言葉辞典
ことわざ

十人十色

じゅうにんといろ

ことわざの意味

人はそれぞれ好みや考え方が違うということ。十人いれば十通りの個性があること。多様性を認め、他者との違いを自然なものとして肯定する表現。価値観・趣味・意見の違いを指摘したり、その違いを受け入れる文脈で使われる。「こう考えるのが普通だ」という思い込みを諌めるときや、意見の多様さを示すときにも引用される。

言葉の由来

語源をはっきり書いた辞書は見当たらない。実用日本語表現辞典は「語源は明らかでない」としたうえで、用例の典拠が江戸期の人情本あたりに求められることから、近世以降にできた語だろうと推し量っている。実際、『精選版 日本国語大辞典』が引く古い例は人情本『清談若緑』(19世紀中)の「夜の契りを挑むなる。十人十色(ニントイロ)の生酔客」で、この例では「ニントイロ」とルビが振られている。明治以降は夏目漱石『吾輩は猫である』(1905〜06年)、尾崎一雄『懶い春』(1949年)などに見える。「十」がなぜ十なのか、「色」がなぜ色なのか——確かめた辞書はいずれも説明していないので、ここでは書かない。辞書が揃って書いているのは語釈のほうで、デジタル大辞泉は「考え方や好みなどが各人それぞれに違っていること」、ことわざを知る辞典は「人には、それぞれ違った好みや個性がある」とする。

使い方の例

  • “音楽の好みは十人十色だから、全員が満足するプレイリストは難しい。”
  • “十人十色というように、同じ映画を観ても感じ方は人それぞれだ。”
  • “部下の働き方も十人十色。一律のルールで縛るのではなく、個性を活かした管理が大切だ。”
  • “子育ての方法も十人十色。他の家庭と比べて焦る必要はない。”
  • “ファッションの感覚は十人十色。自分のスタイルを持つことが大切だ。”

似たことわざ

千差万別百人百様各人各様人それぞれ

対のことわざ

画一的横並び金太郎飴

英語の表現

Different strokes for different folks; to each their own. Ten people, ten colors — everyone has their own preferences and personality.

使う場面

日常会話多様性・個性教育ビジネス

参考文献

このページで確認した資料

意味・由来の記述は、次の資料を照合して編集しています。

  • コトバンク「十人十色」 — 各辞典の語釈と、精選版 日本国語大辞典が引く人情本『清談若緑』(19世紀中)「十人十色(ニントイロ)の生酔客」、夏目漱石『吾輩は猫である』(1905〜06年)・尾崎一雄『懶い春』(1949年)の用例の確認
  • Weblio「十人十色」 — 実用日本語表現辞典の「語源は明らかでない」「江戸時代の人情本などに求められることが多く、近世以降に成立した語彙と推察される」という記述の確認

編集の基本参考文献

  • 新村出 編『広辞苑 第七版』岩波書店, 2018年
  • 松村明 編『大辞林 第四版』三省堂, 2019年
  • 尚学図書 編『故事ことわざ辞典』小学館, 2012年

関連することわざ

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付和雷同

ふわらいどう

自分自身の考えや判断を持たないまま、他人の説や多数派の意見へ安易に同調すること。誰かと同じ結論になっただけでは、この語には当たらない。根拠を自分で確かめず、周囲の勢いや立場に合わせて賛成するところに批判の意味がある。この辞典での使い分けの目安は、会議で考えた末に意見が一致したなら「賛同」、人間関係や環境の影響で考え方そのものが変わったなら「朱に交われば赤くなる」、その場で人の尻について軽率に行動したなら「尻馬に乗る」である。「多数派に付いたか」ではなく、「自分の判断を置き去りにしたか」を確かめて使いたい。

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