言葉辞典
慣用句

堪忍袋の緒が切れる

かんにんぶくろのおがきれる

慣用句の意味

我慢を重ねてきた人が、もうこれ以上こらえられず、怒りを表に出すこと。堪忍をためた袋の口を結ぶ緒が切れるという比喩で、限界を越えた瞬間を言う。「目くじらを立てる」は他人の小さな欠点を探して責める行為、「逆鱗に触れる」は本来は目上の怒りを買う語だが、現在は相手をひどく怒らせる意味にも広がった。こちらは怒る側がどれだけ耐え、ついに我慢できなくなったかに焦点がある。

言葉の成り立ち

「堪忍袋」は、堪忍を中にためる袋に見立てる。堪忍が積もって袋がふくらみ、口を結ぶ緒(ひも)が切れると、我慢を保てなくなり怒りが表に出る、という形で意味ができている。漢字ペディアは堪忍をしまう袋がふくらんでひもが切れる意だと説明し、デジタル大辞泉は「緒」がひもを指し、「尾」と書くのは誤りとする。精選版日本国語大辞典は、1752年の『教訓雑長持』に「堪忍袋の緒が断た」とする早い用例を載せる。ことわざを知る辞典は「ならぬ堪忍するが堪忍」など、忍耐を重く見る考え方が表現の背景にあると記す。現代の語釈も、もうこれ以上我慢できないことから怒りが爆発する段階を示す。「堪忍袋の尾」と書くのは誤り、と辞書も注意している。

用例

  • “毎朝続く隣室の大音量に、彼女の堪忍袋の緒が切れた。”
  • “同じミスを何度も隠した部下に、課長の堪忍袋の緒が切れた。”
  • “列に割り込み、注意されても笑って済ませようとする人に、周囲の堪忍袋の緒が切れた。”
  • “修理を先延ばしにする管理会社へ、住民の堪忍袋の緒が切れ、抗議文を送った。”
  • “小さな誤字を責められ続けた彼は、ついに堪忍袋の緒が切れて反論した。”

英語表現

To lose one's patience; reach the end of one's tether.

使う場面

日常会話ビジネス感情忍耐

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 米川明彦・大谷伊都子 編『日本語慣用句辞典』東京堂出版, 2005年

関連する慣用句

慣用句

目くじらを立てる

めくじらをたてる

人の欠点や小さな誤りを探し出し、わずかな事を取り立てて強く非難すること。単に誤りを指摘したり、厳しく注意したりすること全部を指すのではない。この辞典での使い分けの目安としては、安全、金額、結論を左右する誤りを具体的に直すのは必要な訂正である。誤りの小ささに比べて、相手を責めることや粗を探すことが前へ出たときに、この慣用句が合う。言葉尻を攻めるなら「揚げ足を取る」、怒った目つきそのものなら「目を三角にする」が近い。誰かの抗議を「目くじら」と呼ぶ側にも、問題を小さく見せる働きがある。何が些細なのかを確かめて使いたい。

故事成語

逆鱗に触れる

げきりんにふれる

目上の人や権力者の激しい怒りを買うこと。君主や上位者の機嫌を大きく損ねることを指す。

慣用句

へそを曲げる

へそをまげる

機嫌を損ねて意地を張ること。些細なことで不機嫌になり、素直でなくなる様子を表す言葉。子どもっぽい反応や、些細な怒りから意固地になる態度を批判的あるいはやや滑稽に指す場合が多い。「へそ」が体の中心(物事の核心)の象徴として使われることから、その中心が歪む(曲がる)ことで態度や気持ちが素直でなくなる状態を表す。大人に対して使うときにはやや批判的なニュアンスが伴う。

慣用句

尻に火がつく

しりにひがつく

事態が切迫して、のんびりしていられなくなること。

慣用句

揚げ足を取る

あげあしをとる

相手の言い間違い、言葉尻、表現上の小さな不備だけを取り上げ、主張の筋とは別の所で責めたりからかったりすること。否定的な評価を伴う慣用句で、相手の誤りを正確に直すことすべてを指すわけではない。たとえば数字の桁違いが結論を変えるなら、それは必要な訂正であって「揚げ足を取る」ではない。論点に関わらない一語だけを何度も責め、相手を言い負かすことが目的になったときに使う。会議や文章の検討では、「表現より結論の根拠を確認しよう」と本筋へ戻す言い方を選ぶと、揚げ足取りになりにくい。

ことわざ

口は災いの元

くちはわざわいのもと

不用意な発言や軽はずみな言葉が、本人にとって予期せぬ災難や困難を引き起こす原因となることがある。言葉はひとたび口から出ると取り消すことができないため、発言には十分な注意が必要であるという教訓。怒りや感情的な状態での言葉、機密の漏洩、場をわきまえない一言に対する戒めであり、SNS全盛の現代においてこの教訓はより一層重みを増している。

慣用句

歯に衣着せぬ

はにきぬきせぬ

相手への遠慮や気遣いをせず、思ったことをそのまま率直に言うこと。相手が聞いて不快に感じることも、ためらわずに直接言う様子を表す。率直さが美徳として機能する文脈では褒め言葉として使われ、無遠慮さや失礼さを指摘する文脈では否定的な意味合いを帯びる。「衣」は絹ではなく衣服の「きぬ」を指し、「歯に絹着せぬ」と書くのは誤記とされる。

ことわざ

急いては事を仕損じる

いそいではことをしそんじる

何事も焦って急ぐと失敗しやすいということ。急ぎすぎると注意力が散漫になり、手順を飛ばしたり確認を怠ったりして、かえって手直しや取り返しに時間がかかってしまう。「急いては」は「急いで行動すれば」という仮定の表現、「仕損じる」は「やり損ねる・失敗する」の意。物事に落ち着いて取り組むことの大切さを説く、日本の代表的なことわざのひとつ。

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