言葉辞典
ことわざ

君子危うきに近寄らず

くんしあやうきにちかよらず

ことわざの意味

教養のある立派な人は、危険なことに近づかないものだということ。

言葉の由来

「君子」は儒教で理想とされた、学識も人格も備えた人を指す。ただし、このことわざ自体の出典は定まっていない。『ことわざを知る辞典』は、漢語めいた響きはあるものの漢籍に直接の出どころは無いらしい、と述べる。ことわざ解説サイトの『故事ことわざ辞典』も、孔子の言葉だと思う人が多いが似た句は『論語』に無いとし、正確な出典は不明としたうえで、『春秋公羊伝』の「君子不近刑人」を元とする説を紹介する。この句は同書の襄公二十九年、門番に殺された呉子余祭の条の伝に見える。儒教の人間像を借りた言い回しではあっても、このことわざと同じ形の句が古典に出るわけではない。気の進まない事柄を避ける言い訳として、冗談まじりに使われることも多い。

使い方の例

  • “怪しい投資話には手を出さない。君子危うきに近寄らずだ。”

似たことわざ

触らぬ神に祟りなし

対のことわざ

虎穴に入らずんば虎子を得ず

英語の表現

Discretion is the better part of valor.

使う場面

慎重処世

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

  • コトバンク「君子危うきに近寄らず」 — ことわざを知る辞典が「漢籍から直接出たものではないようです」と述べ、言い訳として冗談めかして使われることも多いとする解説の確認
  • 故事ことわざ辞典「君子危うきに近寄らず」 — 「孔子の言葉と思う人も多いが、これに酷似した言葉は『論語』にはない」「正確な出典は不明」とし、『春秋公羊伝』の「君子不近刑人」を元とする説を紹介していることの確認
  • Wikisource『春秋公羊傳』襄公 — 襄公二十九年「閽弒吳子餘祭」の伝に「君子不近刑人,近刑人則輕死之道也」とある原文位置の確認
  • コトバンク「君子」 — 精選版日本国語大辞典が「中国で、儒教の道徳を身につけた教養人」とし、世界大百科事典が儒家の修養目標と説明することの確認

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年

関連することわざ

ことわざ

触らぬ神に祟りなし

さわらぬかみにたたりなし

面倒なことや危険なことには関わらない方が無難だということ。

ことわざ

虎穴に入らずんば虎子を得ず

こけつにいらずんばこじをえず

危険を冒さなければ大きな成果は得られないということ。

ことわざ

急いては事を仕損じる

いそいではことをしそんじる

何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。

ことわざ

急がば回れ

いそがばまわれ

急いで目的を達したいときほど、危険な近道ではなく、安全で確実な方法を選んだほうが、結局は早く着くというたとえ。遠回りそのものを勧める言葉ではなく、失敗ややり直しの大きい場面で、手順の確認や準備を省かないという判断を表す。締切が迫る仕事、慣れない道、重要な契約などで使いやすい。単に遅い行動を正当化する意味にはならない。

故事成語

殷鑑遠からず

いんかんとおからず

他人の失敗は自分への戒めとなる。手本とすべき悪い前例は身近なところにあるということ。

ことわざ

口は災いの元

くちはわざわいのもと

不用意な発言や軽はずみな言葉が、本人にとって予期せぬ災難や困難を引き起こす原因となることがある。言葉はひとたび口から出ると取り消すことができないため、発言には十分な注意が必要であるという教訓。怒りや感情的な状態での言葉、機密の漏洩、場をわきまえない一言に対する戒めであり、SNS全盛の現代においてこの教訓はより一層重みを増している。

故事成語

杞憂

きゆう

心配する必要がないと判断できることを、あれこれ心配する取り越し苦労のこと。中心にあるのは、単に不安を感じることではなく、心配の根拠が乏しいか、心配する理由がなかったと分かることである。だから、まだ安全確認が済んでいない事柄や、備えを要する具体的な危険を、根拠を確かめずに「杞憂」と片付けるのは合わない。事態が落ち着いた後には、「杞憂に終わった」「心配は杞憂だった」と振り返る形でもよく使う。日常の軽い心配なら「取り越し苦労」、起こる可能性を慎重に述べるなら「懸念」と使い分けたい。人の心配を一言で退けるより、何が確認できたら安心できるかを確かめるほうが、この語の重さを誤らない。

故事成語

逆鱗に触れる

げきりんにふれる

目上の人や権力者の激しい怒りを買うこと。君主や上位者の機嫌を大きく損ねることを指す。

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