石橋を叩いて渡る
いしばしをたたいてわたる
ことわざの意味
丈夫に見える石橋でも、渡る前に叩いて安全を確かめるというたとえ。念には念を入れ、十分に安全と思えることにも用心してから行動することをいう。契約や大きな買い物など、失敗したときのやり直しが重い場面で使いやすい。用心深さを褒める場面のほか、慎重すぎて決断が遅いと皮肉る場面にも使う。「急がば回れ」が安全で確実な道を選ぶ教えなのに対し、こちらは行動前に確かめる姿勢に重きを置く。
言葉の由来
辞書は、頑丈に見える石橋でも叩いて堅固さを確かめてから渡る様子を、用心の上にも用心することのたとえと説明する。精選版日本国語大辞典は『譬喩尽』(1786)を用例として挙げるが、これは同書に見える例であって、ことわざの成立年とは断定できない。ことわざを知る辞典は坂口安吾『二流の人』(1947)の使用例を載せ、イミダスは慎重すぎて決断が遅い人を指す現代の用法も示す。これらの資料から確認できるのは比喩と用例であり、ことわざの成立時期や特定の橋・事故に結びつく由来は確認できない。
使い方の例
- “彼は石橋を叩いて渡るタイプで、旅行を予約する前に乗り換えと営業時間を調べた。”
- “初めて参加する大会なので、彼女は石橋を叩いて渡るつもりで、規則と持ち物を一つずつ確かめた。”
- “契約の文面を何度も読み直す彼を、同僚は石橋を叩いて渡る人だと評した。”
- “石橋を叩いて渡るのも大切だが、今回は必要な確認を終えたら前へ進もう。”
- “普段は決断が早い彼が、家を買うときだけは石橋を叩いて渡った。”
似たことわざ
英語の表現
Better safe than sorry; to be extremely cautious before acting.
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク・デジタル大辞泉/精選版日本国語大辞典「石橋を叩いて渡る」 — 見出し・読み・意味と、1786年『譬喩尽』の説明を確認
- コトバンク・ことわざを知る辞典「石橋をたたいて渡る」 — 同じ意味・読みと坂口安吾『二流の人』(1947)の使用例を確認
- Jitenon「石橋を叩いて渡る」 — ことわざ分類・読み・用心を重ねる語義・丈夫な石橋をたたいて安全を確かめる説明を確認
- 漢字ペディア「石橋を叩いて渡る」 — 見出し・読み・意味・類句と対句を確認
- イミダス「石橋を叩いて渡る」 — 本義と、慎重すぎて決断が遅い人を指す現代用法を確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
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関連することわざ
急がば回れ
いそがばまわれ
急いで目的を達したいときほど、危険な近道ではなく、安全で確実な方法を選んだほうが、結局は早く着くというたとえ。遠回りそのものを勧める言葉ではなく、失敗ややり直しの大きい場面で、手順の確認や準備を省かないという判断を表す。締切が迫る仕事、慣れない道、重要な契約などで使いやすい。単に遅い行動を正当化する意味にはならない。
急いては事を仕損じる
いそいではことをしそんじる
何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。
他山の石
たざんのいし
他の山から出た粗い石でも、玉を磨くのに役立つ。転じて、他人の誤った言行や失敗も、自分を磨く材料にできるという教え。磨かれるのは自分の側で、石にあたるのは他人の劣ったところだから、優れた人の言行を手本にする意味で使うのは誤りとされる。敬意を向けたい相手の仕事を「他山の石とします」と言えば、その人を粗い石に見立てたことになる。文化庁の調査でも、本来の意味で理解していた人は三割前後にとどまる。人の失敗から学ぶ「反面教師」に近い語だと置いて使うと、外しにくい。
一石二鳥
いっせきにちょう
一つの行動で二つの利益や目的を同時に達成すること。英語の諺「kill two birds with one stone」に対応する表現で、日本語でも効率的な方法や偶然の副次的効果を表す。単なる効率化だけでなく、予期せぬ副次的利益が生じた場合にも使う。「一挙両得(いっきょりょうとく)」が漢語系の同義語として並行して使われており、改まった文脈では「一挙両得」が好まれることもある。一石二鳥はより口語的・日常的な表現。
杞憂
きゆう
心配する必要がないと判断できることを、あれこれ心配する取り越し苦労のこと。中心にあるのは、単に不安を感じることではなく、心配の根拠が乏しいか、心配する理由がなかったと分かることである。だから、まだ安全確認が済んでいない事柄や、備えを要する具体的な危険を、根拠を確かめずに「杞憂」と片付けるのは合わない。事態が落ち着いた後には、「杞憂に終わった」「心配は杞憂だった」と振り返る形でもよく使う。日常の軽い心配なら「取り越し苦労」、起こる可能性を慎重に述べるなら「懸念」と使い分けたい。人の心配を一言で退けるより、何が確認できたら安心できるかを確かめるほうが、この語の重さを誤らない。
石の上にも三年
いしのうえにもさんねん
冷たい石の上でも長く座り続ければ温かくなる、というたとえから、最初は苦しく手応えがなくても、有益だと判断したことを粘り強く続ければ力や成果につながることをいう。新しい技能の習得や、環境に慣れるまでの努力を励ます場面で使う。三年という数字を文字どおりの期限とする言葉ではない。また、心身を傷つける環境まで耐え続けることを勧める意味でもない。
犬も歩けば棒に当たる
いぬもあるけばぼうにあたる
何かをしていれば思わぬ幸運に出会うこともある、ということ。また、出しゃばると災難に遭うという意味もある。
推敲
すいこう
詩文や文章を何度も練り直し、一語一語を吟味しながら最良の表現を追求すること。「推す」か「敲く」かという二語の選択に苦悩した詩人の故事から生まれた言葉で、今日では文章全般の校正・リライト・表現の磨き上げを広く指す。賈島と韓愈の故事が示すように、言葉一語への真摯な向き合い方は書くことへの誠実な姿勢そのものを体現する行為でもある。