まで運ぶことが核にある。下ごしらえがあってこそ、この語の勢いは生きる。
用例
- “取材メモを整理しておいたので、記事の初稿を一気呵成に書き上げられた。”
- “骨組みを決めてから作業に入り、報告書を一気呵成に仕上げた。”
- “思いつきだけではなく資料をそろえてから、一気呵成に企画書を作る。”
- “役者たちは稽古を重ねた末、本番の場面を一気呵成に演じ切った。”
- “改革を一気呵成に進める前に、現場の声を聞く時間は必要だ。”
類義の故事成語
対義の故事成語
英語訳
To complete something in one sustained burst.
使うシーン
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「一気呵成」 — デジタル大辞泉が「呵」を息を吹きかける意と注すること、四字熟語を知る辞典が「一気」をひと息・一呼吸と解くこと、精選版が『蛻巖先生答問書』(1751〜64か)と正岡子規『蕪村と几董』(1898)を用例に挙げることの確認
- 中華民国教育部『成語典』「一氣呵成」 — 典源が明・胡応麟『詩藪』内編・近体中・七言であること、胡応麟が杜甫の七言律詩「登高」を評して「一意貫串、一気呵成」と記した一節であること、本義が文章の気勢の流暢さで、物事が滞りなく進む意は後の引伸であることの確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
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