言葉辞典
慣用句

釘を刺す

くぎをさす

慣用句の意味

相手が約束を破ったり、望ましくない行動を取ったりしないよう、前もって相手に強く注意しておくこと。「念を押す」と近いが、忘れないよう確認するだけでなく、後で問題になる行為を防ぐ警告の響きがある。差は絶対ではなく、口調や場面によって重なる。済んだ失敗を責めるだけなら、前もって防ぐこの語の中心からは離れる。

言葉の成り立ち

釘を打って材を固定することから、言葉で相手の約束や行動を固く留めるという比喩に広がったと辞書は説明する。漢字ペディアには木造建築の補強に由来する説があるが、由来をその経緯や時代まで確定する資料は確認できない。コトバンクの精選版日本国語大辞典は1698年の用例を初出として挙げる。

用例

  • “会議の資料を勝手に外へ送らないよう、部長は担当者に前もって釘を刺した。”
  • “金額が変わる場合は必ず見積もりを出し直すよう、発注前に先方へ釘を刺しておいた。”
  • “貸し出した機材は金曜までに返してほしいと、期限の前日に電話で釘を刺した。”
  • “「念を押す」だけなら確認だが、「釘を刺す」と言うと違反を防ぐ警告に聞こえることがある。”
  • “何度も釘を刺すと、相手を信頼していないように受け取られることがある。”

似た慣用句

念を押す

英語表現

To give a firm reminder or warning in advance.

使う場面

注意約束人間関係仕事日常会話

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年

関連する慣用句

ことわざ

石橋を叩いて渡る

いしばしをたたいてわたる

丈夫に見える石橋でも、渡る前に叩いて安全を確かめるというたとえ。念には念を入れ、十分に安全と思えることにも用心してから行動することをいう。契約や大きな買い物など、失敗したときのやり直しが重い場面で使いやすい。用心深さを褒める場面のほか、慎重すぎて決断が遅いと皮肉る場面にも使う。「急がば回れ」が安全で確実な道を選ぶ教えなのに対し、こちらは行動前に確かめる姿勢に重きを置く。

ことわざ

泣いて馬謖を斬る

ないてばしょくをきる

規律を守るため、親愛の情がある部下であっても私情を抑えて処罰することのたとえ。「大義親を滅す」と同じく公を私に優先する場面で重なるが、こちらは親しい部下への規律適用を指し、肉親を犠牲にする故事とは異なる。厳しい処分なら何でも当てはまるわけではなく、親しさと規律の間で苦しい決断をする点が中心にある。この語の中心は涙の有無より、私情を抑えた決断にある。

慣用句

棚に上げる

たなにあげる

自分に都合の悪い問題を、知らないふりをして取り上げずにおくこと。とくに「自分のことを棚に上げて」の形では、自分の欠点や責任には触れず、他人の不備を責める。「揚げ足を取る」は相手の小さな言い間違いを取り上げる語で、自分側の問題を伏せるかどうかが焦点ではない。単なる保留か、相手への批判かは前後で読み分ける。

ことわざ

案ずるより産むが易し

あんずるよりうむがやすし

あれこれ心配するより、実際に始めてみると案外たやすく進むというたとえ。出産前の心配と実際に産むことを比べた表現だが、今は仕事や初めての挑戦など、始める前に不安を抱く人を励ます場面でも使う。「杞憂」のように心配の根拠が薄いと評するだけではなく、一歩動けば見立てが変わるかもしれないと背中を押す。ただし、具体的な危険や未確認の条件を省いてよいという意味ではない。

故事成語

杞憂

きゆう

心配する必要がないと判断できることを、あれこれ心配する取り越し苦労のこと。中心にあるのは、単に不安を感じることではなく、心配の根拠が乏しいか、心配する理由がなかったと分かることである。だから、まだ安全確認が済んでいない事柄や、備えを要する具体的な危険を、根拠を確かめずに「杞憂」と片付けるのは合わない。事態が落ち着いた後には、「杞憂に終わった」「心配は杞憂だった」と振り返る形でもよく使う。日常の軽い心配なら「取り越し苦労」、起こる可能性を慎重に述べるなら「懸念」と使い分けたい。人の心配を一言で退けるより、何が確認できたら安心できるかを確かめるほうが、この語の重さを誤らない。

慣用句

揚げ足を取る

あげあしをとる

相手の言い間違い、言葉尻、表現上の小さな不備だけを取り上げ、主張の筋とは別の所で責めたりからかったりすること。否定的な評価を伴う慣用句で、相手の誤りを正確に直すことすべてを指すわけではない。たとえば数字の桁違いが結論を変えるなら、それは必要な訂正であって「揚げ足を取る」ではない。論点に関わらない一語だけを何度も責め、相手を言い負かすことが目的になったときに使う。会議や文章の検討では、「表現より結論の根拠を確認しよう」と本筋へ戻す言い方を選ぶと、揚げ足取りになりにくい。

ことわざ

糠に釘

ぬかにくぎ

いくら意見や忠告をしても、少しも手応えや効果がないこと。

ことわざ

暖簾に腕押し

のれんにうでおし

いくら力を入れても手応えがなく、張り合いがないこと。

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