至れり尽くせり
いたれりつくせり
慣用句の意味
相手への配慮が隅々まで行き届き、足りない点が見当たらないこと。宿泊、接待、案内、支援などを褒めるときに使う。品物や設備が多いだけでなく、受け手に必要なことが不足なく整っている、という評価を含む。この辞典での使い分けでは、気づきにくい要望まで満たす働きを強く言うなら「痒い所に手が届く」、説明や応対の親切さに焦点を置くなら「懇切丁寧」が近い。豪華さだけを理由に使うと、配慮という中心がぼやける。表記は「至れり尽くせり」であり、「至り尽くせり」ではない。
言葉の成り立ち
『荘子』斉物論の「至矣、盡矣、不可以加矣」という句に基づく。「至れり、尽くせり、以て加うべからず」と読み、これ以上を加えようがないところまで至り、尽くされている、という趣旨である。ただし原典は宿や接待の話ではない。物の存在や是非をめぐる思想の到達点を論じる箇所で、コトバンク所収の『故事成語を知る辞典』も、最高の境地を表した句だと説明する。その「これ以上加えられない」という形が、日本語では配慮が十分で申し分のない状態を褒める慣用句として定着した。二つの「り」はいずれも完了を表す形で、「至り尽くせり」と言い換えない。古典の思想と現代のもてなしを同じ場面だったかのようには結び付けない。
用例
- “駅までの送迎に荷物預かりまであり、至れり尽くせりの宿だった。”
- “初日の手順書と相談相手が用意され、至れり尽くせりの研修だった。”
- “道具だけでなく片付け方まで教えてくれる、至れり尽くせりの体験教室だ。”
- “食事は豪華だったが案内が不足しており、至れり尽くせりとまでは言えない。”
- “必要な書類を順番にそろえてくれた窓口の対応は、まさに至れり尽くせりだった。”
似た慣用句
対になる慣用句
英語表現
Everything has been thoughtfully provided; leaving nothing to be desired.
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「至れり尽くせり」 — 現代の語義、誤記と、『荘子』斉物論との関係の確認
- コトバンク「至り尽くせり」 — 『至る』『尽くす』にそれぞれ完了の助動詞『り』が付いた形であることの確認
- Wikisource『荘子』「斉物論」 — 『至矣、盡矣、不可以加矣』の原文と思想上の文脈の確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年
言葉の使い方をもっと磨きたい方へ
PR性格統計学にもとづき、伝え方・褒め方・関わり方を体系的に学べる検定講座。人間関係の悩みの解消に。
誤字脱字・表記揺れ・不自然な言い回しをAIがチェックし、伝わる文章に整えるクラウド校正ツール。
※ このボックスのリンクにはアフィリエイト広告が含まれます
慣用句をもっと調べたい方へ
PR※ このボックスのリンクにはアフィリエイト広告が含まれます
関連する慣用句
手を尽くす
てをつくす
あらゆる手段を試みること。できることを全てやること。
蛇足
だそく
本来不要なのに余計な付け足しをすること。なくても一向に支障がないのに加えてしまった余分なもの、あるいはその行為を指す。文章・発言・工程設計など、蛇に足を描くことでかえって完成度や本来の価値を損なう場面に広く使われる。余分を削ることで本来の輝きが戻るという逆説的な教訓を示す言葉でもあり、補足に「蛇足ながら」と断る慣用表現としても広く定着している。
一気呵成
いっきかせい
作業の流れを途中で切らず、ひと続きの勢いで文章や仕事を仕上げること。もともとは詩文を作り上げる場面に強く結び付くが、今は脚本、企画、改革など、まとまった仕事を完成まで進める場合にも使う。「数が一気に増える」の「一気」と同じく、ひと息にという感覚はある。しかし「一気呵成」は、量が増える自然な変化ではなく、作り手が取り組みを成し遂げる場面に選ぶ語である。急いで雑に終えることを褒める意味ではない。構想や下準備を済ませた後に執筆を一気呵成に進める、と言えば、準備から完成へ流れがつながった印象になる。単に同時に処理するなら「一斉に」、流麗に進む様子なら「一瀉千里」と使い分ける。
縦横無尽
じゅうおうむじん
あらゆる方向に自由に動き回ること。思う存分に活躍すること。
揚げ足を取る
あげあしをとる
相手の言い間違い、言葉尻、表現上の小さな不備だけを取り上げ、主張の筋とは別の所で責めたりからかったりすること。否定的な評価を伴う慣用句で、相手の誤りを正確に直すことすべてを指すわけではない。たとえば数字の桁違いが結論を変えるなら、それは必要な訂正であって「揚げ足を取る」ではない。論点に関わらない一語だけを何度も責め、相手を言い負かすことが目的になったときに使う。会議や文章の検討では、「表現より結論の根拠を確認しよう」と本筋へ戻す言い方を選ぶと、揚げ足取りになりにくい。
完璧
かんぺき
欠点や不足がまったくなく、すべてが整っていること。傷一つない完全な状態を指す。仕上がり・出来栄え・実力などが申し分ない状態に使われる。「完璧なプレゼン」「完璧に仕上がった」のように日常語として広く定着しているが、もとは中国の外交術にまつわる故事から転じた語で、「宝玉を完全な形で返す」という意味が起源にある。
気が置けない
きがおけない
遠慮や気遣いが不要で、打ち解けられる間柄であること。一緒にいて気を遣わなくてよい、心から安心できる相手を指す肯定的な表現。「気が置けない友人」といえば、気心が知れた親しい友人という意味になる。ただし、「気を遣わせて申し訳ない」「なんとなく信用できない」などの否定的な意味で誤用される例が非常に多く、文化庁の調査では約半数が誤った意味で使っているとされる。誤解が生じやすいため、使う場面では文脈を補うか、言い換えを検討するのが無難。
果報は寝て待て
かほうはねてまて
幸福は人の力だけでは思い通りにならないことが多い。できる手を尽くしたなら、あとは焦らず静かに時機を待つのがよいということ。「果報」は仏教語で、過去の行いがもたらす善果を意味する。努力を怠ることを許す言葉ではなく、やるべきことを終えた後の心の持ち方を説く。縁は人の都合に合わせては動かない、という静かな諦観が根底にある。