案ずるより産むが易し
あんずるよりうむがやすし
ことわざの意味
あれこれ心配するより、実際に始めてみると案外たやすく進むというたとえ。出産前の心配と実際に産むことを比べた表現だが、今は仕事や初めての挑戦など、始める前に不安を抱く人を励ます場面でも使う。「杞憂」のように心配の根拠が薄いと評するだけではなく、一歩動けば見立てが変わるかもしれないと背中を押す。ただし、具体的な危険や未確認の条件を省いてよいという意味ではない。
言葉の由来
「産む」は出産を指し、出産前にあれこれ心配するものの、終わってみると心配したほどではないというたとえから来たと辞書は説明する。Jitenonと漢字ペディアは出産の比喩を示している。コトバンク「ことわざを知る辞典」は、かつては出産を控えた人を支える表現だったとみられ、近代の用例の大半は出産から離れた比喩で、心配を重ねず行動するよう促すと説明する。異形に「案ずるより産むが易い」もある。成立年代は資料から特定できない。
使い方の例
- “新人研修で初めて発表を任され不安だったが、練習を始めたら説明の順番もすぐ整った。案ずるより産むが易しだ。”
- “「この申請は難しそう」と避けていたが、必要書類を一つずつ揃えるとその日のうちに提出できた。案ずるより産むが易しだった。”
- “新しい社内ツールはまず一件だけで試そう。案ずるより産むが易しだし、使って分かった点を次に直せばいい。”
- “初めての相手に電話するのをためらう同僚に、「案ずるより産むが易し。まず用件を一つ伝えてみよう」と声をかけた。”
- “「案ずるより産むが易し」というけれど、契約内容や安全条件は先に確かめてから動こう。”
似たことわざ
英語の表現
Things are often easier than expected once you try.
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- Jitenon「案ずるより産むが易し」 — 読み、ことわざ分類、語義、出産前後の心配のたとえ、「案ずるより産むが易い」の異形を確認
- 漢字ペディア「案ずるより産むが易し」 — 読み、実際に行うと事前の心配より案外たやすくいく語義、出産のたとえを確認
- コトバンク「案ずるより産むが易し」 — デジタル大辞泉の見出し・読み・語義を確認
- コトバンク「案ずるより産むが易い」 — 「ことわざを知る辞典」の語義、行動を促す用法、近代の用例の大半が出産と直接関係しない比喩用法である説明を確認
- コトバンク「杞憂」 — 「杞憂」が心配する必要のないことを心配する意味であることを比較用に確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
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関連することわざ
杞憂
きゆう
心配する必要がないと判断できることを、あれこれ心配する取り越し苦労のこと。中心にあるのは、単に不安を感じることではなく、心配の根拠が乏しいか、心配する理由がなかったと分かることである。だから、まだ安全確認が済んでいない事柄や、備えを要する具体的な危険を、根拠を確かめずに「杞憂」と片付けるのは合わない。事態が落ち着いた後には、「杞憂に終わった」「心配は杞憂だった」と振り返る形でもよく使う。日常の軽い心配なら「取り越し苦労」、起こる可能性を慎重に述べるなら「懸念」と使い分けたい。人の心配を一言で退けるより、何が確認できたら安心できるかを確かめるほうが、この語の重さを誤らない。
二の足を踏む
にのあしをふむ
やろうと決めた計画でも、実際に始める段になると迷い、判断や着手を先送りすること。準備や話し合いが進んでいても、失敗への不安、責任、周囲への影響などが気になり、次の行動を選べない場面に使う。迷う理由は一つに限らず、結局やめたとまでは意味しない。「優柔不断」が決断しにくい性質を指すのに対し、「二の足を踏む」は特定の計画や行動に踏み切れない局面を描く。
千里の道も一歩から
せんりのみちもいっぽから
どんなに大きな事業や遠い目標でも、まず身近なことから着実に始めることが大切だということ。始めることの重要性と、一歩一歩の積み重ねを説く表現。壮大な計画の前に及び腰になっている人への励まし、あるいは行動を促す言葉として使われる。長い旅も足元の一歩からというイメージが明快で、動き出すことを後押しする力がある。
石橋を叩いて渡る
いしばしをたたいてわたる
丈夫に見える石橋でも、渡る前に叩いて安全を確かめるというたとえ。念には念を入れ、十分に安全と思えることにも用心してから行動することをいう。契約や大きな買い物など、失敗したときのやり直しが重い場面で使いやすい。用心深さを褒める場面のほか、慎重すぎて決断が遅いと皮肉る場面にも使う。「急がば回れ」が安全で確実な道を選ぶ教えなのに対し、こちらは行動前に確かめる姿勢に重きを置く。
胸を撫で下ろす
むねをなでおろす
心配していたことが解決して安心すること。ほっとすること。危険や困難が去って、緊張がほぐれた瞬間の安堵感を表す。試験の合格、病気の快復、事故の回避など、心配事が無事に解決したときに使う表現。「胸をなでおろした」と過去形でよく使われる。危険が完全に去ったことを確認してから使う表現なので、まだ不安が残る状況には使わない。
破天荒
はてんこう
それまで誰も成し遂げたことのないことを初めて行うこと。何が初めてかを具体的に示して使う。「前人未到」と近い。文化庁調査では「豪快で大胆な様子」と受け取る人も多く、性格を評する用法が広く見られるが、これは本来義ではない。何が未踏の成果なのかを文脈で示したい。本来義が指すのは、人柄でなく初めての達成である。
急がば回れ
いそがばまわれ
急いで目的を達したいときほど、危険な近道ではなく、安全で確実な方法を選んだほうが、結局は早く着くというたとえ。遠回りそのものを勧める言葉ではなく、失敗ややり直しの大きい場面で、手順の確認や準備を省かないという判断を表す。締切が迫る仕事、慣れない道、重要な契約などで使いやすい。単に遅い行動を正当化する意味にはならない。
急いては事を仕損じる
いそいではことをしそんじる
何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。