言葉辞典
ことわざ

急がば回れ

いそがばまわれ

ことわざの意味

急いで目的を達したいときほど、危険な近道ではなく、安全で確実な方法を選んだほうが、結局は早く着くというたとえ。遠回りそのものを勧める言葉ではなく、失敗ややり直しの大きい場面で、手順の確認や準備を省かないという判断を表す。締切が迫る仕事、慣れない道、重要な契約などで使いやすい。単に遅い行動を正当化する意味にはならない。

言葉の由来

琵琶湖の矢橋から船で渡る道と、陸路で瀬田の長橋を通る道を比べた古い表現に結び付けられる。16世紀の『雲玉和歌抄』と17世紀の『醒睡笑』には、矢橋の舟より瀬田の長橋を選ぶ趣旨の歌が見える。ただし、作者や成立の経緯は資料で異なり、歌だけからことわざの起源を一つに定めることはできない。舟は速く見えても天候や波の危険があり、橋を回るほうが確かだという情景が、現代の「近道より確実な手段」という意味につながっている。安全と確実さを、時間を短く見せる近道より優先する感覚が背景にある。記録に残る歌を、ことわざの唯一の起源として扱わないことが大切である。

使い方の例

  • 提出を急ぐほど、数字の確認を一度する。急がば回れで、後の修正を減らしたい。
  • 初めての山道なら、近道の林道ではなく案内のあるルートを選ぶ。急がば回れだ。
  • 契約書を急いで送る前に、担当者に読んでもらった。急がば回れの判断だった。
  • 故障した機械を応急処置だけで動かすより、点検を受けた。急がば回れである。
  • 試験直前でも、解ける問題から確実に進めるほうがよい。急がば回れと言う。

似たことわざ

急いては事を仕損じる慎重を期す安全策を取る

対のことわざ

善は急げ拙速を選ぶ

英語の表現

More haste, less speed.

使う場面

慎重安全判断仕事

参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年

関連することわざ

ことわざ

急いては事を仕損じる

いそいではことをしそんじる

何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。

ことわざ

善は急げ

ぜんはいそげ

よいと思ったことは、ためらわずすぐに実行すべきだということ。

ことわざ

千里の道も一歩から

せんりのみちもいっぽから

どんなに大きな事業や遠い目標でも、まず身近なことから着実に始めることが大切だということ。始めることの重要性と、一歩一歩の積み重ねを説く表現。壮大な計画の前に及び腰になっている人への励まし、あるいは行動を促す言葉として使われる。長い旅も足元の一歩からというイメージが明快で、動き出すことを後押しする力がある。

ことわざ

待てば海路の日和あり

まてばかいろのひよりあり

今は状況が悪くても、じっと待っていればそのうちよい機会がやってくるということ。

ことわざ

虎穴に入らずんば虎子を得ず

こけつにいらずんばこじをえず

危険を冒さなければ大きな成果は得られないということ。

四字熟語

大器晩成

たいきばんせい

本当に大きな才能や人物は、早くに頭角を現すよりもじっくり時間をかけて大成するということ。老子の哲学に基づく言葉で、若いうちから目立たなくても将来的に大きく花開く可能性を示す。早熟な才能より時間をかけて育つ大きな器の価値を説く。「若い頃は目立たなくていい」という励ましの意味で使われることが多く、早期に結果を求める現代社会への静かな反論としての意味合いも持つ。

故事成語

焦眉の急

しょうびのきゅう

眉毛が焦げるほど差し迫った危急の事態のこと。一刻の猶予もない緊急の状況を指す。

ことわざ

思い立ったが吉日

おもいたったがきちじつ

何かをしようと決心したなら、暦の上の吉日など待たずに、その日のうちに行動を起こすべきだということ。決意が生まれた瞬間こそ気力と集中力が最も高い時であり、その勢いを逃さないことを促す言葉。「大安を待ってから始める」よりも、自ら決断した日こそが本当の吉日だという考え方で、完璧な条件が揃うまで動かないという先延ばしの習慣への戒めでもある。

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