矛盾
むじゅん
故事成語の意味
二つの事柄が互いに食い違って、つじつまが合わないこと。論理的に両立しない主張や状況を指す。「矛盾している」「矛盾をはらむ」という形でもよく使われる。論理学では「ある命題とその否定が同時に成立しない」という意味を持つが、日常語では「辻褄が合わない」「前と言っていることが違う」という幅広い意味で使われる。
故事の由来
中国の法家の思想書『韓非子(かんぴし)』難一篇に由来する。楚(そ)の国の商人が市場で「どんな盾も突き通す矛(ほこ)」と「どんな矛も防ぐことができる盾」を同時に売り出した。客が「それではその矛でその盾を突いたら、どうなるのか」と問うと、商人は何も答えられなかった。韓非子はこの逸話を政治論の文脈で引用し、相反する命題が同時に成立することの不可能性を示した。「矛」は攻撃の武器、「盾」は防御の道具であり、最強の攻撃と最強の防御が同時に存在することはあり得ないという論理的帰結を示している。この故事は「矛盾律(ある命題とその否定は同時に真になれない)」という論理学の基本原理と本質的に同じ内容を指す。「矛盾」の漢字はそれぞれ「矛(ほこ)」と「盾(たて)」を意味し、中国語由来のまま日本に伝わった。
用例
- “彼の証言には矛盾が多く、信頼性に疑問が生じた。”
- “「環境に配慮する」と言いながら大量廃棄するのは矛盾している。”
- “この規則には内部矛盾があって、実際の運用が難しい。”
- “彼女の行動と言葉が矛盾していて、何を考えているか分からない。”
- “矛盾を抱えたまま議論を進めても、解決策は見えてこない。”
類義の故事成語
対義の故事成語
英語訳
Contradiction; a logical inconsistency between two claims. From a story in Han Feizi about a merchant who claimed both his spear could pierce any shield and his shield could block any spear.
使うシーン
参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
関連する故事成語
一刀両断
いっとうりょうだん
一太刀でまっぷたつに断ち切ること。転じて、迷いなく物事をすっぱりと決断・解決すること。複雑な問題や長引く議論を思い切りよく処理する様子を表す。「一刀のもとに断ち切る」に近いニュアンスで、明快な判断力を称える際に使われることが多い。優柔不断と対照的に使われることが多く、複雑な問題を思い切りよく解決するリーダーの資質として「一刀両断の判断力」が評価される場面も多い。
切磋琢磨
せっさたくま
仲間や同志と互いに刺激を与え合い、競い合いながら学問・技術・人格を高め合うこと。「切磋」は骨や象牙を切り磨くこと、「琢磨」は玉や石を削り磨くことを意味し、地道な研鑽を経てこそ輝きが生まれるという含意を持つ。一人で黙々と努力するよりも優れた仲間と互いに高め合う過程に豊かさがあるという思想を体現した言葉である。
五十歩百歩
ごじっぽひゃっぽ
差はあっても本質的には同じであること。程度の違いがあっても、どちらも同じような欠点や問題を抱えており、本質的な差はないことを指す。一方が他方を批判しても「お互い様だ」と返せる状況に使う。自他を問わず「どっちも五十歩百歩だ」と言いたいときに使われ、批判や揶揄のニュアンスを含むことが多い。表面的な差異に意味がないと示したいときに有効な表現。
漁夫の利
ぎょふのり
二者が争っている間に、第三者が苦労せずに利益を得ること。他人の争いを利用して、自分が得をすることを指す。争っている両者がともに消耗する一方で、傍観していた第三者が最終的な勝利者になるという状況に使う。ビジネスや政治・外交の戦略的な文脈でもよく引用され、漁夫の利を狙う第三者の戦略を批判または分析するときに使われる。
逆鱗に触れる
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目上の人や権力者の激しい怒りを買うこと。君主や上位者の機嫌を大きく損ねることを指す。
自縄自縛
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自分の言葉や行動が原因となって、自分自身が苦しい立場や束縛された状態に陥ること。まるで自分で縄を縛って自分を動けなくしてしまうように、自ら招いた制約に苦しむ様を表す四字熟語。過去の発言・主張・ルールが後から自分の行動の自由を奪う状況を指し、政治・ビジネス・日常の言動全般に広く使われる。自業自得の中でも特に「言動が自分を縛る」という構図に焦点を当てた表現。
完璧
かんぺき
欠点や不足がまったくなく、すべてが整っていること。傷一つない完全な状態を指す。仕上がり・出来栄え・実力などが申し分ない状態に使われる。「完璧なプレゼン」「完璧に仕上がった」のように日常語として広く定着しているが、もとは中国の外交術にまつわる故事から転じた語で、「宝玉を完全な形で返す」という意味が起源にある。
朝三暮四
ちょうさんぼし
目先の違いにこだわって、結果が同じであることに気づかないこと。また、言葉巧みに人を騙すこと。