急がば回れ
いそがばまわれ
ことわざの意味
急いで目的を達したいときほど、危険な近道ではなく、安全で確実な方法を選んだほうが、結局は早く着くというたとえ。遠回りそのものを勧める言葉ではなく、失敗ややり直しの大きい場面で、手順の確認や準備を省かないという判断を表す。締切が迫る仕事、慣れない道、重要な契約などで使いやすい。単に遅い行動を正当化する意味にはならない。
言葉の由来
琵琶湖を渡る二つの道を比べた古歌に結び付けて語られる。草津側の矢橋から出る渡し船を使えば近いが、南へ回って瀬田の長橋を渡れば遠い。『醒睡笑』が引く古歌に「武士のやばせの船は早くともいそがば廻れ瀬田の長橋」とある。ただし、誰の歌かで資料が割れている。滋賀県立図書館の調査によれば、室町時代の和歌集『雲玉和歌抄』はこれを平安後期の歌人源俊頼の作とし、江戸初期の咄本『醒睡笑』(一六二八年)は室町の連歌師宗長の歌として紹介する。さらに小学館『ことわざを知る辞典』は、この句は一六世紀にはすでに広く通っていた古い言い回しで、『醒睡笑』の古歌はことわざの出所ではなく、よく知られたことわざを歌に詠み込んだものだろうと見る。歌をことわざの根と断定はできない。船は速く見えて風と波に左右され、橋を回る道は遠くとも確かだという実感が、意味の背骨になっている。
使い方の例
- “提出を急ぐほど、数字の確認を一度する。急がば回れで、後の修正を減らしたい。”
- “初めての山道なら、近道の林道ではなく案内のあるルートを選ぶ。急がば回れだ。”
- “契約書を急いで送る前に、担当者に読んでもらった。急がば回れの判断だった。”
- “故障した機械を応急処置だけで動かすより、点検を受けた。急がば回れである。”
- “試験直前でも、解ける問題から確実に進めるほうがよい。急がば回れと言う。”
似たことわざ
対のことわざ
英語の表現
More haste, less speed.
使う場面
参考文献
このページで確認した資料
意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。
- コトバンク「急がば回れ」 — ことわざを知る辞典が、16世紀には流布していた古いことわざであること、『醒睡笑』(1628)が引く古歌「武士のやばせの船は早くともいそがば廻れ瀬田の長橋」を宗長の作として載せること、その古歌からことわざが生まれたのではなく既知のことわざを詠み込んだものと見ることの確認
- レファレンス協同データベース(滋賀県立図書館)「急がば回れ」の語源 — 室町時代の和歌集『雲玉和歌抄』が同歌を平安後期の歌人源俊頼の作とし、江戸時代の咄本『醒睡笑』が室町の連歌師宗長の歌として紹介するという、作者をめぐる資料間の食い違いの確認。矢橋の渡し船と瀬田唐橋の位置関係の確認
- Weblio 辞書「急がば回れ」 — 実用日本語表現辞典が、矢橋の船路は天候次第で遅れも転覆の危険もあり、瀬田の長橋を回る道は整備されて足止めが少ないと説明することの確認
編集の基本参考文献
- 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
- 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
- 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年
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関連することわざ
急いては事を仕損じる
いそいではことをしそんじる
何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。
石橋を叩いて渡る
いしばしをたたいてわたる
丈夫に見える石橋でも、渡る前に叩いて安全を確かめるというたとえ。念には念を入れ、十分に安全と思えることにも用心してから行動することをいう。契約や大きな買い物など、失敗したときのやり直しが重い場面で使いやすい。用心深さを褒める場面のほか、慎重すぎて決断が遅いと皮肉る場面にも使う。「急がば回れ」が安全で確実な道を選ぶ教えなのに対し、こちらは行動前に確かめる姿勢に重きを置く。
善は急げ
ぜんはいそげ
よいと思ったことは、ためらわずすぐに実行すべきだということ。
待てば海路の日和あり
まてばかいろのひよりあり
今は状況が悪くても、じっと待っていればそのうちよい機会がやってくるということ。
犬も歩けば棒に当たる
いぬもあるけばぼうにあたる
何かをしていれば思わぬ幸運に出会うこともある、ということ。また、出しゃばると災難に遭うという意味もある。
千里の道も一歩から
せんりのみちもいっぽから
どんなに大きな事業や遠い目標でも、まず身近なことから着実に始めることが大切だということ。始めることの重要性と、一歩一歩の積み重ねを説く表現。壮大な計画の前に及び腰になっている人への励まし、あるいは行動を促す言葉として使われる。長い旅も足元の一歩からというイメージが明快で、動き出すことを後押しする力がある。
思い立ったが吉日
おもいたったがきちじつ
何かをしようと決心したなら、暦の上の吉日など待たずに、その日のうちに行動を起こすべきだということ。決意が生まれた瞬間こそ気力と集中力が最も高い時であり、その勢いを逃さないことを促す言葉。「大安を待ってから始める」よりも、自ら決断した日こそが本当の吉日だという考え方で、完璧な条件が揃うまで動かないという先延ばしの習慣への戒めでもある。
大器晩成
たいきばんせい
本当に大きな才能や人物は、早くに頭角を現すよりもじっくり時間をかけて大成するということ。老子の哲学に基づく言葉で、若いうちから目立たなくても将来的に大きく花開く可能性を示す。早熟な才能より時間をかけて育つ大きな器の価値を説く。「若い頃は目立たなくていい」という励ましの意味で使われることが多く、早期に結果を求める現代社会への静かな反論としての意味合いも持つ。