果報は寝て待て
かほうはねてまて
ことわざの意味
幸福は人の力だけでは思い通りにならないことが多い。できる手を尽くしたなら、あとは焦らず静かに時機を待つのがよいということ。「果報」は仏教語で、過去の行いがもたらす善果を意味する。努力を怠ることを許す言葉ではなく、やるべきことを終えた後の心の持ち方を説く。縁は人の都合に合わせては動かない、という静かな諦観が根底にある。

言葉の由来
仏教の因果応報思想に由来する。「果報」は梵語に由来する仏教用語で、過去の行いが引き起こす結果を指す。梵語では vipāka(ヴィパーカ)と呼ばれ、善因が熟して果を結ぶまでには時間がかかるとする仏教的時間観が「待て」という言葉の背景にある。もとは善悪どちらの結果も含む語だったが、日本語では次第に幸運・幸福な結果の意に絞られていった。特定の典籍への初出は確認されておらず、遅くとも江戸時代には口承として人々の間に定着していたとされる。上方いろはかるたの「か」の札に採用されたことが、庶民への普及を後押しした。同義のことわざ「人事を尽くして天命を待つ」が儒教的な荘重さを持つのに対し、この表現は「寝て待て」という日常的な動作で、気楽な受容を促す点が特徴的である。
使い方の例
- “面接が終わった。あとは果報は寝て待てだ。”
- “準備は万全に整えた。果報は寝て待てという気持ちで当日を迎えよう。”
- “「結果を心配しすぎているよ」「そうだね。果報は寝て待てというし、気長に構えてみるか。」”
- “長年温めてきた事業計画を提出した。果報は寝て待て——後は市場が判断してくれる。”
- “種を蒔いたのだから、今は果報は寝て待てに徹するしかない。”
似たことわざ
対のことわざ
英語の表現
Good things come to those who wait. In Buddhist thought, "kahō" (果報) means the ripening of karma — the phrase counsels not passivity, but patient trust in a process already set in motion.
使う場面
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
関連することわざ
因果応報
いんがおうほう
善い行いには善い結果が、悪い行いには悪い結果が必ず訪れるということ。仏教の業(カルマ)の思想に基づき、原因と結果は必ず対応するという宇宙的な因果律を表す。日常会話では「悪いことをすれば罰が当たる」という意味で使われることが多い。転じて、悪い行いを戒めるだけでなく、日々の誠実な積み重ねが必ず報われるという積極的な意味でも使われる。因果の連鎖は単純に「罰が当たる」だけでなく、「善因善果」も同様に成立する。
棚からぼたもち
たなからぼたもち
努力をしたわけでも準備をしたわけでもないのに、棚の上から思いがけずぼたもちが落ちてくるように、突然予想外の幸運や利益が転がり込んでくること。偶然の幸運、いわゆる「棚ぼた」を表す表現。羨望や驚きを込めて使われることが多い。努力の結果ではない点が「果報は寝て待て」との本質的な違いであり、稀に自嘲や皮肉の文脈でも用いられる。
自業自得
じごうじとく
自分のした悪い行いの報いを自分が受けること。身から出た錆。
善は急げ
ぜんはいそげ
よいと思ったことは、ためらわずすぐに実行すべきだということ。
一念発起
いちねんほっき
ある物事を成し遂げようとはっきりと心に決意すること。仏教で菩提心を起こすことを「発起」と言い、そこに「一念」(一途な思い)を組み合わせた表現が日常語に転じた。現代では「よし、やろう」という前向きな決意を表す。特に年度の変わり目・転職・失敗の直後など、人生の節目に用いることが多い。心機一転と異なり、最初の一歩を明確に踏み出すニュアンスが強いため、具体的な行動開始を宣言する場面に向く。
先憂後楽
せんゆうこうらく
人より先に心配し、人より遅れて楽しむこと。指導者・為政者は民より先に憂い、民が楽しんだ後に自分が楽しむべきだという精神を指す。
思い立ったが吉日
おもいたったがきちじつ
何かをしようと決心したなら、暦の上の吉日など待たずに、その日のうちに行動を起こすべきだということ。決意が生まれた瞬間こそ気力と集中力が最も高い時であり、その勢いを逃さないことを促す言葉。「大安を待ってから始める」よりも、自ら決断した日こそが本当の吉日だという考え方で、完璧な条件が揃うまで動かないという先延ばしの習慣への戒めでもある。
急いては事を仕損じる
いそいではことをしそんじる
何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。