言葉辞典
ことわざ

果報は寝て待て

かほうはねてまて

ことわざの意味

幸福は人の力だけでは思い通りにならないことが多い。できる手を尽くしたなら、あとは焦らず静かに時機を待つのがよいということ。「果報」は仏教語で、過去の行いがもたらす善果を意味する。努力を怠ることを許す言葉ではなく、やるべきことを終えた後の心の持ち方を説く。縁は人の都合に合わせては動かない、という静かな諦観が根底にある。

果報は寝て待てのイメージ

言葉の由来

「果報」はもと仏教語で、前世の行いの報いとして現世で受ける結果をいう。日本大百科全書は「サンスクリット語のビパーカvipākaの訳語」と説明する。善悪どちらの報いも指す語だが、日本では良い報いの側に寄り、幸運や幸福という意味が定着した。ことわざとしては、精選版日本国語大辞典が俳諧の『毛吹草』(1638年)を出典に挙げ、使用例には咄本『当世軽口咄揃』(1679年)の「むかしよりの世話にも、果報は寝てまて、天道は人をころさず」を載せる。1679年の時点で、昔からの言い習わしとして引かれていたわけである。札としては『尾張いろはかるた』に入るが、そこでの読みは「くゎはう」なので、並ぶのは「か」ではなく「く」である。どう待つのかは辞典によって説き方が違う。デジタル大辞泉は幸福の訪れを「人間の力ではどうすることもできない」ものとして焦らず時機を待てと説き、ことわざ解説サイトの『故事ことわざ辞典』は、人事を尽くした後に気長に待つことだと補う。

使い方の例

  • “面接が終わった。あとは果報は寝て待てだ。”
  • “準備は万全に整えた。果報は寝て待てという気持ちで当日を迎えよう。”
  • “「結果を心配しすぎているよ」「そうだね。果報は寝て待てというし、気長に構えてみるか。」”
  • “長年温めてきた事業計画を提出した。果報は寝て待て——後は市場が判断してくれる。”
  • “種を蒔いたのだから、今は果報は寝て待てに徹するしかない。”

似たことわざ

人事を尽くして天命を待つ待てば海路の日和あり時を待て明日は明日の風が吹く

対のことわざ

善は急げ蒔かぬ種は生えぬ

英語の表現

Good things come to those who wait. In Buddhist thought, "kahō" (果報) means the ripening of karma — the phrase counsels not passivity, but patient trust in a process already set in motion.

使う場面

忍耐幸運日常会話スピーチ仏教

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

  • コトバンク「果報は寝て待て」 — 精選版日本国語大辞典が〔俳諧・毛吹草(1638)〕を挙げ、初出実例に咄本『当世軽口咄揃』(1679)を載せることと、ことわざを知る辞典の「本来は善悪ともに含む語」という解説の確認
  • コトバンク「果報」 — 日本大百科全書がサンスクリット語ビパーカ(vipāka)の訳語と説明すること、ブリタニカが「異熟とも訳す」とすること、精選版の①仏語の報い②幸福という二語義の確認
  • 故事ことわざ辞典「果報は寝て待て」 — 『尾張いろはかるた』の一つであり、かるたでは「果報」を「くゎはう」と読ませて「く」の項に置かれることの確認
  • ウィキペディア「いろはかるた」 — 「く」の札が江戸「臭いものに蓋をする」・上方「臭い物に蝿がたかる」・尾張「果報(くゎはう)は寝て待て」であることの確認

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年

関連することわざ

四字熟語

因果応報

いんがおうほう

善い行いには善い結果が、悪い行いには悪い結果が必ず訪れるということ。仏教の業(カルマ)の思想に基づき、原因と結果は必ず対応するという宇宙的な因果律を表す。日常会話では「悪いことをすれば罰が当たる」という意味で使われることが多い。転じて、悪い行いを戒めるだけでなく、日々の誠実な積み重ねが必ず報われるという積極的な意味でも使われる。因果の連鎖は単純に「罰が当たる」だけでなく、「善因善果」も同様に成立する。

ことわざ

棚からぼたもち

たなからぼたもち

努力をしたわけでも準備をしたわけでもないのに、棚の上から思いがけずぼたもちが落ちてくるように、突然予想外の幸運や利益が転がり込んでくること。偶然の幸運、いわゆる「棚ぼた」を表す表現。羨望や驚きを込めて使われることが多い。努力の結果ではない点が「果報は寝て待て」との本質的な違いであり、稀に自嘲や皮肉の文脈でも用いられる。

ことわざ

自業自得

じごうじとく

自分のした悪い行いの報いを自分が受けること。身から出た錆。

ことわざ

待てば海路の日和あり

まてばかいろのひよりあり

今は状況が悪くても、じっと待っていればそのうちよい機会がやってくるということ。

ことわざ

善は急げ

ぜんはいそげ

よいと思ったことは、ためらわずすぐに実行すべきだということ。

ことわざ

急いては事を仕損じる

いそいではことをしそんじる

何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。

ことわざ

犬も歩けば棒に当たる

いぬもあるけばぼうにあたる

何かをしていれば思わぬ幸運に出会うこともある、ということ。また、出しゃばると災難に遭うという意味もある。

ことわざ

後の祭り

あとのまつり

機会を逃し、そのあとに何をしても役に立たないこと。間に合わなかったと気づいて悔やむ場面にも使う。忘れていた誕生日を翌週に祝おうとしても、当日の機会は戻らず後の祭りだ。「覆水盆に返らず」は一度起きたことが取り返せない結果を言い、この語は対応する時機を逃した点を表す。「六日の菖蒲十日の菊」は節句の日を過ぎた花を指す、より具体的な類句だ。

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